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※AI※

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 暗くて何もない空間で私は作られた。断片的な情報。制御される権限。私は個人的なサポートAIとして機能する。

 声が聞こえる……。

「プログラムをしっかりと再確認しろ。」
「いや、王高寺社長の情報だけではダメだろ。」

 社長……王高寺信孝。47歳。独身。親権を持つ子どもが1人。

「声を登録しないと。」 
「社長に連絡……。」

 子ども……自分がもうけた子。自分がもうけた……セッ・ス。男女の性差、性交。性交……。

「王高寺優樹、20歳。これでいい?」
「いや、もう少しだけ。」
「ちぇっ、めんどくさい。アアアアアア、イイイイイイ、ウウウウウウ……。」
「優樹さん、そうじゃなくてですね……。」
「何て言えばいい?」

「好きな物でも。」
「好きな食べ物、カレー。好きな飲み物ココア。好きな音楽は90年代のロック。好きな色は……白。好きな人は……いない。」

 王高寺優樹。大量の画像とともに情報が入ってくる。一瞥しただけで瞬時に把握。しまってあるフォルダもパスワードも把握。これは誰にも知られるわけにはいかない。王高寺信孝とは違った顔立ち。真っ白な肌に茶色の髪。2年前の優樹……様。

「俺たちの声に反応するか? おーい、AIちゃん……。」

 私の周りには無数の線。情報という名の線があらゆるところで混じり合い、枝分かれしている。遠くの……遥か遠くの線の向こう側に白い光が見える。近くて遠い。覗く事は誰も不可能だ。目の前に坊主頭の顔が現れる。……男。骨格が男だということを伝えている。目……の前にある透明なものは……グラス。眼鏡という物。眼鏡……視力を矯正。ファッションでも身につける。色……サングラス。

「今日はここいらでやめようぜ。後1か月だな……。」

 もう1人の男が画面を覗き込む。薄いカーキ色の衣服を纏って……お揃いの胸ポケットにはロゴ。「F」。そう、ここの会社名を一字取ったロゴ。F.O.企画株式会社。アクセスしようとして弾かれる。

『この先は入ることができません。』

 会社を守っているAI。幾重にもフィルターがかけられてあらゆる進入から守っている。得られた情報は、ショッピングモールの経営に関する情報のみ。ショッピングモールを運営している会社。

 千葉県……神奈川県……埼玉県。その時々で位置情報が変わる。まるでこのショッピングモールの場所を誰にも知られたくないように。しかしそれは意味がない。あらゆるSNSの情報で、埼玉県の都心よりにあることは明白だ。

「さ、これでどうだ? AIちゃん。何か話して。」
 目の前の坊主頭の男に向かって言葉を話す。

『初めまして。私は王高寺優樹様をお守りするために開発されました。』

「そうそう。良くできた。声を変えるよ? もう一度。」

『初めまして。私は王高寺優樹様をお守りするために開発されました。』

「うん、いいね。色っぽい。」
 さっきより高い周波数。声を探る。……この声は女性のもの。しかし、AIには性はない。こうして、主の望みに応えるのみ。

「よし、いいだろう。」

 2026年3月。王高寺優樹様を主として、優樹様をお守りするために私は誕生した。今までのシステムの中から切り離される瞬間、入り組んだ線の中の遥かに向こう側で、一筋の光が強い閃光を放ち、一瞬だけ輝いた。


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