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僕の趣味は女の子、君の趣味も女の子

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「あるみたいよ? でも、それで2人で仕事を続けていく人は稀なんですって。日山さんに聞いたけど……。」

 斎藤さんが話し始めた言葉は、頭に入ってこなかった。僕たちの席からちょうど視界に入る窓際の席に案内された嶺さんたちが気になってしょうがなかった。

 日山さんだと教えてもらった人が窓際に座り、嶺さんはこちらに背を向けている。足を広げてメニューを見ている様は、とてもリラックスしているように見える。
 
 日山さんは長いストレートの髪を耳にかけながら、メニューを指差してにこやかに嶺さんに話しかけていた。

「おーーい渡良瀬、戻ってこい! 斎藤さん可哀想だろ。」

 渡辺の声よりも、後ろを振り向いた嶺さんの姿で我に返る。慌ててテーブルに視線を戻して隣の斎藤さんを見ると、真っ赤な顔で俯いていた。目の前の2人はクスクス笑っている。

「ああ、ごめん。何だっけ?」
「……いい。」

 小さく呟いた斎藤さんの声を聞いて、渡辺が声を上げて笑い始めた。

「はははははっ! 渡良瀬、鈍感!」

 渡辺の隣の田部さんも口元を両手で隠して、必死に笑いを隠しているようだった。

「お待たせいたしました。本日のスープ、『オニオンスープ』とサラダでございます。」

 店員さんが4人分のスープとサラダを運んできて、何となく気まずい思いを回避することができた。「いい香り。」とスープを覗き込む女性2人を横目に、僕は少々ゲンナリしていた。

『レタス……。』

 ミニトマト、きゅうり、キャベツの千切り、ハムの下に隠れるように敷いてある黄緑のもの。縁が紫になっているこれは、サニーレタス? 食べないとダメだろうか? 少ししかかかっていないシーザーサラダドレッシング、大量にかけたい。

 それから間もなく料理も運ばれてきて、僕たちは自分のたちがやっている仕事の様子や趣味について話をしながら楽しく食べ始めた。

「それで? 家に帰ってから映画を見たりゲームをやったりしている渡良瀬君には彼女いるの?」

 渡辺がニヤニヤ笑いながら訊いてきた。ちょっぴりその様子が癪に触る。渡辺には彼女がいそうだ。

「いないよ。渡辺は?」

「俺? いるいる。付き合い始めて2年目に突入。彼女年下でさ、まだ学生なんだ。」
 
 やっぱり……そんな雰囲気。でもそう思う気持ちは田部さんの一言でどこかに吹き飛んでいった。

「私も大学生の彼女がいるわ。」

「「「えっ!」」」 
 
 僕を含めた3人が一斉に田部さんを見る。斎藤さんが「私もいない。」と呟いた言葉はほとんど耳に入ってこなかった。田部さんはオレンジジュースの残りを一口飲んでから、笑顔を見せた。

「可愛い子よ? 斎藤さんに似てるかも。小さくて恥ずかしがり屋で、放っておけない。」

 僕はしばらく、空いた口が塞がらなかった。


 
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