6 / 65
夕食
3
しおりを挟む
『ドアを開けてください。』
洗面所で顔を洗っていると、天井から声が聞こえてきた。小さなスピーカーが取り付けてある。カメラも一緒に。洗面所には浴室も隣接しているから、カメラをガムテープで覆った。もちろん浴室もだ。
「どうした? 掃除?」
顔を拭きながら、ドアを開けてやる。箱型の自動掃除機が長い触手を回しながら中に入ってきた。愼2号と名づけた掃除機がそこいらへんを回り始めた。
俺が洗面所に籠ると、よく愼が自動掃除機を駆使して様子を見にくる。掃除機にももちろんカメラが仕込んであるから、俺の様子を見に来るのだろう。朝は呼びかけられると、こうして入れてやる。問題は夜の風呂だ。ちょっとでも長いと、愼は煩い。昨夜はこの掃除機がドアに何度も体当たりするのに負けて、1時間で風呂を出た。
「毎日掃除しなくてもいいじゃん。今日も来るんだろ? 岡村さん。」
『ガムテープを外していただければいいのですが。』
「馬鹿。外すわけないだろ?」
これでも真新しいマンションの白い天井で、目立たないようにって白の布テープを買ってきたんだ。2㎝の長さ2本分必要なだけなのに、わざわざ25m巻きのを買って貼り付けた。残りの24m96㎝はどこに使う?
『髪の毛が伸びてきましたね。髪の毛の根本2㎝ほど元の髪色に。』
「分かってる。……また染めようかな?」
この2か月髪を切っていない。アッシュグレーに染めた髪も、元の茶色が見えてきて不恰好になってきた。もう一度染め直すかな?
『地毛の色も優樹様にはお似合いです。緩くウェーブされたその髪型は学生の間の流行ですね?』
「うん……。そう。」
どうしても長くなった前髪が気に入らずに、髪をいじりながら上の空で返事をした。やはり今日は美容室を予約するかな?
『優樹様、本日岡村様から時間を変更したいとの申し出がありましたが、どうなされますか?』
「えっ? 何時?」
家にハウスキーパーが入るのは12時から3時間のはず。今は8時半。遅くなるのか? それとも早く?
『9時から12時までに変更が可能か、と言うことです。』
「へぇ、いいんじゃない? 俺も会ってみたい。」
愼2号に向かって呟く。今日は午前中の講義が休みになったから、11時にマンションを出れば、余裕で間に合う。ゆっくりとどこかで昼食もとることができる。2号は最後に洗濯機と洗面台の間に触手を飛ばしてから、方向変換をした。
『承知いたしました。』
岡村さんが来る前に、朝食を摂ってしまおう。2号が洗面所を出る後ろから俺もついていって、リビングへ戻った。
洗面所で顔を洗っていると、天井から声が聞こえてきた。小さなスピーカーが取り付けてある。カメラも一緒に。洗面所には浴室も隣接しているから、カメラをガムテープで覆った。もちろん浴室もだ。
「どうした? 掃除?」
顔を拭きながら、ドアを開けてやる。箱型の自動掃除機が長い触手を回しながら中に入ってきた。愼2号と名づけた掃除機がそこいらへんを回り始めた。
俺が洗面所に籠ると、よく愼が自動掃除機を駆使して様子を見にくる。掃除機にももちろんカメラが仕込んであるから、俺の様子を見に来るのだろう。朝は呼びかけられると、こうして入れてやる。問題は夜の風呂だ。ちょっとでも長いと、愼は煩い。昨夜はこの掃除機がドアに何度も体当たりするのに負けて、1時間で風呂を出た。
「毎日掃除しなくてもいいじゃん。今日も来るんだろ? 岡村さん。」
『ガムテープを外していただければいいのですが。』
「馬鹿。外すわけないだろ?」
これでも真新しいマンションの白い天井で、目立たないようにって白の布テープを買ってきたんだ。2㎝の長さ2本分必要なだけなのに、わざわざ25m巻きのを買って貼り付けた。残りの24m96㎝はどこに使う?
『髪の毛が伸びてきましたね。髪の毛の根本2㎝ほど元の髪色に。』
「分かってる。……また染めようかな?」
この2か月髪を切っていない。アッシュグレーに染めた髪も、元の茶色が見えてきて不恰好になってきた。もう一度染め直すかな?
『地毛の色も優樹様にはお似合いです。緩くウェーブされたその髪型は学生の間の流行ですね?』
「うん……。そう。」
どうしても長くなった前髪が気に入らずに、髪をいじりながら上の空で返事をした。やはり今日は美容室を予約するかな?
『優樹様、本日岡村様から時間を変更したいとの申し出がありましたが、どうなされますか?』
「えっ? 何時?」
家にハウスキーパーが入るのは12時から3時間のはず。今は8時半。遅くなるのか? それとも早く?
『9時から12時までに変更が可能か、と言うことです。』
「へぇ、いいんじゃない? 俺も会ってみたい。」
愼2号に向かって呟く。今日は午前中の講義が休みになったから、11時にマンションを出れば、余裕で間に合う。ゆっくりとどこかで昼食もとることができる。2号は最後に洗濯機と洗面台の間に触手を飛ばしてから、方向変換をした。
『承知いたしました。』
岡村さんが来る前に、朝食を摂ってしまおう。2号が洗面所を出る後ろから俺もついていって、リビングへ戻った。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

オー、ブラザーズ!
ぞぞ
SF
海が消え、砂漠化が進んだ世界。
人々は戦いに備えて巨大な戦車で移動生活をしていた。
巨大戦車で働く戦車砲掃除兵の子どもたちは、ろくに食事も与えられずに重労働をさせられる者が大半だった。
十四歳で掃除兵として働きに出たジョンは、一年後、親友のデレクと共に革命を起こすべく仲間を集め始める。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる