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4回目〜2年前〜(悠)
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モール前のバス停を降りる。時刻はちょうど6時を回ったところだ。途中コンビニで買った傘を広げた。冷たい雨が横殴りに降り続き、ズボンの膝から下が濡れ始める。
『今なら戻っても問題なかったかもな。』
今日は引っ越したというターゲットを追って静岡まで行った。生きてた。この任務で亡くなった人にはまだ巡り合ってない。過去に誰かを送っても大丈夫なんじゃないか?そんな事を思いながら、東京駅に戻ったのが午後4時。乗るはずの列車に事故による遅延が出ていて、洸一さんには明日戻ると連絡した。ま、紙に書いただけだけど。
『真人の家…探すか。』
スマホの地図アプリに真人の住所を入力する。自分のスマホに写し取った住所は繰り返し眺めたこの数週間の間に頭に入った。300m弱しか離れてない。公園を通ったら…絶対こっちの方が近いな。俺は迷わず公園の中へと足を踏み入れた。
『会いたいなあ。』
洸一さんに脅されて会うつもりは無くなった。家が確認できればいい。3ヶ月後、真っ直ぐに会いに行けるように…。でも、こんなに近くまで来て、顔も見ないなんて考えられない。
『ピンポンしてダッシュ?』
どこかで聞いたやり方だ。公園を抜けると、明かりのついたクリーニング店があった。ちょうど店からビニールに包まれた衣類を持った人が出てくるところだった。この雨で台無しにならないといいが。アプリではこの右側50m。まだ明かりが見える喫茶店のあたり。
『…ここ…?』
地図上で示された場所は喫茶店そのものだった。慌てて店名を確認する。「trois」…フランス語で3を意味する。大学の第二外国語の講義をとって2年間勉強した。あまり真面目には受けなかったけど、数字は頭に入っている。慌ててスマホで検索する。
『地元密着型の憩いの場、か…』
ざっとレビューを見ても悪いことは書いてない。洋風のメニューが豊富で値段も手頃な昔ながらの喫茶店のようだ。写真を見ても…、残念。料理ばかりで店員の写真は1つもない。
『ここが真人の実家か…。箕田さんのカフェにも通えなくはないな…。』
スマホから顔を上げて、窓から店内を覗ける場所まで移動した。
『!!』
明るい店内でスーツ姿の男が若い男を後ろから抱きしめていた。あの嫌そうに身を捩ってる茶色の髪は…真人だ!…走り出したい気持ちを押さえつける。会ってはダメだ。遠くから見るだけにしないと…。でも…。
『真人…付き合ってる奴がいるのか?』
スーツ姿の男が、今度は身を翻した真人を正面から抱きしめている。そして、いつの間にかキスをしていた。俺の「待ってて。」の呪文は効かなかったのかも知れない…。あれから3年。彼氏がいても不思議じゃない。女にもモテるって言われてた真人だし…。
『今なら戻っても問題なかったかもな。』
今日は引っ越したというターゲットを追って静岡まで行った。生きてた。この任務で亡くなった人にはまだ巡り合ってない。過去に誰かを送っても大丈夫なんじゃないか?そんな事を思いながら、東京駅に戻ったのが午後4時。乗るはずの列車に事故による遅延が出ていて、洸一さんには明日戻ると連絡した。ま、紙に書いただけだけど。
『真人の家…探すか。』
スマホの地図アプリに真人の住所を入力する。自分のスマホに写し取った住所は繰り返し眺めたこの数週間の間に頭に入った。300m弱しか離れてない。公園を通ったら…絶対こっちの方が近いな。俺は迷わず公園の中へと足を踏み入れた。
『会いたいなあ。』
洸一さんに脅されて会うつもりは無くなった。家が確認できればいい。3ヶ月後、真っ直ぐに会いに行けるように…。でも、こんなに近くまで来て、顔も見ないなんて考えられない。
『ピンポンしてダッシュ?』
どこかで聞いたやり方だ。公園を抜けると、明かりのついたクリーニング店があった。ちょうど店からビニールに包まれた衣類を持った人が出てくるところだった。この雨で台無しにならないといいが。アプリではこの右側50m。まだ明かりが見える喫茶店のあたり。
『…ここ…?』
地図上で示された場所は喫茶店そのものだった。慌てて店名を確認する。「trois」…フランス語で3を意味する。大学の第二外国語の講義をとって2年間勉強した。あまり真面目には受けなかったけど、数字は頭に入っている。慌ててスマホで検索する。
『地元密着型の憩いの場、か…』
ざっとレビューを見ても悪いことは書いてない。洋風のメニューが豊富で値段も手頃な昔ながらの喫茶店のようだ。写真を見ても…、残念。料理ばかりで店員の写真は1つもない。
『ここが真人の実家か…。箕田さんのカフェにも通えなくはないな…。』
スマホから顔を上げて、窓から店内を覗ける場所まで移動した。
『!!』
明るい店内でスーツ姿の男が若い男を後ろから抱きしめていた。あの嫌そうに身を捩ってる茶色の髪は…真人だ!…走り出したい気持ちを押さえつける。会ってはダメだ。遠くから見るだけにしないと…。でも…。
『真人…付き合ってる奴がいるのか?』
スーツ姿の男が、今度は身を翻した真人を正面から抱きしめている。そして、いつの間にかキスをしていた。俺の「待ってて。」の呪文は効かなかったのかも知れない…。あれから3年。彼氏がいても不思議じゃない。女にもモテるって言われてた真人だし…。
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