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夕食
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「えっ!? また変わったの?」
『はい。契約を解除致しました。』
「どうして?」
大学から帰り、今日の夕飯は何かとキッチンを漁っていると、愼が思わぬことを言い出した。
『食事の支度を終了した後、部屋を歩き回り、寝室へ入ろうとしました。』
「そ、掃除をしようとしていたんじゃないの?」
1人分には少し多いビーフシチューを温める。フライパンにはハンバーグが2つ。一個は明日の朝ごはんだ。ご飯は……いいか。冷凍ご飯をレンチンするのは面倒臭い。大きなハンバーグを1つ皿に取ってレンジに入れた。
『掃除は食事の支度の前に済ませております。」
「そう……。」
冷蔵庫の中を確かめる。ワカメがふんだんに乗った海鮮サラダに青じそドレッシングを取り出す。腹が減った。
ここで暮らしはじめて2か月が経った。ハウスキーパーを雇って毎日、掃除と洗濯、夕食の準備をしてもらっている。でもこれで辞めさせられたのは4人目……。前のマンションで雇っていた佐藤さんは3日ももたなかった。
『鍵が開かないことが分かると、リビングに戻り、テレビ台の棚からDVDを3個取り出して自身のバッグに詰めました。』
「へぇ……。」
温めたシチューとハンバーグをカウンターに乗せる。スプーンと箸を準備して……飲み物! 冷蔵庫を開けて、ペットボトルの烏龍茶を取り出した。
DVDって……これまたチープな物を選んだな。売っても2,3百円がせいぜいだろうに……。あ、あれか? 昔の海外ドラマ。車に搭載されたAIと組んで悪者を倒すカーアクション……。あれはレアかもしれない。
『そのまま部屋を出ようとした所に呼びかけ、予め呼び出したコンシェルジュに引き渡しました。』
今までも同じような理由でハウスキーパーが辞めていった。コンシェルジュに引き渡してからどうなったのかは知らない。今まで聞いたことがない。
でも、最初のハウスキーパー、佐藤さんを辞めさせたと聞いたときには少しだけショックだった。高3の時から3年間、ずっと世話になったおばさん。太っていて、気さくで、女オンナしてなくて、近所のおばちゃんって感じで、結構気に入ってたんだ。
けれど、俺がリビングに忘れて行った財布を持ち帰ろうとして捕まった。
「いただきます。」
カウンターを回って椅子に座る。綺麗に磨かれたいつものテーブル。カウンター席は俺のお気に入り。いつもここで夕食を摂りながら愼とおしゃべりをする。
「なあ、愼。この部屋には管理AIが、出入りする者を監視してるって予め言っておけば、変な気も起きないんじゃないか?」
熱々のシチューを口に運ぶ。普通に美味い。今回の人は料理の味付けだけは及第点だ。名前は……忘れたけど。
『それでは意味がありません。監視されているから邪な思いを抑えるのではなく、生まれつき邪な思いを持ってない者でなければ。』
「何だ? その理由。そんな奴がいるわけないだろ?」
人間なんて弱い。すぐに誘惑に溺れる。俺の母親が良い例だ。俺という子どもがいながら、経済的にも何不自由ない生活を送りながら、俺を、俺と父さんを捨てた奴。俺だって……邪な思いがないわけじゃない。
『はい。契約を解除致しました。』
「どうして?」
大学から帰り、今日の夕飯は何かとキッチンを漁っていると、愼が思わぬことを言い出した。
『食事の支度を終了した後、部屋を歩き回り、寝室へ入ろうとしました。』
「そ、掃除をしようとしていたんじゃないの?」
1人分には少し多いビーフシチューを温める。フライパンにはハンバーグが2つ。一個は明日の朝ごはんだ。ご飯は……いいか。冷凍ご飯をレンチンするのは面倒臭い。大きなハンバーグを1つ皿に取ってレンジに入れた。
『掃除は食事の支度の前に済ませております。」
「そう……。」
冷蔵庫の中を確かめる。ワカメがふんだんに乗った海鮮サラダに青じそドレッシングを取り出す。腹が減った。
ここで暮らしはじめて2か月が経った。ハウスキーパーを雇って毎日、掃除と洗濯、夕食の準備をしてもらっている。でもこれで辞めさせられたのは4人目……。前のマンションで雇っていた佐藤さんは3日ももたなかった。
『鍵が開かないことが分かると、リビングに戻り、テレビ台の棚からDVDを3個取り出して自身のバッグに詰めました。』
「へぇ……。」
温めたシチューとハンバーグをカウンターに乗せる。スプーンと箸を準備して……飲み物! 冷蔵庫を開けて、ペットボトルの烏龍茶を取り出した。
DVDって……これまたチープな物を選んだな。売っても2,3百円がせいぜいだろうに……。あ、あれか? 昔の海外ドラマ。車に搭載されたAIと組んで悪者を倒すカーアクション……。あれはレアかもしれない。
『そのまま部屋を出ようとした所に呼びかけ、予め呼び出したコンシェルジュに引き渡しました。』
今までも同じような理由でハウスキーパーが辞めていった。コンシェルジュに引き渡してからどうなったのかは知らない。今まで聞いたことがない。
でも、最初のハウスキーパー、佐藤さんを辞めさせたと聞いたときには少しだけショックだった。高3の時から3年間、ずっと世話になったおばさん。太っていて、気さくで、女オンナしてなくて、近所のおばちゃんって感じで、結構気に入ってたんだ。
けれど、俺がリビングに忘れて行った財布を持ち帰ろうとして捕まった。
「いただきます。」
カウンターを回って椅子に座る。綺麗に磨かれたいつものテーブル。カウンター席は俺のお気に入り。いつもここで夕食を摂りながら愼とおしゃべりをする。
「なあ、愼。この部屋には管理AIが、出入りする者を監視してるって予め言っておけば、変な気も起きないんじゃないか?」
熱々のシチューを口に運ぶ。普通に美味い。今回の人は料理の味付けだけは及第点だ。名前は……忘れたけど。
『それでは意味がありません。監視されているから邪な思いを抑えるのではなく、生まれつき邪な思いを持ってない者でなければ。』
「何だ? その理由。そんな奴がいるわけないだろ?」
人間なんて弱い。すぐに誘惑に溺れる。俺の母親が良い例だ。俺という子どもがいながら、経済的にも何不自由ない生活を送りながら、俺を、俺と父さんを捨てた奴。俺だって……邪な思いがないわけじゃない。
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