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2:大学祭と口づけと
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「お待たせー。売り上げどうよ?」
2年の上野さんと福島さんが連れ立ってやってきた。交代の時間だ。
「上々です。」
お金を入れている箱を傾けて見せる。午前中だけでも結構売り上げたと思う。
「ご苦労さん。後、俺たちで変わるわ。女の子たちは?」
たまにやってくる女子の存在を教えて、良太と2人で後方に下がった。
「はーっ、疲れた。バイトよりしんどかったかも。」
「だな。」
椅子に座ってスポーツドリンクの残りを飲み干す。傍に立ったままの良太も、結構な量のスポーツドリンクを一気に飲んでいた。
「俺ら、昼どうする?」
空のペットボトルを持ったままで、良太に問いかける。目の前の2年生2人は慣れた手つきで、肉と野菜を炒めていた。
「社割で200円でいいぜ。」
「「安っ!」」
上野さんが後ろを向いて話しかけてきた言葉に、俺と良太の声が重なった。200円? 安いっ、買うっきゃないだろ。
「1つくださいっ!」
鞄を取り上げて財布を取り出す。100円玉を2個取り出し、腕を前に出した状態で固まった。俺たちのテントの前を、田崎さんが歩いていた。傍にウェーブがかった長い髪の女の人を伴って……。
「おい、佐々川?」
上野さんの言葉にハッとする。お金を渡して焼きそばを一パック受け取るが、視界の端ではまだ田崎さんたちを追っていた。あの女の人は……彼女ではない。黒髪ストレートで、もっと背が低かった。……新しい……彼女?
「俺も一つ。」
傍で、焼きそばを買う良太の声が聞こえる。結構遠くに離れた2人は、人混みに紛れてやがて見えなくなった。
「はぁーっ。」
知らず知らずのうちにため息が漏れた。別に田崎さんに彼女がいることは分かってたじゃないか……。何で、こう……俺は落ち込んでるんだ?
「望、ちょっと来い。」
焼きそばを鞄にしまっていた良太が徐に腕を掴んできて、我に返った。
「は? ん、何? どうした?」
「いいから。じゃ上野さん、福島さん、後は頼みます。」
鞄を持ち上げ、先輩方に挨拶をする良太の後に慌てて俺も挨拶をした。
「おい、離せよっ!」
「……。」
俺の意思とは無関係に強く腕を掴まれたまま、引きずられるようにして模擬店が並ぶ通りを歩いて行った。良太は無言だ。何だか良太じゃないみたいだ。
「良太っ!」
模擬店から少し離れて連れてこられたそこは、A棟の一階の男子トイレだった。
「な、何? 何だよっ!」
ようやく腕を離されて、痛む場所を撫でながら良太を睨む。良太が怖い顔で俺を見てきたかと思うと、いきなり前から拘束された。
「望! ……好きだ!」
2年の上野さんと福島さんが連れ立ってやってきた。交代の時間だ。
「上々です。」
お金を入れている箱を傾けて見せる。午前中だけでも結構売り上げたと思う。
「ご苦労さん。後、俺たちで変わるわ。女の子たちは?」
たまにやってくる女子の存在を教えて、良太と2人で後方に下がった。
「はーっ、疲れた。バイトよりしんどかったかも。」
「だな。」
椅子に座ってスポーツドリンクの残りを飲み干す。傍に立ったままの良太も、結構な量のスポーツドリンクを一気に飲んでいた。
「俺ら、昼どうする?」
空のペットボトルを持ったままで、良太に問いかける。目の前の2年生2人は慣れた手つきで、肉と野菜を炒めていた。
「社割で200円でいいぜ。」
「「安っ!」」
上野さんが後ろを向いて話しかけてきた言葉に、俺と良太の声が重なった。200円? 安いっ、買うっきゃないだろ。
「1つくださいっ!」
鞄を取り上げて財布を取り出す。100円玉を2個取り出し、腕を前に出した状態で固まった。俺たちのテントの前を、田崎さんが歩いていた。傍にウェーブがかった長い髪の女の人を伴って……。
「おい、佐々川?」
上野さんの言葉にハッとする。お金を渡して焼きそばを一パック受け取るが、視界の端ではまだ田崎さんたちを追っていた。あの女の人は……彼女ではない。黒髪ストレートで、もっと背が低かった。……新しい……彼女?
「俺も一つ。」
傍で、焼きそばを買う良太の声が聞こえる。結構遠くに離れた2人は、人混みに紛れてやがて見えなくなった。
「はぁーっ。」
知らず知らずのうちにため息が漏れた。別に田崎さんに彼女がいることは分かってたじゃないか……。何で、こう……俺は落ち込んでるんだ?
「望、ちょっと来い。」
焼きそばを鞄にしまっていた良太が徐に腕を掴んできて、我に返った。
「は? ん、何? どうした?」
「いいから。じゃ上野さん、福島さん、後は頼みます。」
鞄を持ち上げ、先輩方に挨拶をする良太の後に慌てて俺も挨拶をした。
「おい、離せよっ!」
「……。」
俺の意思とは無関係に強く腕を掴まれたまま、引きずられるようにして模擬店が並ぶ通りを歩いて行った。良太は無言だ。何だか良太じゃないみたいだ。
「良太っ!」
模擬店から少し離れて連れてこられたそこは、A棟の一階の男子トイレだった。
「な、何? 何だよっ!」
ようやく腕を離されて、痛む場所を撫でながら良太を睨む。良太が怖い顔で俺を見てきたかと思うと、いきなり前から拘束された。
「望! ……好きだ!」
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