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2:好きな人は?
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「何にしようかなぁ。……チョコレートティーで!」
このカフェは全国にチェーン展開をしていて、学校にもある。俺の家の近所のモールにも。初めて入ったのは駿也とだ。俺はあの時と同じものを頼んだ。
「……甘くないか?」
隣で田崎さんが呟いた。顔を見ると、結構しかめ面。……面白い、こんな表情もできたんだ。
「はははっ! 渋い顔っ! バイトの後とか甘いもの欲しくなりません?」
「いや……ここのは甘すぎて。」
田崎さんはアイスコーヒー。ガムシロとミルクには見向きもせずに、プラスチックのカップを手に取った。あの時の駿也と同じ……。俺は何故だか嬉しくなっていた。
店内を見渡すと9時過ぎだというのに、お客さんが多い。奥に空いている席を見つけて2人で歩き出す。こんな些細なことでも嬉しい。一緒に歩きながら、幸せを噛み締める。
「さっき、望って言ったでしょ?」
「?」
席に座ってすぐに問いかけた。田崎さんが不思議そうな顔をしてこちらを見る。……言ったよ。田崎さんが初めて俺の名を呼んだ。それで余計にびっくりしたんだ。……嬉しかった……。
「何だか初めて言われてびっくりしたんですけど、なんかいいですね。親しくなったようで。これからも望でお願いします。」
「あ、ああ。」
にっこり笑ってみせると、田崎さんが少しだけ戸惑ったような表情を見せた。
「そういえば、田崎さんって下の名前は?」
「しゅんや。」
「えっ!?」
気軽に問いかけただけだったのに、答えてくれた田崎さんの言葉に、頭の中から爪先まで電流が駆け抜けた。……うそ……しゅんや? 駿也と同じ?
「字……漢字はどう書くんですか?」
「駿河湾の駿に、也《なり》という文字だ。」
体が微かに震えてくる。漢字も……同じだ。こんな事って……こんなことってありうるわけ?
「どうした?」
田崎さんが怪訝な顔で問いかけてきた。急いで笑顔を貼り付ける。
「いえ、知り合いの名前と同じだったので、びっくりしちゃいました。」
「そうか……。駿也と呼んでもいいぞ? ま、どっちでもいいけど。」
「いやぁ、やっぱり田崎さんです。駿也なんて恐れ多くて呼べません。」
ちょっぴりおどけてみせる。田崎さんが笑顔になってホッと一安心した。
駿也さん……いや、やっぱり田崎さんだ。俺の中の駿也はただ1人……。駿也、今どうしてる? 今俺の目の前にいる君に似た人は、名前まで同じだった。違うのは苗字と学年……。駿也、お前の顔を思い出そうとするけど、やっぱりこの人の顔になっちゃう……。
早く、早く俺の前に現れてくれ……! じゃないと……俺……。
それからたわいもない話をしていたが、俺は頭の隅にいる駿也にずっと呼びかけていた。
『早く連絡よこせよ……駿也……。』
このカフェは全国にチェーン展開をしていて、学校にもある。俺の家の近所のモールにも。初めて入ったのは駿也とだ。俺はあの時と同じものを頼んだ。
「……甘くないか?」
隣で田崎さんが呟いた。顔を見ると、結構しかめ面。……面白い、こんな表情もできたんだ。
「はははっ! 渋い顔っ! バイトの後とか甘いもの欲しくなりません?」
「いや……ここのは甘すぎて。」
田崎さんはアイスコーヒー。ガムシロとミルクには見向きもせずに、プラスチックのカップを手に取った。あの時の駿也と同じ……。俺は何故だか嬉しくなっていた。
店内を見渡すと9時過ぎだというのに、お客さんが多い。奥に空いている席を見つけて2人で歩き出す。こんな些細なことでも嬉しい。一緒に歩きながら、幸せを噛み締める。
「さっき、望って言ったでしょ?」
「?」
席に座ってすぐに問いかけた。田崎さんが不思議そうな顔をしてこちらを見る。……言ったよ。田崎さんが初めて俺の名を呼んだ。それで余計にびっくりしたんだ。……嬉しかった……。
「何だか初めて言われてびっくりしたんですけど、なんかいいですね。親しくなったようで。これからも望でお願いします。」
「あ、ああ。」
にっこり笑ってみせると、田崎さんが少しだけ戸惑ったような表情を見せた。
「そういえば、田崎さんって下の名前は?」
「しゅんや。」
「えっ!?」
気軽に問いかけただけだったのに、答えてくれた田崎さんの言葉に、頭の中から爪先まで電流が駆け抜けた。……うそ……しゅんや? 駿也と同じ?
「字……漢字はどう書くんですか?」
「駿河湾の駿に、也《なり》という文字だ。」
体が微かに震えてくる。漢字も……同じだ。こんな事って……こんなことってありうるわけ?
「どうした?」
田崎さんが怪訝な顔で問いかけてきた。急いで笑顔を貼り付ける。
「いえ、知り合いの名前と同じだったので、びっくりしちゃいました。」
「そうか……。駿也と呼んでもいいぞ? ま、どっちでもいいけど。」
「いやぁ、やっぱり田崎さんです。駿也なんて恐れ多くて呼べません。」
ちょっぴりおどけてみせる。田崎さんが笑顔になってホッと一安心した。
駿也さん……いや、やっぱり田崎さんだ。俺の中の駿也はただ1人……。駿也、今どうしてる? 今俺の目の前にいる君に似た人は、名前まで同じだった。違うのは苗字と学年……。駿也、お前の顔を思い出そうとするけど、やっぱりこの人の顔になっちゃう……。
早く、早く俺の前に現れてくれ……! じゃないと……俺……。
それからたわいもない話をしていたが、俺は頭の隅にいる駿也にずっと呼びかけていた。
『早く連絡よこせよ……駿也……。』
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