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教育実習四週目
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「えっ?」
小池智治? えっ!? 基治って言った? 基治? 小池? 小池ってあの小池じゃないよな?
「カズにずっと会いたかった。」
徐にトモの腕が伸びてきてすっぽりと体が覆われた。トモの温かい体温を感じる。何だか安心できると思いつつも、僕の頭の中は真っ白だった。
「ちょ、ちょっと待って。ちょっと待ってください。」
僕の言葉でトモの力が緩んだ。腕の中からトモを見上げる。少し伸びた前髪から真摯な目が僕を見ていた。自信に満ち溢れていて、そして穏やかな目……。その目が何でも聞いて? と言っているような気がして少しだけ勇気が出てきた。
「もう一度名前を教えて?」
僕の言葉に、視線を外さないままでトモが口を開いた。
「小池智治。ここには身寄りはいない。天涯孤独になる覚悟で、祖父母も元の世界も置いてきた。元の名は小池基治。12年前、カズに告白をして振られた男。」
「嘘だ。」
咄嗟に言葉が転がり出ていた。そんなことあるはずがない。トモが小池? あの小池? そんな馬鹿なことあるはずがない。そう思うのに、トモの視線が外せない。いつの間にかこの1か月間で見慣れていた小池の視線と重なって見えてきた。そういえば、鼻の形も、目も、耳も……似ている?
『僕はどうかしてる。あの小池がトモだって? 夢でも見ているに違いない。』
「夢じゃない。」
僕の思考がそのままトモの口から出てきて、飛び上がりそうになった。僕の体に腕を巻きつけたまま、トモが話し始めた。
「嘘じゃないんだ。昨日は小池基治の家族の葬式があったろ? そしてカズは担任を通じて基治に手紙を渡した。」
身体中の血が重力に引っ張られ、目の前が暗くなって膝から崩れ落ちそうになる。どうしてトモが知っているんだ! 僕の体の力が抜けていったけれど、トモの腕がそれを許さないと力強く支えていた。
「『絶対に乗り越えられる。』そう手紙には書いてあった。その言葉で俺が、どのくらい勇気づけられたかわからない。家族を失ったことから、すぐに立ち直ることができた。時間が経つにつれて思い出にさえなった。けれども1つだけ、心から離れなかったことがある。……それがカズだ。」
「ど、ど、どうして?」
やはり信じられない。手紙を渡してもらったことも事実だし、中にはその言葉も書いた。けれども信じることなどできなかった。
「ほら。」
僕を支えていた右腕が離れて、ジーンズの後ろポケットから何かを取り出した。それは二つ折りになって、少しだけしわくちゃになった茶封筒だった。中から白い紙が出される。見覚えがありすぎる。
「ほら、見て?」
トモが、僕を左腕で抱え込むようにして横に並び、目の前で手紙を広げた。
「小池基治君へ
今君の気持ちを考えると、先生もとても辛くなる。本当は君のそばに行って励ましてあげたい。けれどもそれは叶わない。
だから、気持ちを込めてこの手紙を書く。この手紙で僕の気持ちが伝わって、少しでも君の気持ちが明るくなれば嬉しい。
『今の気持ちは絶対に乗り越えられる日が来るはずだ。』
僕の知り合いの受け売りの言葉を使う。今は信じられない気がするだろうけれど、辛い時にはどうか思い出して欲しい。
五十嵐和」
その手紙をみた瞬間、全身に強い痺れが駆け抜けたような気がした。
小池智治? えっ!? 基治って言った? 基治? 小池? 小池ってあの小池じゃないよな?
「カズにずっと会いたかった。」
徐にトモの腕が伸びてきてすっぽりと体が覆われた。トモの温かい体温を感じる。何だか安心できると思いつつも、僕の頭の中は真っ白だった。
「ちょ、ちょっと待って。ちょっと待ってください。」
僕の言葉でトモの力が緩んだ。腕の中からトモを見上げる。少し伸びた前髪から真摯な目が僕を見ていた。自信に満ち溢れていて、そして穏やかな目……。その目が何でも聞いて? と言っているような気がして少しだけ勇気が出てきた。
「もう一度名前を教えて?」
僕の言葉に、視線を外さないままでトモが口を開いた。
「小池智治。ここには身寄りはいない。天涯孤独になる覚悟で、祖父母も元の世界も置いてきた。元の名は小池基治。12年前、カズに告白をして振られた男。」
「嘘だ。」
咄嗟に言葉が転がり出ていた。そんなことあるはずがない。トモが小池? あの小池? そんな馬鹿なことあるはずがない。そう思うのに、トモの視線が外せない。いつの間にかこの1か月間で見慣れていた小池の視線と重なって見えてきた。そういえば、鼻の形も、目も、耳も……似ている?
『僕はどうかしてる。あの小池がトモだって? 夢でも見ているに違いない。』
「夢じゃない。」
僕の思考がそのままトモの口から出てきて、飛び上がりそうになった。僕の体に腕を巻きつけたまま、トモが話し始めた。
「嘘じゃないんだ。昨日は小池基治の家族の葬式があったろ? そしてカズは担任を通じて基治に手紙を渡した。」
身体中の血が重力に引っ張られ、目の前が暗くなって膝から崩れ落ちそうになる。どうしてトモが知っているんだ! 僕の体の力が抜けていったけれど、トモの腕がそれを許さないと力強く支えていた。
「『絶対に乗り越えられる。』そう手紙には書いてあった。その言葉で俺が、どのくらい勇気づけられたかわからない。家族を失ったことから、すぐに立ち直ることができた。時間が経つにつれて思い出にさえなった。けれども1つだけ、心から離れなかったことがある。……それがカズだ。」
「ど、ど、どうして?」
やはり信じられない。手紙を渡してもらったことも事実だし、中にはその言葉も書いた。けれども信じることなどできなかった。
「ほら。」
僕を支えていた右腕が離れて、ジーンズの後ろポケットから何かを取り出した。それは二つ折りになって、少しだけしわくちゃになった茶封筒だった。中から白い紙が出される。見覚えがありすぎる。
「ほら、見て?」
トモが、僕を左腕で抱え込むようにして横に並び、目の前で手紙を広げた。
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今君の気持ちを考えると、先生もとても辛くなる。本当は君のそばに行って励ましてあげたい。けれどもそれは叶わない。
だから、気持ちを込めてこの手紙を書く。この手紙で僕の気持ちが伝わって、少しでも君の気持ちが明るくなれば嬉しい。
『今の気持ちは絶対に乗り越えられる日が来るはずだ。』
僕の知り合いの受け売りの言葉を使う。今は信じられない気がするだろうけれど、辛い時にはどうか思い出して欲しい。
五十嵐和」
その手紙をみた瞬間、全身に強い痺れが駆け抜けたような気がした。
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