10 / 118
1回目〜4年前〜(悠)
2
しおりを挟む
「ふーん…。小野寺先輩は3階に付き合ってる人がいるのか。」
今日の勤務が終わり、自分の部屋に戻りながら独りごちていた。あの様子じゃビンゴだ。しかも男。女と付き合ってて、「殺される」という表現は普通使わないだろ。それに、「やつ」って言ってたし。小野寺先輩の雰囲気からして、たぶん先輩は「下」だな…。
「ざーんねん。好みだったのに。」
3階のバックヤードを抜けて、居住スペースの壁に手紋を当ててひらくと、5つ並んだ真ん中の部屋に進んだ。入ってすぐが小野寺先輩の部屋。1度ここから出てきたのを見たから間違いない。それに今までの話をつき合わせると1番奥が生田先輩の部屋だったところ。俺に割り当てられたのがちょうど真ん中。このモールが建てられてから大分たったが、まだ新築の匂いが漂っている。ここにはほとんど誰も住んでなかったのかもしれない。
「今日は呼ぶの諦めるかあ…由香里、怒るかな?」
1階の雑貨屋で働く彼女にどうやって納得してもらうのかに頭を悩ませる。まだ付き合って1か月。誰にも言わないことを約束させてここへ連れてきた。1回だけだ。誰かに見られてたのか…。あと半年、このショッピングモールに拘束されてなきゃ、どうにでもなるのに…。
『店終わったらメールちょうだい。』
…ま、何事も会ってからだ。俺は彼女にメールを送って浴室に向かった。
「お待たせいたしました。」
目の前に料理が載せてあるお盆が置かれる。料理を持ってきた女の店員が、チラッとこちらを見ている。何だ?俺が好みか?でも俺は二股はかけないぞ?
俺は風呂に入った後、夕飯を食べに1階のレストラン街にいた。今夜の夕飯はトンカツ定食。久しぶりに、ガッツリ脂っこいものを食べたくなった。由香里はまだ勤務中。今日は8時までだと連絡が入った。
『それにしても、奇妙な会社だよなあ。』
トンカツを咀嚼しながら考える。俺が就職したのはFO企画株式会社。ここ、ショッピングモール「FOUR」を運営している。…というのは表向きで、地下にある広いフロアを使って、何やら怪しげな研究をしている。行った事ないけど。大学卒業後、1年間フラフラしていた俺を見て、母親が伯父に泣きつき、経理部に就職させられた。怪しげな研究の事については、就職して1週間後の研修の中で俺だけ別室に呼ばれ、聞かされた。
『今日から、この建物以外に出ることを禁じる。伯父の乾さん、君の両親も納得済みだ。もちろん、誰かにこのことを話すこともダメだ。知っているのは、俺と、同じ経理部の生田、小野寺、あと地下にいる者だけだ。だから、この事を気軽に喋ることができない。』
杉崎課長に言われて、変に納得してしまった。情報漏洩を防ぐための拘束なんだ。アパートまで準備して…。俺はその中のある特殊な任務をこれから半年かけて遂行する事になるんだそうだ。
とにかく、来年の4月1日になるまでは、ここにいるしかない。病気になったらどうすんだ?まさか、病院まで入ってる訳じゃないだろうな?
今日の勤務が終わり、自分の部屋に戻りながら独りごちていた。あの様子じゃビンゴだ。しかも男。女と付き合ってて、「殺される」という表現は普通使わないだろ。それに、「やつ」って言ってたし。小野寺先輩の雰囲気からして、たぶん先輩は「下」だな…。
「ざーんねん。好みだったのに。」
3階のバックヤードを抜けて、居住スペースの壁に手紋を当ててひらくと、5つ並んだ真ん中の部屋に進んだ。入ってすぐが小野寺先輩の部屋。1度ここから出てきたのを見たから間違いない。それに今までの話をつき合わせると1番奥が生田先輩の部屋だったところ。俺に割り当てられたのがちょうど真ん中。このモールが建てられてから大分たったが、まだ新築の匂いが漂っている。ここにはほとんど誰も住んでなかったのかもしれない。
「今日は呼ぶの諦めるかあ…由香里、怒るかな?」
1階の雑貨屋で働く彼女にどうやって納得してもらうのかに頭を悩ませる。まだ付き合って1か月。誰にも言わないことを約束させてここへ連れてきた。1回だけだ。誰かに見られてたのか…。あと半年、このショッピングモールに拘束されてなきゃ、どうにでもなるのに…。
『店終わったらメールちょうだい。』
…ま、何事も会ってからだ。俺は彼女にメールを送って浴室に向かった。
「お待たせいたしました。」
目の前に料理が載せてあるお盆が置かれる。料理を持ってきた女の店員が、チラッとこちらを見ている。何だ?俺が好みか?でも俺は二股はかけないぞ?
俺は風呂に入った後、夕飯を食べに1階のレストラン街にいた。今夜の夕飯はトンカツ定食。久しぶりに、ガッツリ脂っこいものを食べたくなった。由香里はまだ勤務中。今日は8時までだと連絡が入った。
『それにしても、奇妙な会社だよなあ。』
トンカツを咀嚼しながら考える。俺が就職したのはFO企画株式会社。ここ、ショッピングモール「FOUR」を運営している。…というのは表向きで、地下にある広いフロアを使って、何やら怪しげな研究をしている。行った事ないけど。大学卒業後、1年間フラフラしていた俺を見て、母親が伯父に泣きつき、経理部に就職させられた。怪しげな研究の事については、就職して1週間後の研修の中で俺だけ別室に呼ばれ、聞かされた。
『今日から、この建物以外に出ることを禁じる。伯父の乾さん、君の両親も納得済みだ。もちろん、誰かにこのことを話すこともダメだ。知っているのは、俺と、同じ経理部の生田、小野寺、あと地下にいる者だけだ。だから、この事を気軽に喋ることができない。』
杉崎課長に言われて、変に納得してしまった。情報漏洩を防ぐための拘束なんだ。アパートまで準備して…。俺はその中のある特殊な任務をこれから半年かけて遂行する事になるんだそうだ。
とにかく、来年の4月1日になるまでは、ここにいるしかない。病気になったらどうすんだ?まさか、病院まで入ってる訳じゃないだろうな?
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
幼馴染は僕を選ばない。
佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。
僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。
僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。
好きだった。
好きだった。
好きだった。
離れることで断ち切った縁。
気付いた時に断ち切られていた縁。
辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。
【完結】運命さんこんにちは、さようなら
ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。
とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。
==========
完結しました。ありがとうございました。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる