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10年前
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2人で無言のまま、停留所までやって来た。バスが来るまで10分ある。周りには誰もいない。
「コウイチ、どうした?」
コウイチの顔を見上げながら、今日3度目の同じ質問をした。コウイチは、ふと顔を逸らした。
「…何でもない。」
『何でもなくないだろっ!何なんだよっ!はっきり言えっ!』
怒鳴ってやりたい気分だったがグッと我慢した。今ここで喧嘩を吹っかけてもしょうがない。明日、帰ってから…。それまでは我慢だ。
バスに乗りこみ後ろの座席に2つ並んで空いている席を見つけて座る。目的地のバス停に着き、バスを降りるまで俺も何も言わなかった。
バスを降りて歩き始めるとすぐに、後ろから声をかけられた。
「小野寺…さん?」
振り返ってみると、すぐ後ろにこう君が立っていた。
「こう君!」
「小野寺さんだっ!!待ってたっ!」
こう君は笑顔を見せると、ギュッと抱きしめて来た。スポーツウェアを着たこう君はとても背が高くなっていた。肩幅も…。コウイチよりは一回りほど小さいけれど、俺と同じサイズの服はもう着れないな。声も2年前と随分違って低くてお腹に響いた。
「どうして…」
小さく呟く声で目を上げる。そこには、愕然として立ちつくすコウイチがいた。こう君も俺を抱きしめたままコウイチを見た。
「小野寺さん、誰?」
「ああ…。仕事仲間だよ。同僚。今日はちょっと事情があって送ってもらった。なっ?こ…」
『コウイチ?』と問いかける言葉は、コウイチの「奏!」と強く放たれた言葉で遮られた。
「奏!…俺は帰る。もう…大丈夫だ。」
コウイチはそれだけ言うと、身を翻して歩き出した。アイツ…歩いて帰るのか?どんどん俺たちから離れていくコウイチから目を離せないでいると、耳元でこう君が言った。
「俺たちも行こうよ。」
「ひゃっ!」
くすぐったくて変な声が出た。こう君がクスクス笑ってようやく拘束を解いてくれた。
「くすぐったかった?」
いたずらが成功したような悪戯な笑みを浮かべるこう君に、ムッとしながら封筒を渡した。
「ほら、荷物持つ!行くぞっ!」
俺は先に立って歩き始めた。
こう君はすぐに追いつき、一緒に並んで歩き始めた。
「小野寺さんの同僚って人に、初めて会った。」
「ああ。そうだな。」
「いつも一緒だったの?」
こう君の口調は何気ない世間話をしているようだった。
「いや、以前帰り道でトラブルがあったんだ。それで…念のため。」
襲われたなんて事はこう君に言う必要はない。
「ふーん。……ピンクの御守りはあの人に?」
こう君が横目で俺を見ながら問いかけて来た。
「あ、ああ…。」
こう君に知られる事は、何となく恥ずかしさがある。別に好きな事を指摘された訳ではないのに。
「奏って…呼んでたね…」
こう君はそう呟くと、しばらく黙り込んだ。
「コウイチ、どうした?」
コウイチの顔を見上げながら、今日3度目の同じ質問をした。コウイチは、ふと顔を逸らした。
「…何でもない。」
『何でもなくないだろっ!何なんだよっ!はっきり言えっ!』
怒鳴ってやりたい気分だったがグッと我慢した。今ここで喧嘩を吹っかけてもしょうがない。明日、帰ってから…。それまでは我慢だ。
バスに乗りこみ後ろの座席に2つ並んで空いている席を見つけて座る。目的地のバス停に着き、バスを降りるまで俺も何も言わなかった。
バスを降りて歩き始めるとすぐに、後ろから声をかけられた。
「小野寺…さん?」
振り返ってみると、すぐ後ろにこう君が立っていた。
「こう君!」
「小野寺さんだっ!!待ってたっ!」
こう君は笑顔を見せると、ギュッと抱きしめて来た。スポーツウェアを着たこう君はとても背が高くなっていた。肩幅も…。コウイチよりは一回りほど小さいけれど、俺と同じサイズの服はもう着れないな。声も2年前と随分違って低くてお腹に響いた。
「どうして…」
小さく呟く声で目を上げる。そこには、愕然として立ちつくすコウイチがいた。こう君も俺を抱きしめたままコウイチを見た。
「小野寺さん、誰?」
「ああ…。仕事仲間だよ。同僚。今日はちょっと事情があって送ってもらった。なっ?こ…」
『コウイチ?』と問いかける言葉は、コウイチの「奏!」と強く放たれた言葉で遮られた。
「奏!…俺は帰る。もう…大丈夫だ。」
コウイチはそれだけ言うと、身を翻して歩き出した。アイツ…歩いて帰るのか?どんどん俺たちから離れていくコウイチから目を離せないでいると、耳元でこう君が言った。
「俺たちも行こうよ。」
「ひゃっ!」
くすぐったくて変な声が出た。こう君がクスクス笑ってようやく拘束を解いてくれた。
「くすぐったかった?」
いたずらが成功したような悪戯な笑みを浮かべるこう君に、ムッとしながら封筒を渡した。
「ほら、荷物持つ!行くぞっ!」
俺は先に立って歩き始めた。
こう君はすぐに追いつき、一緒に並んで歩き始めた。
「小野寺さんの同僚って人に、初めて会った。」
「ああ。そうだな。」
「いつも一緒だったの?」
こう君の口調は何気ない世間話をしているようだった。
「いや、以前帰り道でトラブルがあったんだ。それで…念のため。」
襲われたなんて事はこう君に言う必要はない。
「ふーん。……ピンクの御守りはあの人に?」
こう君が横目で俺を見ながら問いかけて来た。
「あ、ああ…。」
こう君に知られる事は、何となく恥ずかしさがある。別に好きな事を指摘された訳ではないのに。
「奏って…呼んでたね…」
こう君はそう呟くと、しばらく黙り込んだ。
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