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教育実習四週目
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佐々木先生は、6時間目が終わる頃には帰ってきて帰りの学活と部活動を普通に指導していた。子どもたちを全員帰らせて体育館の戸締りをしていた時、僕から思い切って小池の事を聞いてみた。
『小池は……泣いてはなかったが、辛いだろうな。何も話さなかった。俺も何も言えなかったよ。ここで変に励ますのは逆効果だ。小池のお祖母さんと話してきたんだが、通夜は明日、葬儀は金曜日になるらしい。』
小池の心情を慮ると胸が苦しい。佐々木先生でも何も言えなかったのなら、僕が会ったにしても当然何も言えないだろう。
昨日、教室から降りる時の階段で……。あの視線、あの目が忘れられない。小池は今何を考えて、何を思っているのだろう。
通夜も葬式も日中行われるという事で、僕が参加するのは無理なようだった。佐々木先生は葬儀に参列するらしい。金曜日の午後、暫く留守になるからよろしく頼む、そう先生から頼まれた。
時刻は午後7時過ぎ。シェアハウスの玄関の扉を開けると、3つの靴が並んで置いてあってキッチンの方から賑やかな声が聞こえてきた。何だか今はにこやかな顔で話に加わる気分ではない。このまま自分の部屋へ籠りたい。でも……挨拶をしないではいられないよな。
「ただいま帰りました。」
「だから薔薇の香りが1番なんだって!」
リビングのドアを開けると、リョウの威勢のいい声と2人分の笑い声が聞こえてきた。
「ああ、お帰り。もうすぐできるよ。今日はすき焼き。カズは卵で食べる派だよな?」
涙を拭きながらユウがキッチンから話しかけてきた。今日は珍しくトモがソファに座り、テーブルではツンと怒ったような顔のリョウが座っていた。
「お帰り。」
「おかえりー。」
2人に挨拶されても違和感が拭えなかった。いつもキッチンに立っているのはトモのはずだ。
「……今日はね、特別。俺もある程度なら料理ができるしね。着替えておいでよ。準備しておくから。」
「あ、はい。」
いつの間にか近づいてきていたユウに肩を叩かれて我に返った。笑顔のまま僕を見るトモが知らない人のようだった。昨夜から今朝にかけての出来事が嘘だったように感じて、ただトモの顔を見つめていた事に気づいた。
リビングを出て自室に上がる。僕はどうしたんだろう? 昨日のトモは何だったんだろう? そして僕はトモに何を期待していたんだろう? 混乱した気持ちのまま、スーツを脱ぐ。
『小池のところに行ってやりたい。』
今1番僕を必要としているのは小池なのではないか? 好きだという気持ちに応えてあげられなくとも、今そばにいて、あの自分より華奢な肩を支えていてあげたい。そう思った瞬間に、ポロッと涙が一粒床に落ちた。
『あれ? 僕泣いて……。』
そう思った瞬間に、ポタポタと涙が床に落ち始めた。慌てて止めようとしても止まらない。どこから湧いてくるのか分からないサラサラとした涙が流れるように落ちていった。
トントン
扉をノックすると同時に誰かが中に入ってきた。涙を拭いて振り返った途端に、トモに……抱きしめられていた。
『小池は……泣いてはなかったが、辛いだろうな。何も話さなかった。俺も何も言えなかったよ。ここで変に励ますのは逆効果だ。小池のお祖母さんと話してきたんだが、通夜は明日、葬儀は金曜日になるらしい。』
小池の心情を慮ると胸が苦しい。佐々木先生でも何も言えなかったのなら、僕が会ったにしても当然何も言えないだろう。
昨日、教室から降りる時の階段で……。あの視線、あの目が忘れられない。小池は今何を考えて、何を思っているのだろう。
通夜も葬式も日中行われるという事で、僕が参加するのは無理なようだった。佐々木先生は葬儀に参列するらしい。金曜日の午後、暫く留守になるからよろしく頼む、そう先生から頼まれた。
時刻は午後7時過ぎ。シェアハウスの玄関の扉を開けると、3つの靴が並んで置いてあってキッチンの方から賑やかな声が聞こえてきた。何だか今はにこやかな顔で話に加わる気分ではない。このまま自分の部屋へ籠りたい。でも……挨拶をしないではいられないよな。
「ただいま帰りました。」
「だから薔薇の香りが1番なんだって!」
リビングのドアを開けると、リョウの威勢のいい声と2人分の笑い声が聞こえてきた。
「ああ、お帰り。もうすぐできるよ。今日はすき焼き。カズは卵で食べる派だよな?」
涙を拭きながらユウがキッチンから話しかけてきた。今日は珍しくトモがソファに座り、テーブルではツンと怒ったような顔のリョウが座っていた。
「お帰り。」
「おかえりー。」
2人に挨拶されても違和感が拭えなかった。いつもキッチンに立っているのはトモのはずだ。
「……今日はね、特別。俺もある程度なら料理ができるしね。着替えておいでよ。準備しておくから。」
「あ、はい。」
いつの間にか近づいてきていたユウに肩を叩かれて我に返った。笑顔のまま僕を見るトモが知らない人のようだった。昨夜から今朝にかけての出来事が嘘だったように感じて、ただトモの顔を見つめていた事に気づいた。
リビングを出て自室に上がる。僕はどうしたんだろう? 昨日のトモは何だったんだろう? そして僕はトモに何を期待していたんだろう? 混乱した気持ちのまま、スーツを脱ぐ。
『小池のところに行ってやりたい。』
今1番僕を必要としているのは小池なのではないか? 好きだという気持ちに応えてあげられなくとも、今そばにいて、あの自分より華奢な肩を支えていてあげたい。そう思った瞬間に、ポロッと涙が一粒床に落ちた。
『あれ? 僕泣いて……。』
そう思った瞬間に、ポタポタと涙が床に落ち始めた。慌てて止めようとしても止まらない。どこから湧いてくるのか分からないサラサラとした涙が流れるように落ちていった。
トントン
扉をノックすると同時に誰かが中に入ってきた。涙を拭いて振り返った途端に、トモに……抱きしめられていた。
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