未来も過去も ーコウイチー

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君を忘れる

所長室 1

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「失礼します。」
ノックもせずに扉を開ける。メールで訪れる旨は伝えてあるから問題ない。目の前にいた目つきの悪い男の傍を無言で通る…。

「佐久間君、いいよ。ちょっと外して。」
親父が言葉を発すると、その男は無言で一礼し、所長室を出て行った。親父が座る机の前まで足を運ぶ。

「洸一…髪の毛、元に戻ったな?…どうした?」
どこか嬉しそうな親父の言葉は無視をする。何がそんなに嬉しいんだ?

「管理人を降ろしてください。」
「…なぜ?」
「…」
理由を言うわけにはいかない。親父は俺の気持ちが分かった上で、これまで応援してくれた…。でも、この方がいいんだ。俺が傍にいる事で、奏を苦しめる…。

「地下に戻してください。」
理由を言わない俺の言葉に、親父は微かに眉間にシワを寄せた。
「あの部屋の管理人は必要だ。」
「新田さんにやらせてください。」
「新田君…?」

「新田さんなら何度か変わりを頼んだこともあり、適任だと思います。」
親父の眉間のシワが深くなってきた。
「今年度のプロジェクトは、小野寺君も生田君もあと数回で終了だ。なぜこの時期に?」

「俺があそこにいない方がいいんです。」
誰にとは言わずとも、親父には通じるはずだ…。
「10年前の事と関係あるのか?」
「…」
俺は何も言えなかった。何があって、何が無かったのか詳しくは話したくない。いくら親父の想像が当たっていても、だ。

「無理だな。小野寺君の次の任務は3日後だ。管理人を代えるにしても急すぎる。」
「3日後!?なぜ?」
こんな短期間に連続で過去に送り出すのは、臨時で生田を19年前へ飛ばした時以来だ。いろいろとメンテナンスが必要だから、最低でも5日間は必要なのに…。


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