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教育実習ニ週目
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「あっ、わー先生、こっち!」
放課後、佐々木先生に3年2組の教室に運ぶようにと頼まれて、数学の教具を2階の資料室まで取りに来た。南と北の校舎を結ぶ通路に差しかかると、賑やかな声に紛れて僕を呼ぶ声がした。加納だ。今日はバドミントン部は体育館が使えずにジョギングと筋トレの日だった。
「和《かず》先生だろっ!」
ちょうどいい。僕も3年の面々には言いたいことがある。声が聞こえた方に歩いていくと、加納、上地、三井、伊達の4人に取り囲まれた。
「いいからこっち。」
他の部員から離れるように連れてこられたのは階段の踊り場。そこで加納が口を開くよりも先に僕の方から話しかけた。
「お前たち、もう来るなよ。」
「えーー、どうして?」
「あそこって、先生の家?」
「あの男の人って、お兄さん?」
「めちゃくちゃイケメンだったよな?」
踊り場の窓から見える空を見上げると、灰色の空と窓にかかる雨粒が見えた。だから今日は校舎内で筋トレなんだ。
「あそこは先生が借りている場所。たぶん3月には引っ越す。そしてあの人は同居人。」
「えっ? 同居人って?」
「え、えっ? 付き合ってる?」
「うわっ、あり得ねーー。」
お前らの思考の方があり得ねえよっ! と、叫びたいところだったが、ここは大人の自分。冷静に諭すべきだろう。
「どこからそんな考えが浮かんでくるんだ。あそこはシェアハウス。聞いたことあるだろ?」
「え? シェアハウスって?」
「共同で借りているってこと。」
4人に話していると、下から重そうな本を抱えた子たちが階段を昇って来た。
「2人で?」
「4人。4人で家賃を割り勘するから、アパートを借りるより安い。」
「幾ら?」
小池と佐藤、そして菊池か? 佐藤と菊池は図書委員だったかな? 山のような本を抱えて危なかしい。僕を質問攻めにしている4人を壁際に誘導して、3人が通れるように空きを作った。小池が無言で頭を下げる。さすが学級委員長。礼儀正しくてよろしい。
「小池! やっぱりあそこだったんだって。」
「こらっ! 言うなっ!」
他に広がっちゃ、たまらない。佐藤と菊池はサッカー部だし。あそこまではみな気軽に来れる距離にある。休みのたびに子どもたちが遊びに来るようでは気が休まらない。
「ほら、もういいだろ? 後は広めるな。先生だって普通に生活してるんだから、近所迷惑になったら困る。先生は資料を取りに行くんだから、もう終わり。1年と2年の面倒見ろよ。」
半ば強引に子どもたちに言い聞かせて、その場を抜け出す。4人も納得したのかそれ以上突っ込まれることはなかった。
放課後、佐々木先生に3年2組の教室に運ぶようにと頼まれて、数学の教具を2階の資料室まで取りに来た。南と北の校舎を結ぶ通路に差しかかると、賑やかな声に紛れて僕を呼ぶ声がした。加納だ。今日はバドミントン部は体育館が使えずにジョギングと筋トレの日だった。
「和《かず》先生だろっ!」
ちょうどいい。僕も3年の面々には言いたいことがある。声が聞こえた方に歩いていくと、加納、上地、三井、伊達の4人に取り囲まれた。
「いいからこっち。」
他の部員から離れるように連れてこられたのは階段の踊り場。そこで加納が口を開くよりも先に僕の方から話しかけた。
「お前たち、もう来るなよ。」
「えーー、どうして?」
「あそこって、先生の家?」
「あの男の人って、お兄さん?」
「めちゃくちゃイケメンだったよな?」
踊り場の窓から見える空を見上げると、灰色の空と窓にかかる雨粒が見えた。だから今日は校舎内で筋トレなんだ。
「あそこは先生が借りている場所。たぶん3月には引っ越す。そしてあの人は同居人。」
「えっ? 同居人って?」
「え、えっ? 付き合ってる?」
「うわっ、あり得ねーー。」
お前らの思考の方があり得ねえよっ! と、叫びたいところだったが、ここは大人の自分。冷静に諭すべきだろう。
「どこからそんな考えが浮かんでくるんだ。あそこはシェアハウス。聞いたことあるだろ?」
「え? シェアハウスって?」
「共同で借りているってこと。」
4人に話していると、下から重そうな本を抱えた子たちが階段を昇って来た。
「2人で?」
「4人。4人で家賃を割り勘するから、アパートを借りるより安い。」
「幾ら?」
小池と佐藤、そして菊池か? 佐藤と菊池は図書委員だったかな? 山のような本を抱えて危なかしい。僕を質問攻めにしている4人を壁際に誘導して、3人が通れるように空きを作った。小池が無言で頭を下げる。さすが学級委員長。礼儀正しくてよろしい。
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「こらっ! 言うなっ!」
他に広がっちゃ、たまらない。佐藤と菊池はサッカー部だし。あそこまではみな気軽に来れる距離にある。休みのたびに子どもたちが遊びに来るようでは気が休まらない。
「ほら、もういいだろ? 後は広めるな。先生だって普通に生活してるんだから、近所迷惑になったら困る。先生は資料を取りに行くんだから、もう終わり。1年と2年の面倒見ろよ。」
半ば強引に子どもたちに言い聞かせて、その場を抜け出す。4人も納得したのかそれ以上突っ込まれることはなかった。
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