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2:君の唐揚げ

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初めての大学でのテスト、実質7日間に及んだテストの最終日は1時間めに英語、2時間目には国文学概論だ。これで前期科目が全て終わる。試験がなくレポートだけの科目も提出が済んだ。晴れて明日からは通常の生活に戻れる。

「あ、あれ? 無い……。」
「どうしたの?」
俺の呟きに、後ろから近づいてきた友希が敏感に反応した。

「筆箱が……無い。」
鞄の中をいくら探しても筆箱が無かった。……英語のノートもだ。
「B棟に忘れてきたかな?」
「シャーペンなら一本貸すわよ。余分に持ってるから。」

友希の親切をありがたく受けることにした。B棟で行われた1時間めの英語のテストの時に忘れてきたに違いない。このE棟からB棟までは結構遠い。取りに行っては試験が始まっちゃう。
「ありがと。今の時間だけ貸して。」
友希ちゃんがわざわざ、芯も補充して渡してきた。消しゴムも借りた。持つべきものはしっかりとした友だちだ。程なく入ってきた教授が用紙を配り始め、最後のテストを頑張ろうと頭を切り替えた。



ジリジリジリジリ……

「やったー! 終わりっ!!」
思わず大声を上げる。いい成績は取れそうも無いが、そこそこできたテストで単位はもらえるんじゃないかと思う。出席重視の科目なんかはバッチリだ。なんせ、一度も休んでない。

「望くん、学食行く? 一緒に行かない?」
結構遠くの席にいたはずの美久ちゃんが、いつの間にか近くに来ていた。
「いいよ。これありがと。友希ちゃんは?」
近づいてきた友希ちゃんに、借りたシャーペンと消しゴムを返すと、友希ちゃんはこのまま帰ると言っていた。友希ちゃんと別れて、美久ちゃんと2人でF棟から出る。

「あちーっ! 美久ちゃん暑くないか?」
「冷房効いてたからね。でも今日は本当に暑いわね。真夏に戻った? って感じ。」
美久ちゃんは、細かなドットが飛んでいる紺色のワンピースにクリーム色の薄いカーディガンを羽織ってる。ポニーテールにした後ろ髪で首周りが涼しそうだ。

「今日は何だか服に気合い入ってない?」
「え? そ、そうかな……?」
慌てた様子で顔をほんの少しだけ朱に染めた美久ちゃんに聞いてみようと思い立つ。
「隆介とは、その後どうなったの?」

話を聞くと、驚いたことに隆介と2人で今年の花火大会に行ったのだそうだ。
「えっ!? じゃあ告白……? 成功した……?」
「違うの。告白してないし、されてもないわ。」
花火大会では手も繋がなかったし、学校と同じノリで、ただおしゃべりをしてきただけらしい。浴衣も着て気合いを入れたんだけど……。そういう美久ちゃんにもどかしさを感じた。

『何やってんだか……。隆介も隆介だ。女の子から誘いがかかったら普通、自分から告るだろ。一緒に花火大会行こうと思った時点で、その子を気になってるんだから……。』
ま、結構時間かかるかもな。隆介の浮いた話は一度も聞いたことがない。もう彼女がいるなんていうこと、ないよな?

歩いているうちに、B棟に近づき、忘れてきた筆箱の事を思い出した。
「美久ちゃん、ちょっと待ってて。筆箱取ってくる。」





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