俺が送ったメールは瞬時に既読になる。けど、アイツからの返事は一切ないんだ。……俺はいつまで待っていればいい? 〜明日のその先〜

もこ

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2:伸一と隆介と弁当と

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『駿也、今すぐ会いたい。』
このメールを見ているんだろ? どうして返事をくれないんだ? ……続けようとした言葉を削除して短い文を送る。やはり今回もすぐに既読がついた。

『もしかしたら、駿也のスマホは壊れているのかな……』
こうも毎回同じ事を繰り返すと、駿也が返事をよこさないのではなくて他に原因があるような気がしてくる。高校の時、俺が覚えているあの僅かな接点の間も、必ず返事をよこす奴だった。既読がついたのに、返事がなくなったのは……確か駿也が消えてからだ。

俺はベッドの中で、ずっと返事がない駿也とのトーク画面を眺めていた。今日は大学祭の最終日。この2日間、家から一歩も出なかった。本当は、良太や伸一たちと昨日も今日も大学へ行って祭りを楽しむことにしていたけど、もうそんな事はどうでも良かった。

『望、大丈夫か?』
『望、アイツの事はもう心配いらないぞ。』
『望くん、何かあった?』

伸一と雅人、美久ちゃんからそれぞれメールが届いたが、まだ返事をしていない。良太の事が頭を掠める度に、気持ち悪さが込み上げる。吐きたいほどではないが、あの強烈な香水の香りがあたりに漂ってくるような気がした。俺の返事を待つように、3人はそれ以上何かを言ってくる事はなかった。

バイトも辞めた。あの日夕方からシフトを入れていたが、休む連絡と一緒に辞める旨も一緒に伝えた。近所でよく利用するコンビニだったけど、もうどうでもいい。バイトのお金は振り込みにしてあるし、4月から働いていて結構な金額が貯まってる。2、3ヶ月バイトをしてなくとも何も問題はない。

『駿也に会いたいな……。』
何も変わらないスマホの画面を閉じ、ベッドの棚に戻す。代わりに駿也の写真を手に取った。ルーズショットで撮ったそれは、駿也の顔は小さすぎるが、俺にはこれで十分だった。サラサラの黒髪……。時折風で見え隠れする駿也の額や眉……。あの時、苦しそうに眉間に皺が寄ってた……。

『……駿也……。』
俺の親友だったんだろ? 今会いたいって言っている友だちの頼みを、お前は何で無視するんだ? 俺なら、何を置いても駆けつけるのに……。涙が出そうになって、慌てて布団を頭まで引き上げる。布団の中で、駿也の顔を思い浮かべた。

高校の自転車置き場で俺を待っている姿……。俺が「おはよっ!」と言うと、満面の笑みでこっちを見てくれた……。

いつだったか、校舎の非常階段で抱きしめられた……。あの時、お前は何を思ってたんだ? もう一度、あの時に帰りたい。そして、聞くんだ。「何考えてる?」って……。

「……駿也……会いたいよ……。」
小声で言って真っ暗な布団の中で駿也と再会する時を思い浮かべる。

『望! ごめん! スマホの具合が悪くて全然分からなかった。望からメールがないから、もう会いたくないと思ってると勘違いしてた。』
茶髪の髪を少しだけ乱れさせて、駿也が走ってくるんだ。そして、抱きしめてくる……。駿也のあの爽やかな香りで包まれて……。

『茶髪っ?』
布団をガバッと取り払い、体を起こした。

『茶髪って……茶髪はないだろ。駿也は黒髪だ。』
自分自身に呆れる。いくら田崎さんが駿也に似ているからといって……。田崎さんには彼女がいるし……。黒髪ストレートの子、ウェーブがかったロングヘアの女《ひと》……思い出して、ため息が出た。

「望、沙耶。 起きてきなさい! もうお昼よっ! 日曜日だからといって、いつまで寝てるのっ?」
「はーい。」
隣の部屋から微かに聞こえる妹の声に、自分も下へ降りようとベッドから降りる。寝間着代わりのスエットを脱いで、ジーンズを取り上げた。



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