僕とオオカミどものシェアハウス

もこ

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教育実習三週目

18

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「なぁ、昨日トモと何かあった?」
 リョウがソファから声をかけてきた。僕は朝寝坊をしてキッチンで1人、朝食をとっていた。舞茸ご飯に具沢山の味噌汁。鮭の塩焼きにほうれん草のお浸し。全部トモが作ったのだろう。温め直しただけですぐに食べることができた。起きてきた時にはトモとユウはいなかった。仕事に出かけたらしい。

「えっ? な、な、何も無いですよ? ど、どうして?」
「いや、夕べからカズ、なんか変だから。」

 その言葉を聞いて、また顔が熱くなっていくのを感じた。昨日のあの衝撃的な出来事の後、自分が挙動不審になっていたことは分かっている。昼食のナポリタンもほとんど味が分からなかった。トモと向かい合わせになって座りながら、何を話したらいいか分からず、ずっと黙ったままスパゲティを平らげた。

『と、トモも何か話してくれれば良かったのに……。』
 トモはいつもと何も変わらなかった。「食べよう。」とか「後片付けはしておく。」とか「ごちそうさま。」とか……それだけ。まるで、数分前のあのキスが僕の見た夢だったかのような気分にさせられた。でも、「課題頑張って?」と言われた時には、何というか……少しだけくすぐったいような……甘ったるいような……。

「何があった?」
 リョウがソファから立ち上がり、こちらに向かいながらいつもと違う眼差しで僕を見ていた。何か、こう真剣な……獲物を狙うような鋭い目。そうだ、リョウはトモのことが好きだったんだ。

「な、何も。」
 そう答えながら、胃のあたりがズンと重くなるような気がした。リョウは以前「好きだった。」という表現をしていた。じゃあ今は? 今はどうなのだろうか? 僕がトモのことを好きだと言ったら、このシェアハウスでの暮らしは? みんなとの関係は?

『ん? 好き?』
 自然と頭に浮かんだ考えに愕然とする。僕は、僕はトモのことが好きなのだろうか? 混乱する頭を抱えながら、食欲が無くなったことを感じていた。もう少しで完食できるけど……。

「ごちそうさまでした。」
 手を合わせて挨拶をする。テーブルの前で僕を見ていたリョウが口を開いた。
「僕はこれから出かけてくる。お昼は多分誰もいないよ。」

 この気まずい雰囲気の中、1人になれるのはありがたい。昨日何とか仕上げた指導案を、落ち着いて見直すことができる。

「分かりました。行ってらっしゃい。」
 何とか笑顔を作ってリョウを見る。リョウの僕を見る目がふと逸らされた。

「行ってくる。」
 リョウの声が、いつもより元気がないように思えた。


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