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救出
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「大丈夫ですか?」
突然視界が明るくなって、意識が引き戻された。目の前にはスーツ姿に黒のジャンパーを羽織った男の姿。手には自分が着けられていたのであろうアイマスクを持っている。頷きながらふと下を見ると、手枷になっていた白いビニールの紐を外そうとする同じようなジャンパーを着た人がいた。
「ガムテープを剥がしてもいいですか?」
アイマスクをビニール袋に入れながら、男に言われて静かに頷く。頬の方からゆっくりと剥がされていくテープに肌が引っ張られるような気がする。唇が自由になったと同時に手のロープがなくなった感覚があった。
「自分でやって良いですか?」
自分じゃないような掠れ声が聞こえた。頷いて手を離した男の代わりに自分でガムテープを剥がす。口の端がピリリと痛んだ。
「起き上がれますか?」
傍で見ていた男の言葉に、足も自由になっていたことを知る。床に座って辺りを見回すと、何も家具を置いていない6畳ほどの洋室にいた。3人の男がそこにいた。
1人は辺りを写真に納めている。そしてもう1人はビニール袋にせっせと何かを集めているようだった。岡村や米田さんの姿は見えない。……警察に連れて行かれた?
「事情をお伺いしたいのですが、まずは傷が見られますので病院へ。救急車は必要ないかと思うのですが、立ち上がれますかね。」
自分の手を見る。縄を外そうとして動かしていたからか、手首が真っ赤になって擦り傷もできていた。ゆっくりと立ち上がると長時間縛られていた足首が痛んだが、立ち上がることができた。足踏みをしてみる。
「大丈夫そうですね。家族の方たちが来ているので、一緒に病院へ行ってください。その後でお話を。」
「家族の……方たち?」
頷きながらも語尾が上がる。父さんの他に誰が来るというんだ? まさか、母さんじゃないだろうな? 警察関係の3人が部屋を出て行く。その後を目で追いながら考えを巡らした。
母さん……すっかり忘れた面影。何となく、賑やかな街の中を手を繋いで歩いた、そんな記憶しかない女《ひと》。それも母親だったのかどうかさえ自信がない。今更会いたいなんて、1ミリも思ってないんだけど。
暫くして、玄関の方で何人かの話し声が微かに聞こえてきて緊張する。とりあえず、また床に座った。ジーンズの裾を上げ、靴下を下げて足の縛られていた跡を確かめたが、少し赤くなっただけで大丈夫に見えた。
「優樹!」
大きな声に顔を上げる。部屋のドアが開いたかと思うと、親父の姿が現れた。スーツに革のコートを羽織って洒落込んでいるが、髪はボサボサ……。そして、その後ろから長身の男が親父を押し退けるようにして素早く俺に近づいてきた。
「優樹様!」
『……愼!』
ジーンズに赤のチェック柄のシャツだけ。今の時期には考えられないような薄着で来た男。その男は愼と同じ声を出し、同じ顔を持っていた。
突然視界が明るくなって、意識が引き戻された。目の前にはスーツ姿に黒のジャンパーを羽織った男の姿。手には自分が着けられていたのであろうアイマスクを持っている。頷きながらふと下を見ると、手枷になっていた白いビニールの紐を外そうとする同じようなジャンパーを着た人がいた。
「ガムテープを剥がしてもいいですか?」
アイマスクをビニール袋に入れながら、男に言われて静かに頷く。頬の方からゆっくりと剥がされていくテープに肌が引っ張られるような気がする。唇が自由になったと同時に手のロープがなくなった感覚があった。
「自分でやって良いですか?」
自分じゃないような掠れ声が聞こえた。頷いて手を離した男の代わりに自分でガムテープを剥がす。口の端がピリリと痛んだ。
「起き上がれますか?」
傍で見ていた男の言葉に、足も自由になっていたことを知る。床に座って辺りを見回すと、何も家具を置いていない6畳ほどの洋室にいた。3人の男がそこにいた。
1人は辺りを写真に納めている。そしてもう1人はビニール袋にせっせと何かを集めているようだった。岡村や米田さんの姿は見えない。……警察に連れて行かれた?
「事情をお伺いしたいのですが、まずは傷が見られますので病院へ。救急車は必要ないかと思うのですが、立ち上がれますかね。」
自分の手を見る。縄を外そうとして動かしていたからか、手首が真っ赤になって擦り傷もできていた。ゆっくりと立ち上がると長時間縛られていた足首が痛んだが、立ち上がることができた。足踏みをしてみる。
「大丈夫そうですね。家族の方たちが来ているので、一緒に病院へ行ってください。その後でお話を。」
「家族の……方たち?」
頷きながらも語尾が上がる。父さんの他に誰が来るというんだ? まさか、母さんじゃないだろうな? 警察関係の3人が部屋を出て行く。その後を目で追いながら考えを巡らした。
母さん……すっかり忘れた面影。何となく、賑やかな街の中を手を繋いで歩いた、そんな記憶しかない女《ひと》。それも母親だったのかどうかさえ自信がない。今更会いたいなんて、1ミリも思ってないんだけど。
暫くして、玄関の方で何人かの話し声が微かに聞こえてきて緊張する。とりあえず、また床に座った。ジーンズの裾を上げ、靴下を下げて足の縛られていた跡を確かめたが、少し赤くなっただけで大丈夫に見えた。
「優樹!」
大きな声に顔を上げる。部屋のドアが開いたかと思うと、親父の姿が現れた。スーツに革のコートを羽織って洒落込んでいるが、髪はボサボサ……。そして、その後ろから長身の男が親父を押し退けるようにして素早く俺に近づいてきた。
「優樹様!」
『……愼!』
ジーンズに赤のチェック柄のシャツだけ。今の時期には考えられないような薄着で来た男。その男は愼と同じ声を出し、同じ顔を持っていた。
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