僕とオオカミどものシェアハウス

オオカミは１人だけ

22

「この車って、あのコウイチさんのものだったの？」
「そう。あの人は所長の１人息子。所長を通じて借りることができた。」

　僕たちは黒の古いランクルに乗り、家に向かって車を走らせていた。ゴツゴツしていてあまり見かけない車。装備も古そうだけど綺麗にしてあるし、とてもカッコいい。トモに似合うと思っていたけど、あの人が乗り回すのを想像しても違和感がない。

「こら、今洸一さんをカッコいいと思っただろ？」
　赤信号で止まった瞬間にトモがこちらを見てきた。えっ？　そんなこと思ってないけど？　この車がコウイチさんにも似合うと思っただけで……。

　トモがシートベルトを緩めて、こちらに向かってきた。乗り掛かられたと思った瞬間に座席が後ろに倒れて慌てて身を起こそうとしたけど、トモの上半身が乗りかかってきていてそれは叶わなかった。

「俺以外見ちゃダメだ。帰ったらお仕置き。覚悟して。」
　チュッとリップ音が響き、唇を奪われる。耳元で囁かれた言葉に顔が熱くなるのが分かった。お仕置きって、お仕置きってどんななんだよ？　僕は恋愛初心者なんだって！　

「ははっ！　カズ可愛すぎる。……手放せない。」
　もう一度唇を重ねてきたトモの向こうに信号が青になったのが分かった。無理矢理顔を背けて唇を離す。

「トモ！　トモっ！　信号青っ！」

　僕の言葉に笑いながら、トモが体勢を立て直してまた車を走らせ始めた。僕も倒れてしまったシートを元に戻しながら前を見る。それから、家のことや車の購入のこと、僕たちの未来のことを話しながら、慣れ親しんだ僕たちのシェアハウスへ帰って行った。


ー　完　ー