僕とオオカミどものシェアハウス

もこ

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教育実習ニ週目

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 ふとパソコンから目を離して隣に置いたスマホを取り上げる。午後の2時半過ぎ。耳につけていたイヤホンを外して耳を澄ませるけど、階下からは何も音がしない。まだリョウとユウは帰ってきてないのかな? それとも気づかなかった? たぶん昨夜はみんな寝不足なはずだから、帰ってきてから自室で寝ている可能性もある。

『お腹がすいたな。』
 指導案はある程度の形はできた。いや、形式を整えた程度だけど。この文章に少しずつ肉付けをしていけば、きっと木曜日には仕上げることができるはず。以前買っておいたレトルトの親子丼の具でも温めて、お昼代わりにしようとテーブルの前から立ち上がった。

『トモもお腹が空くかな?』
 僕の隣の部屋がトモの部屋だ。2階に上がってすぐ右の南側の部屋がユウの部屋。トモの部屋は東で僕の部屋は北側。トモの部屋は田中君が使っていた部屋だ。一度だけ入らせてもらったことがあるけど、結構広かった。奥に屋根の傾斜を利用した収納スペースがついてたっけ。

 廊下で耳を澄ましたけれどやはり物音は聞こえてこなかった。ぐっすり寝ているに違いない。トモが起きたら、食べてもらうようにうどんでも作るか?

『うどん、あったよな?』
 確か先週買ってたうどんは、まだ手付かずで冷蔵庫にあったはずだ。「つるんとなめらか玉うどん」というやつ。下地を多く作っておけば、ユウやリョウが帰ってきてもすぐに食べることができるだろう。

 静かに階段を降りて、キッチンへ向かう。扉を開けて冷蔵庫に向かおうとしてふと気付いた。リビングのソファで誰かが寝ている。深緑色の3人がけソファで、こちらを頭にして寝ている男がいた。

『……トモ?』
 近づくにつれて黒髪が見える。トモだ。テーブルに眼鏡を置いてクッションを枕にして寝ている。顔が見える位置まで近づくと、ぐっすりと寝ているトモの姿が確認できた。

『布団で寝れば良かったのに。』
 少し休むと上に行ったはずなのに眠れなかったのかな? でもこのままでは寒そうだ。5月の終わりとはいえ、今日は少しだけ肌寒い。上から毛布でも持ってくるかな?

 静かにその場を離れて自分の部屋のロフトからお気に入りの毛布を引っ張り降ろす。トモの部屋に勝手に入るわけにはいかない。リビングに戻ってそっと掛けてあげると、微かにトモが身動きした。

『ん? 起きるか?』
 寝返りを打って僕の毛布を抱きしめるような形になった。僕は直立不動の状態で見ていたけれど、起きる様子はない。背中が出てしまったけど、ま、いいだろう。音を出来るだけ立てないようにして、うどんを作って食べよう。

「…………せんせい……。」
 トモに背を向けて歩き出した途端に低い声が聞こえた。呼ばれたような気がして振り返る。でも、トモが目覚めるような様子はなかった。

『先生か……。』
 トモの想い女《びと》は年上? いや、会社に先生と呼ぶ同僚がいるのかもしれない。どんな夢を見ているやら。ちょっとだけ興味が出たけれども、空腹には勝てない。さっさと昼食を作って食べようとキッチンへ向かった。


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