俺が送ったメールは瞬時に既読になる。けど、アイツからの返事は一切ないんだ。……俺はいつまで待っていればいい? 〜明日のその先〜

もこ

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2:伸一と隆介と弁当と

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図書館は講義棟が並ぶ場所とは、学食を挟んで反対側にある。図書館を囲むように、5本以上の欅の木が植えてあって、今は小さなオレンジ色の落ち葉で、絨毯を敷き詰めたようになっていた。

ザクザクと落ち葉を踏みながら、芝生を横切って学食の方に向かう。大分人が溢れている。1人で学食も……寂しいな。

「おいっ! 望っ!」
人混みの中から俺を呼ぶ声が聞こえた。すぐに伸一が人混みを抜けてくるのが分かった。後ろから……背の高い……隆介?

「おおおおっ! お前、大丈夫か?」
走ってきた勢いそのままに抱きつかれるような気がして少しだけ後ずさる。しかし、伸一は俺の前でピタッと止まり、俺に触れてくることはなかった。

「うん。大丈夫。心配かけた。」
精一杯笑顔を作って応えた。……大丈夫。無理してない。
「あの時はありがと。メール無視しててゴメン。」

「いいんだって……。それより昼飯だろ? 購買行って弁当買って俺たちだけで食べないか?」
伸一の言葉がありがたかった。隆介も何も言わないが、この顔は全部知ってる。確か伸一が後から来たとか言ってたような気がする。

「いいな。俺、ここで弁当を買うの初めてかも。行こ。」
購買ではまだまだ弁当がたくさん置いてあった。唐揚げ弁当とカフェオレを買って伸一たちと店を出る。近くのB棟のドアを開け、誰もいない1号室で弁当を広げた。

「「「いただきます。」」」
3人で声を揃えて食べ始める。何か話そうと思うが、なかなか言葉が出てこなかった。
「唐揚げ食べる?」
「大丈夫か?」
何か話さなくてはと思った俺の声と隆介の声が重なった。

「……。」
ずっと黙ってた隆介の前に、何を言ったらいいか分からない。そんな俺に伸一が話し出した。
「ゴメンな。望のことを思うと、極力話をしない方がいいと思ったんだけど……。けど心配してたんだ。お前、学校休んでたし。」

「あ、うん。大丈夫だ。それで……良太は? あの後どうしたの?」
聞きたいけど、聞きたくない。唐揚げの味がわからなくなってきた。

伸一と隆介があの後のことを知ってる限り教えてくれた。良太が、雅人と事情を知ったサークルの上野さんにフルボッコにされていた事。本当に殴ってたって……。大丈夫なのか? 良太もだけど、雅人や上野さん……。

「結局、望のことが好きだったってそればっかりだった。最後は泣いてたけどさ……。もう望と関わるなって雅人に言われて、上野先輩もサークル辞めちまえ、って言ってた。」

「そうか……。」
なんて言ったらいいか分からなくなった。良太は仲のいい友だちだった。あのふざけたことを言い合って笑った日々をないものにはしたくない。けど、何事もなかったように接することが出来るかと言われれば……自信がない。今は目の前に良太がいないからこんな風に考えられるのかもしれない。

「雅人は毎日連絡を取ってるみたいだ。今は良太も学校に来てない。……少しは反省しているらしい。」
「そうか……。」
安心したような、でもどこか不安なような、そんな気持ちで同じ言葉しか返せなかった。


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