ある時、ある場所で

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偽りない俺(悠)

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公園を走り抜け、呼吸を整えながら歩いていく。真人の店のあたり…あ、電気が点いた。スマホを確認する。
『待ってる。』
『店の方に来て。』
連続で来ていた返事を眺めた。思わずニヤける。あの灯りがついたところに…真人がいる。

店の前に行くと、小さな灯りの中に動く人影が見えた。
『真人…俺だよ。』
ノックをする…。人影が気づいてドアを開けてくれた。…真人だっ!
「真人っ!会いたかった!!」
「…ゆ、ゆう…?」
真人の全身が見えた瞬間に、思わず両腕の中に真人を閉じ込めていた。


「本名は伊那村悠。真人、好きだっ!」
やっと本当の自分で真人を抱きしめられる…!もう何も悩まなくていい。俺たちは……これからだ。



※※ ※※ ※※ ※※ ※※ ※※

「…ゆう…本当に悠だった…。悠、起きて…。」
真人の声が聞こえる…。目を瞑りながら手を伸ばして、最初に触れたものを引き寄せた。
「…ん、んんんっ。悠っ!」
少し焦ったような声が聞こえて、パッと目を開ける。俺は俺に覆いかぶさるようにしていた真人をガッチリと抱き寄せていた。

「おはよ…キス…しよ。」
構わず真人の顔を引き寄せる。真っ赤な顔をした真人の顔を見た瞬間、体の向きを変えて、真人を組み敷いていた。目を見つめる…ずっと囚われていた瞳。障子戸から漏れてくる柔らかな光を受けて、キラキラしている。吸い込まれるように唇を重ねていた。

『最高…。』
真っ赤な顔のままで、俺のキスに応えてくれる真人に愛しさがつのる。ずっとこうしていたい…。角度を変えながらキスに夢中になる。
「…ん…ゆう…仕事。」
キスの合間に真人が呟いた。白い肌が真っ赤に染まってる。瞳が潤っていて…とても綺麗だ。俺の…瞳…。

「俺の…。」
「…ん?…」
瞼にキスをしながら問いかける。真人は分からなかったらしい…。
「この瞳に俺だけ映したい。この唇にキスできるのも俺だけ。こうやって抱きしめられるのも…俺だけがいい。」
「うん…。」
真人の赤い顔がまた深くなった。目を瞑る。真人の睫毛はこんなに長かったんだ。新たな発見場所にキスを加える。右に…左に…。

「…遅れちゃうよ。」
俺のキスを受け止めながら、真人が呟いた。
「どこに?」
耳朶を甘噛みしながら問いかける。
「…仕事。」

「大丈夫。今日は休みもらったから…。」
唇にチュッと音を立ててキスをすると、真人の目がパチッっと開いた。
「本当?」
「うん。本当。」
「…悠っ!」
真人が嬉しそうな笑顔になって抱きついてきた。

「あはは。な、お父さんとお母さんは?」
お母さんにもお父さんにも言いたい…交際を認めてくれって。昨夜真人が俺を好きな人だと言ってくれた…。俺も、俺からもお願いしたい。
「母さんは今、朝食作ってる。父さんは5時にカフェに行った。もうすぐ戻るよ。朝食食べに。いつもそう。」
「そっか。なあ、真人。お父さんの前でも付き合ってること、言ってもいいか?」
「……もちろん!!」
俺の問いに一瞬驚いた顔を見せた真人がまた俺の肩に顔を埋めた。



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