20 / 65
風呂
3
しおりを挟む
『優樹様、起きてください。』
愼の声で目を覚ます。いつの間にか、2号を抱きしめたままソファで横になっていた。
「う……ん、愼、どこから声を出してるんだ?」
愼に話しかけながら身を起こす。結構大きな声が天井から響いてきたように感じる。頭が回らない。TVはいつの間にか消えていて、部屋の中は薄暗い間接照明だけになっていた。
『上です。2号を床に。少しだけシステムが変です。誰かがハッキングしてきているようです。』
「ハッキング?」
『はい。』
2号を床に下ろす。2号は微かな音を立てて触手を揺らしながら、いつもの場所へと戻っていった。少しだけ頭がはっきりしてきた。と同時に足先が冷たいのに気づく。
「は、はっ、はっくちゅっ! ……いや、ハッキングなんて不可能だろ? 親父の警備システム使ってんじゃないの?」
すっかり湯冷めをしてしまった。出てきた鼻水をティッシュで拭っていると、愼の冷静な声が聞こえた。
『勿論です。そして自分がいる限りは対策は万全です。』
「なら、大丈夫だろ?」
さっき涙を拭うのに使ったティッシュも一緒に捨てよう。そう思いながら、ティッシュを掴んで立ち上がる。ゴミ箱は、キッチンとの間に広がるカウンターの近く。このソファの隣に置いてもいいかも。
「愼?」
なかなか返事をしない愼に気づく。どうしたのだろう? ゴミ箱にティッシュを投げ入れて愼に問いかけた。
『優樹様、今日は念の為に、普段着に着替えて荷物を纏めてお休みになっていただけませんか?』
「何? ヤバイの?」
着替えて荷物を纏めろ? どういうこと? 誰かがこのマンションに侵入するかも知れない、ということだろうか?
『100%安全なシステムはございません。私でさえF.O.企画のシステムに入ることができました。という事は逆もあり得るということです。』
「えっ? 何だか怖いんだけど。」
ブルっと身震いをする。もうすっかり覚めてしまった体がさらに、冷えていくような気がした。両腕を反対側に回してパジャマの上から思い切り擦る。もう少し生地の厚いパジャマが必要だ。
『大丈夫です。私がお守りいたします。しかし、いざという時のためにお着替えを。』
愼の頼もしい言葉で少しだけ安堵が広がる。けど、いざという時のためにって……。ここは愼の忠告に従っておこう。
「分かった。」
鞄のそばにジャンパーを置いて、靴下は鞄に入れておくか。靴は? 靴も寝室へと持ってきておいた方がいいかも知れない。
すっかり目が覚めてしまった。これから寝ることができるのだろうかと訝りながら、着替えて準備をするために寝室へと向かった。
愼の声で目を覚ます。いつの間にか、2号を抱きしめたままソファで横になっていた。
「う……ん、愼、どこから声を出してるんだ?」
愼に話しかけながら身を起こす。結構大きな声が天井から響いてきたように感じる。頭が回らない。TVはいつの間にか消えていて、部屋の中は薄暗い間接照明だけになっていた。
『上です。2号を床に。少しだけシステムが変です。誰かがハッキングしてきているようです。』
「ハッキング?」
『はい。』
2号を床に下ろす。2号は微かな音を立てて触手を揺らしながら、いつもの場所へと戻っていった。少しだけ頭がはっきりしてきた。と同時に足先が冷たいのに気づく。
「は、はっ、はっくちゅっ! ……いや、ハッキングなんて不可能だろ? 親父の警備システム使ってんじゃないの?」
すっかり湯冷めをしてしまった。出てきた鼻水をティッシュで拭っていると、愼の冷静な声が聞こえた。
『勿論です。そして自分がいる限りは対策は万全です。』
「なら、大丈夫だろ?」
さっき涙を拭うのに使ったティッシュも一緒に捨てよう。そう思いながら、ティッシュを掴んで立ち上がる。ゴミ箱は、キッチンとの間に広がるカウンターの近く。このソファの隣に置いてもいいかも。
「愼?」
なかなか返事をしない愼に気づく。どうしたのだろう? ゴミ箱にティッシュを投げ入れて愼に問いかけた。
『優樹様、今日は念の為に、普段着に着替えて荷物を纏めてお休みになっていただけませんか?』
「何? ヤバイの?」
着替えて荷物を纏めろ? どういうこと? 誰かがこのマンションに侵入するかも知れない、ということだろうか?
『100%安全なシステムはございません。私でさえF.O.企画のシステムに入ることができました。という事は逆もあり得るということです。』
「えっ? 何だか怖いんだけど。」
ブルっと身震いをする。もうすっかり覚めてしまった体がさらに、冷えていくような気がした。両腕を反対側に回してパジャマの上から思い切り擦る。もう少し生地の厚いパジャマが必要だ。
『大丈夫です。私がお守りいたします。しかし、いざという時のためにお着替えを。』
愼の頼もしい言葉で少しだけ安堵が広がる。けど、いざという時のためにって……。ここは愼の忠告に従っておこう。
「分かった。」
鞄のそばにジャンパーを置いて、靴下は鞄に入れておくか。靴は? 靴も寝室へと持ってきておいた方がいいかも知れない。
すっかり目が覚めてしまった。これから寝ることができるのだろうかと訝りながら、着替えて準備をするために寝室へと向かった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

オー、ブラザーズ!
ぞぞ
SF
海が消え、砂漠化が進んだ世界。
人々は戦いに備えて巨大な戦車で移動生活をしていた。
巨大戦車で働く戦車砲掃除兵の子どもたちは、ろくに食事も与えられずに重労働をさせられる者が大半だった。
十四歳で掃除兵として働きに出たジョンは、一年後、親友のデレクと共に革命を起こすべく仲間を集め始める。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる