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2:他人の幸せ、自分の幸せ
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「おい、学食行こうぜ。」
浩也に誘われて、どうしようか一瞬だけ考える。
「今日は、これで終わりだから食べないで帰ろうと思ってたんだよね。久しぶりにハンバーガー食べたい。」
いつも電車を乗り降りする駅の近くには、ハンバーガーショップがあった。
「でもさ、図書館に本を返しに行くから、途中まで一緒に行こ。」
浩己を誘ってB棟を出る。途中で一緒になった美久ちゃんや友希も一緒だ。
「ハンバーガーか。いいな。俺も帰りに寄って帰るかな。」
「たまに無性に食べたくなるわよね。何が好き?」
「私は照り焼き。あの甘いタレがたまんない。」
「俺はダブルチーズバーガー。めっちゃチーズがうまい。」
友だちの話を聞きながら、何を食べようか考えていた。これから行くつもりのハンバーガーショップは同じチェーン店がモールの中にも入っている。駿也とも入ったっけ……。あの時、駿也は何を食べてた?
「あれ? 望、図書館は?」
浩己の言葉に我に返る。別れ道を過ぎるとこだった。
「あ? ああ、いつも通り学食に行くとこだった。じゃあな、みんな。」
挨拶をして、図書館に向かった。返却だけだから、そんなには時間がかからない。
図書館に本を返して駅までの道を歩く。みな学食に収まったのか、人通りは少なかった。……お腹が空いた。火曜日はいろんな店を開発しようと思ってたけど、独りで行くのはちょっとだけ抵抗がある。文学部の友だちはみな午後の授業を取ってるから、一緒に行こうなんても誘えない。
駅への階段を登って改札を通る。帰りは2番線だ。線路を超えた向こう側。電車が来るまで10分近くある。何か飲み物でも買おうか……。
「田崎さん!」
目指す自販機の前にいたのは、田崎さんだった。何も考えずに声をかける。自然と駆け足になった。4月になってから初めてだ。やっと会えた……!
「田崎さん、久しぶりです! 最近会わないなあって思ってたんですよ。帰るんですか?」
「ああ、帰る。」
そうそう、この声っ! 久しぶりの田崎さんの声が体に染み渡った。
「じゃ、一緒にっ! 火曜日は、俺、午前中だけなんです。これからバイトで。」
「そうか。」
彼女は一緒じゃないんだ……別れた……なんて事はあるかな?
「俺、去年より結構楽になったんですよね。前期は3つも少なくなって……」
「そうだな。」
田崎さんはいくつ授業を取っているんですか? そう聞こうとした時に電車が入ってきた。一緒に中に入ってドアの近くに立った。横に並んで外を見る。電車の窓にこちらを見ている田崎さんの姿が写った。
「コンビニでバイト始めたんです。ほら、駅前の結構新しいコンビニで。」
「ああ、行ったことがある。」
知ってる。見かけたことがあるから。
「駅近なんで、今度来てください。」
「うん。行く。」
窓に写った田崎さんに呼びかける。田崎さんはずっと俺を見ている。何だか首の周りがくすぐったい。ジンワリと温められている、そんな感じ。この幸せがずっと続くといい……無意識にそんなことを考えていた。
浩也に誘われて、どうしようか一瞬だけ考える。
「今日は、これで終わりだから食べないで帰ろうと思ってたんだよね。久しぶりにハンバーガー食べたい。」
いつも電車を乗り降りする駅の近くには、ハンバーガーショップがあった。
「でもさ、図書館に本を返しに行くから、途中まで一緒に行こ。」
浩己を誘ってB棟を出る。途中で一緒になった美久ちゃんや友希も一緒だ。
「ハンバーガーか。いいな。俺も帰りに寄って帰るかな。」
「たまに無性に食べたくなるわよね。何が好き?」
「私は照り焼き。あの甘いタレがたまんない。」
「俺はダブルチーズバーガー。めっちゃチーズがうまい。」
友だちの話を聞きながら、何を食べようか考えていた。これから行くつもりのハンバーガーショップは同じチェーン店がモールの中にも入っている。駿也とも入ったっけ……。あの時、駿也は何を食べてた?
「あれ? 望、図書館は?」
浩己の言葉に我に返る。別れ道を過ぎるとこだった。
「あ? ああ、いつも通り学食に行くとこだった。じゃあな、みんな。」
挨拶をして、図書館に向かった。返却だけだから、そんなには時間がかからない。
図書館に本を返して駅までの道を歩く。みな学食に収まったのか、人通りは少なかった。……お腹が空いた。火曜日はいろんな店を開発しようと思ってたけど、独りで行くのはちょっとだけ抵抗がある。文学部の友だちはみな午後の授業を取ってるから、一緒に行こうなんても誘えない。
駅への階段を登って改札を通る。帰りは2番線だ。線路を超えた向こう側。電車が来るまで10分近くある。何か飲み物でも買おうか……。
「田崎さん!」
目指す自販機の前にいたのは、田崎さんだった。何も考えずに声をかける。自然と駆け足になった。4月になってから初めてだ。やっと会えた……!
「田崎さん、久しぶりです! 最近会わないなあって思ってたんですよ。帰るんですか?」
「ああ、帰る。」
そうそう、この声っ! 久しぶりの田崎さんの声が体に染み渡った。
「じゃ、一緒にっ! 火曜日は、俺、午前中だけなんです。これからバイトで。」
「そうか。」
彼女は一緒じゃないんだ……別れた……なんて事はあるかな?
「俺、去年より結構楽になったんですよね。前期は3つも少なくなって……」
「そうだな。」
田崎さんはいくつ授業を取っているんですか? そう聞こうとした時に電車が入ってきた。一緒に中に入ってドアの近くに立った。横に並んで外を見る。電車の窓にこちらを見ている田崎さんの姿が写った。
「コンビニでバイト始めたんです。ほら、駅前の結構新しいコンビニで。」
「ああ、行ったことがある。」
知ってる。見かけたことがあるから。
「駅近なんで、今度来てください。」
「うん。行く。」
窓に写った田崎さんに呼びかける。田崎さんはずっと俺を見ている。何だか首の周りがくすぐったい。ジンワリと温められている、そんな感じ。この幸せがずっと続くといい……無意識にそんなことを考えていた。
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