ある時、ある場所で

もこ

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2年前、「trois 」で(真人)

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龍也が舌を出しながらキスをしようと顔を近づけてきた。俺は阻止しようと自由がきく右手で龍也の頬を押さえるが、体格のいい龍也の力には負けてしまう。簡単に右手を捕まえられて後ろ手に固められ、唇を奪われた。

「んん…」
嫌だっ!…口づけが深くならないように唇を固く結ぶ。そのうちに、龍也の右手が後ろに回されて、臀部を撫で始めた。顔を背けて唇を離そうとするが、龍也の顔が追いかけてくる。右手の指が、臀部を割って中に入り込んだ途端、声を上げてしまった。

「…んあっ…ウッ」
唇が開いた隙を見逃さないように、龍也の舌が入り込む。嫌々するように顔を動かして離そうとするが、離れない。
『何で…。』

どうして俺は今、好きでもない人とキスをしてるんだろう…。
どうして、俺の分身は反応してしまうんだ?
俺は…誰でもいいのか?
どうして、裕次郎さんは来てくれない?
いつまで待っていればいいんだ?

目頭が熱くなり、涙が頬を流れていった。何だかもう疲れた…。脱力し、抵抗していた手を下ろす。口の中を玩んでいた龍也が唇を離した。
「どうした?その気になった?ホテル行く?…行っちゃう?…ここでもいいけど。…まこちゃん、かわいいっ。」
龍也が嬉々として、目蓋や頬、首筋にキスをしてきた。俺は不感症になったかのように、何も感じなかった。

『俺は…俺はこのまま龍也に抱かれるのか…?』
…「インラン」な自分にはお似合いかもしれない。初めは1ヶ月に1度くらい衝動的に使っていたディ・ドも、最近はかなりの頻度で入れるようになっていた。学校やバイトで疲れて帰っても身体が火照る。裕次郎を求めて…。

いや、俺は裕次郎を求めてるんじゃないのかもしれない。もう、顔も朧げにしか思い出せない。高校2年の秋に俺を抱いた人は…幻だったのかも知れない…。
「…やめて…。」
涙を流して拒絶の言葉を発しながらも、俺は人形のように龍也の愛撫を受け止めていた。

ガン!チリチリチリン…。

「おいっ!何やってんだっ!!」
ドアが乱暴に開かれた音がすると、駆け込んできた男が龍也の腕を捻り上げた。
「いてててて…誰だっ!?……あれ?…ゆう?」
「…龍也かっ!?」

龍也の腕を捻り上げて固まった男を見て、俺も動けなくなった。

『…裕次郎さん…。』

間違いない。3年前と1つも変わらないスーツ、髪型、目、声…。幻だと思い始めていたその姿が寸分の狂いもなく目の前に現れた。

「どうしてここに?…あれ?地元ここだっけ?何でスーツ?髪の毛染めた?」
手を捻られたままの龍也が呑気な声を上げる。2人は…友だちなのか?
「お前は?…というより…だめだ。真人は俺のものだ。これ以上触れるな。」
龍也の腕を離しながら、裕次郎さんが言い放った。


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