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未来も過去も
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小池さんが隣の部屋へ戻ると、コーヒーに口をつけていた巌城さんが話し出した。
「どうして、キリマンジャロなのか知ってる?」
「…いえ。」
洸一がここに来る?どんな顔でいたらいいの?動揺していた俺はあまり思考が働かなかった。…キリマンジャロ?そういえば、カフェで洸一と小池さんを見かけた時にもそんな会話が聞こえてきたっけ…。
「君と『ミノ・カフェ』で再会した時に、洸一が頼んでいたのがキリマンジャロだったんだ。」
「えっ!?」
訳わからん…。再会って…?
「小野寺君には再会じゃないな。『初めまして』だな。」
その後もカフェに通い詰めてはキリマンジャロを頼んでいたはずだ…アブナイ奴だよな、と巌城さんは笑いながら付け加えた。全然記憶にない。…あんなモッサリした髪型だったら、印象に残っただろうに…。
「ま、小野寺君に2度目の失恋をしてからは行かなくなったようだけど。」
「えっ!?失恋っ?」
何度目かの衝撃に態度を繕ってる暇もなく、大声で聞き返した。
「小野寺君、付き合ってた子がいただろう?」
美咲…?美咲のこと…?
「はぁ…。」
3ヶ月ほどで別れましたが…。そこまで言うつもりはなく、俺はコーヒーに口をつけた。うん、普通に美味しい。「ミノ・カフェ」の味だ。
「それからだな…。管理人に志願して『過去の部屋』へ引き籠もったのは…。流石に僕も心配したよ。誰とも関わろうとしなくなったし…。家にも帰って来なくなった。」
「でもね、」
巌城さんが顔を輝かせて体を乗り出してきた。
「小野寺君が熱を出した時、確信したんだ。ああ…コイツ、全然諦めてない、ってね。」
にっこり笑って告げる巌城さんになんて言ったらいいか分からなかった。顔が熱い。あの時、一緒のベッドで寝ていたところを見られている…。別にやましいコトをしていたわけじゃないけど…。でも今俺たちはそういう関係であって…。
「ははははっ!小野寺君、顔赤いよっ!」
頬に手をやり、顔をどうにかしようとしていたところで所長室のドアが開いた。
「おゃっ、しょうっ、…所長!!」
怒鳴り込むように入ってきたのは、洸一だった。『和尚』…。いつだか洸一が噛んでたわけが分かった。『親父、所長』だ…。
「洸、どうした?」
巌城さんがニヤニヤと悪戯そうな顔で洸一を見た。
「奏…何か言われた?」
洸一はソファの隣に腰を下ろすと、俺の肩に手を伸ばしてギュッと引き寄せた。洸一…お父さんの前だから……ヤメて…。
「何も言うはず無いだろう。楽しくお喋りしてただけだよ。」
巌城さんは耐えきれないようにクツクツ笑いながら告げた。
「何で奏がここに…?」
洸一が視線を鋭くして巌城さんを見た。
「どうして、キリマンジャロなのか知ってる?」
「…いえ。」
洸一がここに来る?どんな顔でいたらいいの?動揺していた俺はあまり思考が働かなかった。…キリマンジャロ?そういえば、カフェで洸一と小池さんを見かけた時にもそんな会話が聞こえてきたっけ…。
「君と『ミノ・カフェ』で再会した時に、洸一が頼んでいたのがキリマンジャロだったんだ。」
「えっ!?」
訳わからん…。再会って…?
「小野寺君には再会じゃないな。『初めまして』だな。」
その後もカフェに通い詰めてはキリマンジャロを頼んでいたはずだ…アブナイ奴だよな、と巌城さんは笑いながら付け加えた。全然記憶にない。…あんなモッサリした髪型だったら、印象に残っただろうに…。
「ま、小野寺君に2度目の失恋をしてからは行かなくなったようだけど。」
「えっ!?失恋っ?」
何度目かの衝撃に態度を繕ってる暇もなく、大声で聞き返した。
「小野寺君、付き合ってた子がいただろう?」
美咲…?美咲のこと…?
「はぁ…。」
3ヶ月ほどで別れましたが…。そこまで言うつもりはなく、俺はコーヒーに口をつけた。うん、普通に美味しい。「ミノ・カフェ」の味だ。
「それからだな…。管理人に志願して『過去の部屋』へ引き籠もったのは…。流石に僕も心配したよ。誰とも関わろうとしなくなったし…。家にも帰って来なくなった。」
「でもね、」
巌城さんが顔を輝かせて体を乗り出してきた。
「小野寺君が熱を出した時、確信したんだ。ああ…コイツ、全然諦めてない、ってね。」
にっこり笑って告げる巌城さんになんて言ったらいいか分からなかった。顔が熱い。あの時、一緒のベッドで寝ていたところを見られている…。別にやましいコトをしていたわけじゃないけど…。でも今俺たちはそういう関係であって…。
「ははははっ!小野寺君、顔赤いよっ!」
頬に手をやり、顔をどうにかしようとしていたところで所長室のドアが開いた。
「おゃっ、しょうっ、…所長!!」
怒鳴り込むように入ってきたのは、洸一だった。『和尚』…。いつだか洸一が噛んでたわけが分かった。『親父、所長』だ…。
「洸、どうした?」
巌城さんがニヤニヤと悪戯そうな顔で洸一を見た。
「奏…何か言われた?」
洸一はソファの隣に腰を下ろすと、俺の肩に手を伸ばしてギュッと引き寄せた。洸一…お父さんの前だから……ヤメて…。
「何も言うはず無いだろう。楽しくお喋りしてただけだよ。」
巌城さんは耐えきれないようにクツクツ笑いながら告げた。
「何で奏がここに…?」
洸一が視線を鋭くして巌城さんを見た。
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