もこ

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バレた

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「なぁ、これからずっと愼が学校に付いてくるわけ?」

 俺は夕食後の食器洗いに勤しんでいる愼に声をかけた。今夜は2人でナポリタンを作って食べた。「昔懐かしいナポリタン」の作り方を愼が調べ、それを指示されながら俺が作って。

 愼が食べるのはほんの少しだし、味も分からないというのは知っているけれど、誰かと一緒に食事をするという生活が稀だった俺には充分だ。気安く話ができる相手と一緒に食べるメシが、こんなに美味しいとは知らなかった。

「いえ、この事件が解決して安全が確認できれば、私は駅までの送迎に留めたいと思っております。」
「駅までは来るのかよ。」

 昼は愼と合流して学食で食べた。2コマ目にC棟に向かうのに外へ出た時には、素知らぬ顔してすれ違ってきた。話しかけてくればいいのにと思ったのは俺のわがまま? 

 授業が終わって教室を出た途端に、壁に背中をもたれかけさせながら待っていた愼。男も女もみんな愼をジロジロと見ていた。何せ目立つんだって。

「勿論です。他に私ができることが有りますでしょうか? 棚の拭き掃除?」
「ぷっ! あはははっ!」
「優樹様、お風呂に入ってしまわれては?」

 思わず笑ってしまったけれど、愼の言葉にハッとする。まさに風呂に入ろうと着替えを両手に部屋を出てきたところだった。今日は……。

「愼、今日は長湯してくるから覗くなよ? 1時間くらいは入ってる。音楽ガンガンかけといて。いつものやつ。」

「分かりました。傷も良くなってきたところです。ごゆっくりなさってください。」

 泡のついたフライパンを片手にこちらを向いた愼の言葉に満足して、洗面所へと向かった。




 ハードロックの洋楽が流れる浴室で準備を整える。ここ最近ずっと解していなかったから時間がかかる……。早く、早く、愼に不審に思われないように。

「…………ン。」

 声を我慢することにも慣れてきた。出来るだけ静かに、何をしているのか分からないように。出しっぱなしのシャワー。そして音楽……久しぶりの……。

 スイッチを入れると微かな電子音がする。リモコンのスイッチを浴槽の縁から取って息を吐く。少しずつ挿れて、そう、もう少しだけ奥に。リモコンの切り替え部分を押すと振動が始まった。

「……ンン……。」

 少し違う。もう少しだけ前の方……。そう思って位置を変えた途端に、振動がピタリと止んだ。

「えっ?」

 何度スイッチを押してもピクリとも動かない。中途半端なんだ。もう少し、もう少しだけ。

『充電しておかなかったから……。』

 いつもは洗面所で充電していた。けれどもアンドロイドの愼に見つかるのが怖くて、最近触ってもいなかった。一度ぐらいなら大丈夫だと思ったのに。

 中途半端に勃ち上がったモノを扱いても満足できない。どうしたらいい?

 トントントン

 その時、洗面所のドアを叩く音がした。



 
 
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