もこ

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バレた

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 電車では愼は俺の背後に回り込み、さりげなく辺りを見渡しているようだった。俺の後ろにピッタリと張り付くわけではなく、でも間には誰も入れないように……。

「まだ変な信号キャッチしてるの?」

 誰にも聞かれないぐらいの小声でイヤフォンへ向かって呟く。耳の中から愼の返事が聞こえてきた。

『そうですね。1つだけあるのですが、駅まで行ってみないと判断しかねます。必ず乗り過ごしていく信号が1つあったので、それだと確認できればもう安心でしょう。』

 愼の言葉にホッと安心する。今回の事件は、新聞を初めとしてメディアでの報道を控えてもらっていた。同じような事件が繰り返されないようにするため。「王高寺グループ」の跡取り息子がいること、それが一人っ子ということを隠すために。

 親父が警察と相談して決めたことなのに、地方の新聞1社だけが小さく取り上げたという。ネットにも載ったようだが、愼が即座に気づいて削除申請をして親父に報告をした。その事では裁判沙汰になりそうだとか……。ま、勝手にして? って感じだけど。

「優樹様はA棟で外国語1の受講でよろしかったですか?」

 駅を降りて愼と2人で歩いていると唐突に愼が話しかけてきた。結局心配だった信号はそのまま列車とともに行ってしまったということで、ホッとしていたところだった。

 2人で歩いていると、やはり身長180超えの愼は目立つ。わざわざ俺たちを抜かしていってチラリと振り返るやつもいる。

「ああ。愼も来るわけ?」

 ちょっぴりこの後の展開を危惧しながら、愼の方を見る。愼は微笑みながらこちらを見ていた。

「まさか。イヤフォンと眼鏡で今まで通り観察できますし。優樹様のポケットにはスマホも入っています。」
「じゃあ、愼はどうするの?」

 愼の話では、トイレの個室に籠って体のメンテナンスをするということだった。「胃」の中を空っぽにして、そしてバッテリーをフルにするという。

 愼の腹の右側にバッテリーを入れ替える部分が埋め込まれていた。一度だけ着替えの時に見せてもらった。バッテリーはスマホのよりは数倍大きいが、手のひらにはスッポリと収まるサイズだ。

 一度フルにすれば36時間は保つということだが、夜中、俺が寝ている間に取り替えているらしい。ほんの少し皮膚を捲れば出てくる機械の部分。皮膚を戻せば殆ど分からない。けれども、愼がアンドロイドだと実感するには充分だった。

『優樹様が洗面所と浴室のカメラを隠した理由が分かったような気がします。これが、恥ずかしいという感情ですね?』

 チノパンだけで上半身裸になっていた愼の言葉に、こっちまで恥ずかしくなっていった。愼はそれ以降、着替えやバッテリーを交換する時には必ず洗面所に行くようになった。

「おい、学校の電源は盗んでいいのか?」
「まぁ細かなところはよろしいでしょう。」

 俺の問いに、愼がにっこり笑ってこちらを見た。やれやれと思ったけど、その気持ちは飲み込んで、それから1日の流れの打ち合わせをしていった。

 
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