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 ジリリリーーン ジリリリーーン

 スマホのアラームが鳴り響き、無意識にベッドから起き上がる。自分がジーンズに普段着のシャツを着ていることに気づき、朝なのか夕方なのか混乱した。

『おはようございます。優樹様。今日は一度で起きられましたね。』

「今何時?」
『7時です。夕べはあまり寝付けなかったようでした。』

 まだ眠い目を擦りながら天井を見上げる。だんだん頭がはっきりしてきた。夕べはハッキングしてきている奴がいると聞いて、緊張してなかなか眠れなかった。

「う……ん。起きるか。何事もなかったよな?」

 一つ大きなあくびをして立ち上がる。とりあえず顔を洗って、服も着替えたい。何となく。寝ている間にコップ一杯分の汗をかくと聞いたことがあるし。

『夜中にもう一度アタックがありましたが、大丈夫でした。』
「夜中?」

 ドアにかけた手を止めて天井を見上げる。本当に大丈夫なのか?

『アルゴリズムを多少複雑に変更いたしております。暫くは大丈夫です。』
「そうか。」

 IT関係のことなど全然わからない。分かりたいとも思わない。親父の会社にも本当は就職なんてしたくないんだ。でも「将来はまずこの会社で働け。」と、既に子会社の一つを指定されていた。

「パン焼こうかな? セットするから、愼頼むな? お湯も沸かして? ココアが飲みたい。」
『承知いたしました。』

 ドアを開けながら、朝の流れを頭に叩き込む。ココアを入れて、パンにバターといちごジャムを塗って食べるんだ。今日は一コマ目から授業があるから急がなければ。




「何で気合を入れた時に限って休講なんだよっ!」
『ラッキーなのではありませんか? いつも喜んでいらっしゃいます。』
「今日は行きたかったんだ。」

 朝食を終え身支度を整えてマンションを出たところで、愼が一コマ目の英語の授業が休講になったと、イヤフォンを通じて知らせてきた。常にスマホを見張っていなければ、知らずに学校に行く奴もいるに違いない。

 今日は米田さんに会わずに済む日のはずだったから、行こうと心に決めていた。バイトもないし。そして明日は休もうかと。……具合が悪くなるんだ。

『残念です。今日は夕方からの授業になりますね。』
「そうだな。音楽でも聴きながら本でも読むかな。」

 マンションのエレベーターに乗りながら呟く。授業で指定された本を読むのにいい機会かもしれない。まあ、読みたいわけじゃないけど。

「お昼は出前を取るかな。」
『いいですね。何にいたしましょう?』

 愼の応えにちょっぴり元気が出て、何を頼むか相談しながら自分の部屋へと辿り着くことができた。

 
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