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衝撃
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しおりを挟む「なあ、やっぱり岡村っていう奴だろ?」
マンションに帰り、愼と2人きりになったところで話しかける。もう2時近く。お腹がぺこぺこだ。近所のスーパーで買ってきたカツ丼とインスタントの味噌汁を広げた。
『申し訳ありません。優樹様から送られてきた画像を解析したのですが、生憎ここで働いていた頃の画像を残してはおらず。派遣会社のデータを調べてみましたが、そこにある顔写真とは一致しませんでした。』
大学で米田さんと別れた後で愼には、駅で会った奴のことを詳しく教えていた。あのネズミ顔、間違いないと思うんだけど。お湯を沸かすために瞬間湯沸かしポットに水を入れる。
「どんな顔だった?」
ポットのスイッチを自分で入れて上着からスマホを取り出す。愼から送られてきた画像を見ると、記憶にある顔とは全く違かった。丸顔で眼鏡をかけ、髪は短くパーマがかかっている。
「えっ? コイツ違うじゃん!」
眼鏡を外して痩せさせて、髪をストレートにしても……やっぱり違うと思うぞ? でも紹介履歴のところには確かに「岡村俊次郎」とあり、調理師免許所有の文字も確認できた。
『そうですか。24時間でデータを書き替える初期設定が今更ながらに悔やまれます。今朝の画像は消去することなく保存いたしました。優樹様、昼食をお食べください。』
愼の言葉にハッとする。お湯が沸いた。カップに湯を注ぎカツ丼をレンジで温める。
「なあ愼、もう一度見せて。」
カウンターに昼食を置いて、パソコンも立ち上げた。瞬時にさっき見たばかりの「岡村俊次郎」の画像が浮かび上がる。大きくしてみても……鼻や口元が違うと思うんだ。年は33歳とも取れなくはないか? でも結構若いような気がする。
今朝は小林さんは暫く大学前駅で待機したという。気になる信号がずっと動かなかったらしい。不審に思われないように気をつけながら、ホームや駅の外も見回ったが、何も得るものが無かったと愼から聞いていた。
『もう一度、親父と連絡を取ってみるか?』
そんな考えが浮かんできて、いやいやいやと首を振る。この前連絡したばかりだし、愼がうまくやっているはずだし。
「なあ、大学の中では、信号は見かけないんだろ?」
カツ丼の甘辛く味のついたご飯を飲み込み、愼に問いかける。パソコンの画面が愼に変わって口を開いた。
『はい。ただ、今朝方長時間確認できた信号が気になります。駅で30分ほど経過した後、信号が途絶えました。』
「えっ? 何? 途絶えたって。」
黒の開襟シャツを着た、無駄に色気を振りまく愼の姿に見惚れてた俺は、一転して現実に引き戻された。
『おそらく電源を切ったのでしょう。』
「何だそれ? 本当に警戒する意味あるのかな?」
味噌汁の最後の一口を飲み干して愼に問いかける。
『警戒に警戒を重ねても充分ではありません。正孝様も危惧していらっしゃいます。』
温かいものを胃に入れたはずが、愼の言葉に体が急激に冷やされていくような、そんな気がした。
マンションに帰り、愼と2人きりになったところで話しかける。もう2時近く。お腹がぺこぺこだ。近所のスーパーで買ってきたカツ丼とインスタントの味噌汁を広げた。
『申し訳ありません。優樹様から送られてきた画像を解析したのですが、生憎ここで働いていた頃の画像を残してはおらず。派遣会社のデータを調べてみましたが、そこにある顔写真とは一致しませんでした。』
大学で米田さんと別れた後で愼には、駅で会った奴のことを詳しく教えていた。あのネズミ顔、間違いないと思うんだけど。お湯を沸かすために瞬間湯沸かしポットに水を入れる。
「どんな顔だった?」
ポットのスイッチを自分で入れて上着からスマホを取り出す。愼から送られてきた画像を見ると、記憶にある顔とは全く違かった。丸顔で眼鏡をかけ、髪は短くパーマがかかっている。
「えっ? コイツ違うじゃん!」
眼鏡を外して痩せさせて、髪をストレートにしても……やっぱり違うと思うぞ? でも紹介履歴のところには確かに「岡村俊次郎」とあり、調理師免許所有の文字も確認できた。
『そうですか。24時間でデータを書き替える初期設定が今更ながらに悔やまれます。今朝の画像は消去することなく保存いたしました。優樹様、昼食をお食べください。』
愼の言葉にハッとする。お湯が沸いた。カップに湯を注ぎカツ丼をレンジで温める。
「なあ愼、もう一度見せて。」
カウンターに昼食を置いて、パソコンも立ち上げた。瞬時にさっき見たばかりの「岡村俊次郎」の画像が浮かび上がる。大きくしてみても……鼻や口元が違うと思うんだ。年は33歳とも取れなくはないか? でも結構若いような気がする。
今朝は小林さんは暫く大学前駅で待機したという。気になる信号がずっと動かなかったらしい。不審に思われないように気をつけながら、ホームや駅の外も見回ったが、何も得るものが無かったと愼から聞いていた。
『もう一度、親父と連絡を取ってみるか?』
そんな考えが浮かんできて、いやいやいやと首を振る。この前連絡したばかりだし、愼がうまくやっているはずだし。
「なあ、大学の中では、信号は見かけないんだろ?」
カツ丼の甘辛く味のついたご飯を飲み込み、愼に問いかける。パソコンの画面が愼に変わって口を開いた。
『はい。ただ、今朝方長時間確認できた信号が気になります。駅で30分ほど経過した後、信号が途絶えました。』
「えっ? 何? 途絶えたって。」
黒の開襟シャツを着た、無駄に色気を振りまく愼の姿に見惚れてた俺は、一転して現実に引き戻された。
『おそらく電源を切ったのでしょう。』
「何だそれ? 本当に警戒する意味あるのかな?」
味噌汁の最後の一口を飲み干して愼に問いかける。
『警戒に警戒を重ねても充分ではありません。正孝様も危惧していらっしゃいます。』
温かいものを胃に入れたはずが、愼の言葉に体が急激に冷やされていくような、そんな気がした。
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