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2:良太とその後
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『望、弁当買っておくからさ、昼になったらA -1に来て?』
1月も終わりに近づいた水曜日、授業中に雅人からメールが届いた。シャープペンシルを置いてスマホを取り出す。何だろう? 思いつかない。机の下でオーケーのスタンプを押してしばし考える。昼までに後30分だ。別に行くのは良いけど、何でいつもの学食じゃないんだ?
「どうした?」
隣の浩己が小声で聞いてきた。あれから、結構浩己と仲良くなった。文芸部男子組として学食でも伸一や雅人、隆介、伊吹に紹介済みだ。一緒に昼を食べることも多くなっていた。
「いや……浩己、今日は俺用事が出来たから昼学食に行かないわ。ごめん。」
「ああ、別にいいよ。大丈夫。」
さっき浩己と一緒に学食行こうと話したばかり。それなのに断るのは気が引けたが仕方がない。何にも気にしてなさそうな浩己にホッとしながら、ノートを取る作業に戻った。
A棟のドアを開けて、すぐ近くにある1号室のドアを開ける。誰もいない中で、前の方で男4人がこちらを見ていた。
『良太……!!』
真ん中あたりで俯き加減にいる長身の男は良太だ。……久しぶり……。欅藝祭で襲われてから、会ってなかった……もう2ヶ月が過ぎた。心臓がドキドキと波打ってきたが、あの時のように震えたり、気持ち悪くなったりはしなかった。……ただ、あまり近づけない。ゆっくりと前の方に降りていった。
「望。」
雅人の言葉で体が跳ねるのが分かった。思わず立ち止まる。良太が顔を上げた。
「望、大丈夫だ。コイツ、何もしないよ。」
雅人と隆介がガッチリと良太の腕を握っている。伸一の言葉で、また歩き出すことができた。
「……良太……。」
何て変わってしまったんだろう。運動で鍛えていたはずの体はとても細くなっていた。オールバックにしていた髪は短くなり、スポーツ刈りに……。髪型だけ見れば、高校の時の良太だ。
「望、ごめん。……本当にごめん。」
俺が目の前に立つと、良太が小さく呟いた。
「……。」
なんて言ったらいいか分からない。俺は、目の前にいる良太を見ながら、言葉を探していた。
「あれからさ、俺、ずっとコイツと連絡取ってたんだよね。」
雅人の声に顔を向ける。雅人は真剣な表情をしていた。
「初めはさ、望のことが好きだの一点張り。俺の話を聞きやしない。でも、1ヶ月経った頃からかな……。望に悪いことしたっていう言葉が出始めたのは。」
「そこからだな。俺も話に加わった。」
伸一が話を繋いだ。3人でグループを作り、色々と話し合ったらしい。
「望、好きな子いるんだろ? 今、付き合ってるのか?」
伸一の言葉に、俺はここで正直に言おうと思った。良太のやったことは許せないけど、友だちなのは確かだ。この先、会わないままでいられるわけがない。
「俺、好きな奴がいる。でも付き合ってるわけじゃないし、これから先も付き合えるとは思ってない。けど、好きなんだ。……良太じゃない。……悪いけど、良太を恋愛対象としては見ることができない。」
駿也の顔を思い浮かべようとして失敗した。髪が茶色い……。良太は俺の顔を喰い入るように見ていた。少しだけ怖い。でも最後まで言い切らなくては。
「良太は仲のいい友だちだった。これからもできれば友だちでいたい。けど、あんな事があったから、友だちでいられないというなら……それは受け入れるしかないと思ってる。」
逃げ出したいような、視線を逸らしたいような気持ちを押し殺して、頑張って良太の顔を見ながら言い切った。良太の目から涙が溢れてきた。顔がくしゃっと歪む。
「望……ありがと……。」
1月も終わりに近づいた水曜日、授業中に雅人からメールが届いた。シャープペンシルを置いてスマホを取り出す。何だろう? 思いつかない。机の下でオーケーのスタンプを押してしばし考える。昼までに後30分だ。別に行くのは良いけど、何でいつもの学食じゃないんだ?
「どうした?」
隣の浩己が小声で聞いてきた。あれから、結構浩己と仲良くなった。文芸部男子組として学食でも伸一や雅人、隆介、伊吹に紹介済みだ。一緒に昼を食べることも多くなっていた。
「いや……浩己、今日は俺用事が出来たから昼学食に行かないわ。ごめん。」
「ああ、別にいいよ。大丈夫。」
さっき浩己と一緒に学食行こうと話したばかり。それなのに断るのは気が引けたが仕方がない。何にも気にしてなさそうな浩己にホッとしながら、ノートを取る作業に戻った。
A棟のドアを開けて、すぐ近くにある1号室のドアを開ける。誰もいない中で、前の方で男4人がこちらを見ていた。
『良太……!!』
真ん中あたりで俯き加減にいる長身の男は良太だ。……久しぶり……。欅藝祭で襲われてから、会ってなかった……もう2ヶ月が過ぎた。心臓がドキドキと波打ってきたが、あの時のように震えたり、気持ち悪くなったりはしなかった。……ただ、あまり近づけない。ゆっくりと前の方に降りていった。
「望。」
雅人の言葉で体が跳ねるのが分かった。思わず立ち止まる。良太が顔を上げた。
「望、大丈夫だ。コイツ、何もしないよ。」
雅人と隆介がガッチリと良太の腕を握っている。伸一の言葉で、また歩き出すことができた。
「……良太……。」
何て変わってしまったんだろう。運動で鍛えていたはずの体はとても細くなっていた。オールバックにしていた髪は短くなり、スポーツ刈りに……。髪型だけ見れば、高校の時の良太だ。
「望、ごめん。……本当にごめん。」
俺が目の前に立つと、良太が小さく呟いた。
「……。」
なんて言ったらいいか分からない。俺は、目の前にいる良太を見ながら、言葉を探していた。
「あれからさ、俺、ずっとコイツと連絡取ってたんだよね。」
雅人の声に顔を向ける。雅人は真剣な表情をしていた。
「初めはさ、望のことが好きだの一点張り。俺の話を聞きやしない。でも、1ヶ月経った頃からかな……。望に悪いことしたっていう言葉が出始めたのは。」
「そこからだな。俺も話に加わった。」
伸一が話を繋いだ。3人でグループを作り、色々と話し合ったらしい。
「望、好きな子いるんだろ? 今、付き合ってるのか?」
伸一の言葉に、俺はここで正直に言おうと思った。良太のやったことは許せないけど、友だちなのは確かだ。この先、会わないままでいられるわけがない。
「俺、好きな奴がいる。でも付き合ってるわけじゃないし、これから先も付き合えるとは思ってない。けど、好きなんだ。……良太じゃない。……悪いけど、良太を恋愛対象としては見ることができない。」
駿也の顔を思い浮かべようとして失敗した。髪が茶色い……。良太は俺の顔を喰い入るように見ていた。少しだけ怖い。でも最後まで言い切らなくては。
「良太は仲のいい友だちだった。これからもできれば友だちでいたい。けど、あんな事があったから、友だちでいられないというなら……それは受け入れるしかないと思ってる。」
逃げ出したいような、視線を逸らしたいような気持ちを押し殺して、頑張って良太の顔を見ながら言い切った。良太の目から涙が溢れてきた。顔がくしゃっと歪む。
「望……ありがと……。」
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