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4:1年と4か月前

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「指示書通りにお願いします。」
「オーケー。バッチリだよ。」
奏さんは立ち止まる事はせずに、正面の窓の右側の壁に向かって歩いて行った。俺たちも後に続く。奏さんが壁を触るとまた扉が開いた。

「明るい……。」
さっきと同じように暗い所へ出るような気がしたけど、今度は明るく広々とした建物の中だった。誰もいない。

「体育館……?」
前に進むと体育館だというのがよくわかる。しかも見慣れた……そうだ! 大学の体育館だっ! 慌てて後ろを振り向く。俺たちが出てきたのは器具庫に入る扉の所だった。

「とりあえず行こう。土足だ。」
体育館の入り口に向かって歩きながら、奏さんが歩き始めた。

「11時45分過ぎ。このぐらいの時間で良かったんだよな?」
「ええ。大丈夫です。」
駿也の言葉に、2人はもうすでにこの計画が分かっていると知る。知らないのは俺だけだ。

体育館の入り口まで来ると、奏さんが駿也と俺に向き直った。
「じゃあ、行ってきて。俺はここで待つから。何かあったら呟いて。洸一が間に入って知らせてくれるはずだ。でも、タイムラグがあるから……充分気をつけるんだぞ? 分かっているだろ?」
「はい、大丈夫です。望、行こう。もうすぐ授業が終わる……。」

駿也に促されて、体育館の扉を開ける。真夏のような太陽が頭上に輝き、体育館に降り立った時よりもさらに暑く感じた。

「駿也、9月の何日?」
駿也は今日のことは全てわかっているはずだ。俺は何故大学に来たのか、その理由を知りたかった。

「9月29日。前期の試験が終わった日。俺が初めて望に会った日だ。」
俺たちは、E棟からずっと講義棟を左手に見ながら歩いていた。試験が終わった日……俺は何が最後だったかな? 午後にも何かあったか……?

「どこに向かってるの?」
「B棟。」
今は試験の真っ最中なのだろう。道には人がいない。B棟でも講義はあったはず……。一年の時の記憶を掘り起こそうとしていた俺は駿也がB棟の入り口に入ろうとしているのを見て慌てて後に続いた。

「こっちだ。」
駿也に促されて入った所は2号室。俺は使ったことがない部屋だった。扉を閉めて駿也に向き合う。もう少しだけ情報が欲しい。

「俺は1号室で弁当を広げていた。そこに、望がやってきたんだ。何か忘れ物をして取りに来た所だった。」
「あっ!」
駿也の言葉に記憶が蘇る。筆箱とノートを忘れて……2時間目のテストの時には友希にシャーペンを借りた。そして……うん、取りに戻った。駿也に似た田崎さんと……そして唐揚げ。……思い出した。

「俺が望を気になり始めたきっかけがここだったんだ。もうすぐ俺が隣の教室にやってくる。ここから覗けるはずだ。」
2時間目の終了時刻は12時10分。今何時だろう?

「今何時?」
「12時3分。」
駿也が見たこともない携帯を取り出して時刻を確認した。




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