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2:君の名前は?

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「ここ、一緒にいい?」
目の前にまで行って声をかける。今日はVネックの黒のTシャツに茶色のチェック柄のシャツを羽織っている。髪の色とマッチして、とても似合う。いいな……俺は茶色は似合わない。

「ああ。……!?」
気軽に返事をして顔を上げた茶髪の君は驚いたように目を見開いた。良かった……覚えてた。目の前の椅子を引いて腰を下ろす。すぐに、茶髪の君が話しかけてきた。

「お前……友だちは?」
「振られた。みんなラーメン食べたいって、『麺ー』に行っちゃった。俺一人なんだよね。」
茶髪の君は、また弁当だ。大きな弁当箱にカツ丼が入っている。三つ葉が乗せてあって本格的。……彼女かな? 今日は一緒じゃないのか?

「それ、彼女の手作り?」
どうしても聞いてみたくて言葉にする。彼女がこれから来るとか? ……だったらここにいるわけにはいかない。
「いや……俺。」
呟くように発せられた言葉に驚く。駿也も手作り弁当を持ってきてたけど、この茶髪の君も……。

「へー!凄いなっ!もしかしてB棟であった時の唐揚げも!?」
思わず声が大きくなった。顔が似ているだけじゃない。声だって……。脳内で、髪の色を黒くさせ、メガネをかけさせる。……駿也にしか見えない。
「……ああ。」

「あれ、凄く美味しそうだったよね?ここの唐揚げも美味しいけどさ、何ていうの?見た目がさ。」
「小麦粉と片栗粉の違いか?ここのは市販の唐揚げ粉だろ。」
でも……駿也とは違うんだ。駿也だったら、こんなによそよそしくない。

「え!見ただけで分かるものなの?」
でも、何だか駿也と似た君と話しているだけで、心がホカホカする。どうしてだろう……駿也じゃないのに、駿也が近くにいる、そんな感じ。

「香りでな。あと見た目。俺も何度か使ったことがある。」
「へぇ……凄いなあ。俺、めっちゃ好きなんだけど、この味!ってのに巡り会ったことがないんだよね。何だかいつも一味足りないっつうか、昔食べた味が懐かしいっていうか……。」
「どこで食べた味?」
こんな風に君と気軽に話せるなんて思ってもみなかった。

「うーん、思い出せないんだよね。家ではいつも同じ味付けだし……。いろんなとこの唐揚げ食べてるから、どっかで巡り会ったのを忘れてんだな。たぶん。」
本当は忘れてない。駿也の唐揚げの味。醤油と塩ダレと必ず2種類入ってた。駿也がいなくなってしまった日も……一人で食べたんだ。

「どんな味だったんだ?」
見た目は、君と初めて話をした日に食べてた唐揚げにそっくりだったよ。ついでに香りも……同じように感じた。なんて言ったら君は驚く?

「ここの唐揚げよりはパンチが効いていたのは確か。生姜やニンニクの香りが強くてさ…でも塩辛くはなくて……んー、唐揚げ食べたくなってきた。」
チキンカツを食べながら、駿也の唐揚げを思い出す。駿也の唐揚げ……また食べてみたい……。



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