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君は僕を好き、僕は君をどう思っているのだろう?

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「とりあえず、俺は一度、涉の前から消えるよ。新たにこの世界で生きていけるようにすることに全力を注ぐ。」

「嶺さんのマンションを拠点に?」

「しない。」

 キッパリと言い切ったセイちゃんが前を向いて立ち上がった。僕もつられて立つ。再びこちらを向いたセイちゃんの顔は、暗がりの中でも元の通り、いや少しだけ目つきが鋭くなったような気がした。

「涉、少しだけ触ってもいいか?」

 何かを決意した顔、僕はどう話しかけたら良いか考えつくことなく、無意識に頷いていた。

「愛してる。涉が誰を好きであっても。たぶんその気持ちはこれからも変わる気がしない。でも、この前は悪かった。涉の気持ちも考えずに……。」

 話をしながら頬に手が触れる。セイちゃんの手のひらはやはり温かくて、頬からじんわりと熱が伝わってきた。

「たぶん、これからも涉に会いたくなる。どうしても我慢できなくなった時には、会いに行ってもいいか?」

 どうしてそんなに切ない声を出すんだろう? セイちゃんの呟きを聞いて、胸がいっぱいになり鼻の奥がツンと痛んできた。

「当たり前でしょ? 僕たちは幼馴染なんだ。この世界に疲れて寂しくなったらいつでも……。」

 これがセイちゃんとの別れだなんて考えたくない。無意識にセイちゃんの腕を掴むと、その手を取ったセイちゃんに両手で包まれた。

「良かった。ありがとう。」

「セイちゃん、スマホの番号教えてよ。僕からも連絡を取りたい。」

 堪えようとしていた涙が溢れてくるのが分かった。慌てて瞬きを繰り返す。女々しい奴だなんて思われたくない。

「持ってない。まだな。でも手にしたらその時は会いに行くよ。」

 優しく微笑むセイちゃんの顔。でもその顔がいつか見た嶺さんの顔と重なって余計に胸が締め付けられた。

「絶対だよ?」

「ああ、絶対に。」

 セイちゃんの手がゆっくりと離れていく。温かな感触が消えていくのと同時に、セイちゃんが、セイちゃんまでが僕の前から消えていくような気がして、涙が一粒頬を伝って落ちた。

「泣くな。またキスしたくなるだろ?」

 一瞬、「してよ。」と言いそうになった自分に驚く。僕の顔を見て、セイちゃんは長い指先で軽く僕の唇を触った。そして、公園の入り口へと向かって歩き出した。

 一昨日会ったときのままの服装。これからどこにいくのだろう?

『引き止めたい。』
 
 引き止めたい? そしてどうするんだ? 背の高い、そして少しずつ離れていくセイちゃんの姿を見ながら、このままでいいのかと謎の焦りが頭の中に渦巻いた。

 セイちゃんの姿が公園の入り口の街灯に浮かび上がる。振り返ることなしに左に曲がって行ってしまった。引き止められなかった。どうしようもないじゃないか、そう思い込もうとしてもまた1つ、涙が頬を伝って落ちていった。



 
 
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