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衝撃
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「お、おいっ! そんなに強く締めたら!」
『優樹様! 優樹様! …………優樹!』
米田さんの声が聞こえる。喉が腕で締め付けられて、もう声を出すのは無理だった。愼の俺を呼ぶ声は、両耳に入れていたイヤフォンが外れて聞こえなくなっていった。
『く、苦しい。愼!』
首に回った腕を両手で外そうともがきながら、力を振り絞って顔を上げる。より強くなった締め付けに合いながら確認できた顔。ネズミ顔がニヤケてこちらを見ていた。……俺の意識は、そこでプツリと途絶えた。
『…………愼。』
夢を見ていた。たぶん。愼が一所懸命に呼びかけてきている夢。「起きてください! 目を覚まして!」愼がそう叫んでいる。
『大丈夫だ。愼。』
意識がはっきりしてきたと同時に、思いっきり咳き込んだ。そして気づく。両手が頭の上で縛られている。両足も。体を横にして咳き込みながら目を開けると、そこは茶色のフローリングの上だった。
「目が覚めたか。じゃあ目隠し、そして口も。おい。」
男の声の方を見る間も無く、黒いアイマスクをかざした手が見えて、眼鏡が外され目を覆われた。そして布テープが引きだされる音が聞こえたかと思うと、口を覆われてしまった。
「ほ、本当にこんなことしてていいんですかね?」
「馬鹿野郎、何言ってんだ。コイツは王高寺グループの跡取りだぜ? それに俺たちにはあの方がついてる。」
米田さんと多分、あのネズミ男の声だ。「あの方」って誰だ? こんな状況になっているのに、妙に冷静な自分に安心する。荷物の中にはスマホもイヤフォンの予備もある。帽子は……今は被ってないが、近くにあるのか?
「けどよ、コイツ現金持ってなかったな? 五千円もなかったってどうよ? 今時の大学生ってそんな感じ? 一応カードだけは抜き取ったけど。暗証番号……おい、コイツの誕生日っていつ?」
「く、9月だったかと……。日にちは知りません。」
暗証番号は誕生日っていつの時代の話だよ。俺は大好きな音楽アーティストのボーカルの誕生日、1105にしていた。誰にも言ったことがない。絶対に分かりっこない番号。
「チッ。お前使えねぇな。ま、暗証番号入れなくても使える場所はあるからな。はーー、早く来ねぇかな。2時間って、どこから来るんだっつうの。」
「に、荷物は全部す、捨ててきて正解っスね。」
「ああ、足がつくからな。特にスマホ。」
米田さんが怯えているのが分かる。主導権はネズミ男にあって、米田さんはそれに従っているというところだ。でも「荷物を全て捨ててきた」という米田さんの言葉を聞いて、絶望感が少しずつ体を覆ってくるのを感じた。
『優樹様! 優樹様! …………優樹!』
米田さんの声が聞こえる。喉が腕で締め付けられて、もう声を出すのは無理だった。愼の俺を呼ぶ声は、両耳に入れていたイヤフォンが外れて聞こえなくなっていった。
『く、苦しい。愼!』
首に回った腕を両手で外そうともがきながら、力を振り絞って顔を上げる。より強くなった締め付けに合いながら確認できた顔。ネズミ顔がニヤケてこちらを見ていた。……俺の意識は、そこでプツリと途絶えた。
『…………愼。』
夢を見ていた。たぶん。愼が一所懸命に呼びかけてきている夢。「起きてください! 目を覚まして!」愼がそう叫んでいる。
『大丈夫だ。愼。』
意識がはっきりしてきたと同時に、思いっきり咳き込んだ。そして気づく。両手が頭の上で縛られている。両足も。体を横にして咳き込みながら目を開けると、そこは茶色のフローリングの上だった。
「目が覚めたか。じゃあ目隠し、そして口も。おい。」
男の声の方を見る間も無く、黒いアイマスクをかざした手が見えて、眼鏡が外され目を覆われた。そして布テープが引きだされる音が聞こえたかと思うと、口を覆われてしまった。
「ほ、本当にこんなことしてていいんですかね?」
「馬鹿野郎、何言ってんだ。コイツは王高寺グループの跡取りだぜ? それに俺たちにはあの方がついてる。」
米田さんと多分、あのネズミ男の声だ。「あの方」って誰だ? こんな状況になっているのに、妙に冷静な自分に安心する。荷物の中にはスマホもイヤフォンの予備もある。帽子は……今は被ってないが、近くにあるのか?
「けどよ、コイツ現金持ってなかったな? 五千円もなかったってどうよ? 今時の大学生ってそんな感じ? 一応カードだけは抜き取ったけど。暗証番号……おい、コイツの誕生日っていつ?」
「く、9月だったかと……。日にちは知りません。」
暗証番号は誕生日っていつの時代の話だよ。俺は大好きな音楽アーティストのボーカルの誕生日、1105にしていた。誰にも言ったことがない。絶対に分かりっこない番号。
「チッ。お前使えねぇな。ま、暗証番号入れなくても使える場所はあるからな。はーー、早く来ねぇかな。2時間って、どこから来るんだっつうの。」
「に、荷物は全部す、捨ててきて正解っスね。」
「ああ、足がつくからな。特にスマホ。」
米田さんが怯えているのが分かる。主導権はネズミ男にあって、米田さんはそれに従っているというところだ。でも「荷物を全て捨ててきた」という米田さんの言葉を聞いて、絶望感が少しずつ体を覆ってくるのを感じた。
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