僕とオオカミどものシェアハウス

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教育実習四週目

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 バス停を降りて校門まで300mほど。ゆっくりと歩きながら昨夜からのことを思い出していた。


……………………

「おはよう。」
 目を開けるとそこには黒髪のイケメンがいた。僕をがっしりと抱きかかえてほんの少しだけ微笑んで……。

 チュッ

 額にリップ音が響いた時には確実に僕の体温は上がっていた。自分から潜り込んだにせよ、この状況はまずいだろ?

「ぐっすり眠れた。ありがとう。そのパジャマ可愛いな。」

 トモの放った最後の一言で、顔から火が吹き出しそうだった。洗濯は一緒にしているから分かってるはずなのに……。トモはたまに意地悪だ。白地に茶色のクマの顔がドットのように散りばめられているパジャマを見下ろして、濃紺チェックの方にするんだったと後悔した。

「起きよう。朝食を作る。今日は俺も仕事だ。」
 その一言で、まだトモの腕枕をしたままだったことに気づいて慌てて体を起こした。

「は、は、はいっ! 支度、支度をしてきますね!」
 トモの体から毛布を剥ぎ取り、それを引きずりながら後ろを振り向かずに自室へと上がっていった。

 平常心に戻るまでかなりの時間がかかった。その間、トモやユウの部屋のドアの開閉音が聞こえたり、下から賑やかな声が聞こえてきたりしていた。みんな起き出したに違いない。テーブルに乗せたままだったスマホで時間を確認すると、もう6時半になる。慌てて支度を始めた。

「おはよう。夕べはぐっすり寝てたね。襲われなかった?」
 顔を洗って荷物を持ってリビングに入ると、ソファに座っていたユウから声をかけられた。途端に体が固まる。えっ? ユウ……僕たちのこと、見たの?

「理性は保った。お前とは違う。」
「ははははっ! トモはそういう奴だ。お陰で俺たちも楽しんだよ。な? リョウ?」
「う、うるさいなっ!」

 会社のロゴが入ったベージュの作業着に身を包んだリョウが赤くなる。リョウはテーブルでサンドウィッチを摘んでいた。

「ほら、カズも食べて。時間がない。」
 トモがサンドウィッチが盛られた皿と野菜スープを運んできた。コップには冷たいお茶。この短時間でよく準備ができるな?

「いただきます。」
 程よく冷めたコンソメスープが空っぽの胃に染み渡る。斜め前のリョウの作業着には胸ポケットのところに「F」のロゴが。どこの会社なのかそういえば聞いたことがなかった。そんな事をぼんやりと考えながら、朝食をとった。

……………………

 校門をくぐる。そういえば、昨日は小池が早退したんだった。ご両親の交通事故……今日はもしかしたら休みかもしれないと思いながら、いつものように職員室に入っていった。

「おっ、五十嵐君おはよう。ちょうどいい。教室に長内がいたら呼んできてくれないか?」
僕が挨拶をするよりも前に佐々木先生に声をかけられた。

「おはようございます。長内ですね、分かりました。何かありましたか?」
 何気なく聞いた質問に返ってきた言葉で、僕の体全身が凍りついた。


「小池の両親が亡くなった。妹も一緒にだ。小池は暫く休みになる。」


 
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