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教育実習四週目
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その時間の数学の学習は完全に無しになったようで、それから子どもたちと「ウィンクキラーゲーム」や「闇フルーツバスケット」というゲームで盛り上がった。
「ウィンクキラーゲーム」はトランプを使って5人のキラーを密かに決めて始まる。キラーはウィンクをして一般市民を倒すが、5分間でキラー全員が見つかってしまったら、一般市民の勝利。なかなか面白かった。
「闇フルーツバスケット」は椅子を輪にして座り、ごまかし防止のために、5つの果物の中から1つ選んだものを右隣の子にだけ伝える。僕はりんごにした。りんごは多くの子が選ぶに違いない。自分の右隣に座る菊池に伝える。ちょっとした伝言ゲームのようにあちこちで伝えている姿が見られた。負けたら、1つ質問に答えなくてはならない。ちょっぴり気合が入る。
「バナナ。」
ゲーム進行係の佐藤が茶色の髪を触りながら呟く。動いたのは佐藤も含めて7人。結構な人数だった。これが続くことで誰が何を選んだのかが分かる。椅子に座り損ねた渡邊が「好きな食べ物」を答えていた。
「スイカ。」
鬼になった渡邊が放った言葉で8人が動いた。これも多いな。ぶどうやメロンが少ないのか? 次の鬼は長内だ。
「りんご。」
長内の言葉に反射的に動く。一緒に動いたのは加納と三井しかいない! 三井と争うようにして空いている席に突進したけれど、既の所で負けてしまった。
「わー先生、好きな人いる?」
「い、い、いっ、いないよっ!」
好きな人はいない。本当のことを言っているはずなのに、何故か脳裏にトモの顔が浮かんでいた。
それからが大変だった。もちろんぶどうやメロンも指名されたけど、僕に集中放火を浴びせる雰囲気になって、りんごが多く指名された。
「ここの中で好みの人は?」
「全員だ!」
「年上と年下どっちが好み?」
「年上っ!」
答えるたびにチラつくトモには勘弁してほしい。トモの声、トモの滅多に見せない笑顔、そして何度か見たことのある寝顔。トモの体から漂う香り。僕は、僕は……トモが好きなのか?
「どうして数学の先生になろうと思ったの?」
浅川からのこの質問は嬉しい。この一か月で何人かの子には話したことがあるけれども、みんなにも伝えたい。
「実は先生は、中学の頃、数学が苦手だったんだ。でも高校の時にとても良い先生、この佐々木先生に雰囲気が似てたんだけど、素敵な先生に出会って勉強を頑張るようになった。中学の時の問題集も引っ張り出してきて復習するぐらいに。それで、ますます好きになった。」
数学が苦手な子は沢山いる。でも頑張り始めるのに遅いということはないことを伝えたい。
「だから、みんな今からでも遅くないぞ? 数学の答えは基本1つだ。それに辿り着くための手段さえ分かれば、今よりもっとできるようになる。」
ドヤ顔で話したせいか、教卓で眺めていた佐々木先生がニコニコ笑っているのが見えた。いいんだ。いくら笑われても今日が最終日。子どもたちに伝えたいことはもっと沢山ある。
でも、子どもたちは誰一人として冷やかす者はいなかった。僕の気持ちが伝わったようでとても嬉しい。それから楽しい時間があっという間に終わり、僕のお礼の挨拶と佐々木先生の激励の言葉でその時間が終わった。
「五十嵐先生、今度同じ学校で働くことができるといいな。子どもたちの面倒もしっかりと見てくれた。ありがとう。採用試験頑張れよ?」
子どもたちの前で言われて余計に気が引き締まる。採用試験に向けての勉強もまた頑張らないと。試験まであと1か月とちょっとだ。
「ウィンクキラーゲーム」はトランプを使って5人のキラーを密かに決めて始まる。キラーはウィンクをして一般市民を倒すが、5分間でキラー全員が見つかってしまったら、一般市民の勝利。なかなか面白かった。
「闇フルーツバスケット」は椅子を輪にして座り、ごまかし防止のために、5つの果物の中から1つ選んだものを右隣の子にだけ伝える。僕はりんごにした。りんごは多くの子が選ぶに違いない。自分の右隣に座る菊池に伝える。ちょっとした伝言ゲームのようにあちこちで伝えている姿が見られた。負けたら、1つ質問に答えなくてはならない。ちょっぴり気合が入る。
「バナナ。」
ゲーム進行係の佐藤が茶色の髪を触りながら呟く。動いたのは佐藤も含めて7人。結構な人数だった。これが続くことで誰が何を選んだのかが分かる。椅子に座り損ねた渡邊が「好きな食べ物」を答えていた。
「スイカ。」
鬼になった渡邊が放った言葉で8人が動いた。これも多いな。ぶどうやメロンが少ないのか? 次の鬼は長内だ。
「りんご。」
長内の言葉に反射的に動く。一緒に動いたのは加納と三井しかいない! 三井と争うようにして空いている席に突進したけれど、既の所で負けてしまった。
「わー先生、好きな人いる?」
「い、い、いっ、いないよっ!」
好きな人はいない。本当のことを言っているはずなのに、何故か脳裏にトモの顔が浮かんでいた。
それからが大変だった。もちろんぶどうやメロンも指名されたけど、僕に集中放火を浴びせる雰囲気になって、りんごが多く指名された。
「ここの中で好みの人は?」
「全員だ!」
「年上と年下どっちが好み?」
「年上っ!」
答えるたびにチラつくトモには勘弁してほしい。トモの声、トモの滅多に見せない笑顔、そして何度か見たことのある寝顔。トモの体から漂う香り。僕は、僕は……トモが好きなのか?
「どうして数学の先生になろうと思ったの?」
浅川からのこの質問は嬉しい。この一か月で何人かの子には話したことがあるけれども、みんなにも伝えたい。
「実は先生は、中学の頃、数学が苦手だったんだ。でも高校の時にとても良い先生、この佐々木先生に雰囲気が似てたんだけど、素敵な先生に出会って勉強を頑張るようになった。中学の時の問題集も引っ張り出してきて復習するぐらいに。それで、ますます好きになった。」
数学が苦手な子は沢山いる。でも頑張り始めるのに遅いということはないことを伝えたい。
「だから、みんな今からでも遅くないぞ? 数学の答えは基本1つだ。それに辿り着くための手段さえ分かれば、今よりもっとできるようになる。」
ドヤ顔で話したせいか、教卓で眺めていた佐々木先生がニコニコ笑っているのが見えた。いいんだ。いくら笑われても今日が最終日。子どもたちに伝えたいことはもっと沢山ある。
でも、子どもたちは誰一人として冷やかす者はいなかった。僕の気持ちが伝わったようでとても嬉しい。それから楽しい時間があっという間に終わり、僕のお礼の挨拶と佐々木先生の激励の言葉でその時間が終わった。
「五十嵐先生、今度同じ学校で働くことができるといいな。子どもたちの面倒もしっかりと見てくれた。ありがとう。採用試験頑張れよ?」
子どもたちの前で言われて余計に気が引き締まる。採用試験に向けての勉強もまた頑張らないと。試験まであと1か月とちょっとだ。
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