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12年前
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俺は全然ダメだった。蕎麦が片側厚くなって均等に延びない。こう君が、俺の分まで直しながら延ばしてくれた。
「俺、中1から手伝ってるからね。」
こう君は得意そうだった。
お昼は打ちたてのお蕎麦をご馳走になった。舞茸や野菜の天ぷらまでついて、とても豪勢だ。
「美味しいっ!こんなに美味しいと思ったの初めて!」
しまった…。思わず仕事で来ていることを忘れて素を晒してしまった。みんな、声を上げて笑ってる。
「よかったわ。喜んでもらえて。」
おばあさんが笑顔でいった。恥ずかしい…。そんな俺をこう君がカメラに収めていた。蕎麦湯を加えてつけ汁まで飲み干し、大満足で昼食を終えた。
「小野寺さん、前回の後で何かありましたか?」
お昼の後におばあさんが入れてくれたお茶を飲みながら、巌城さんが聞いてきた。俺はどきっとしたが、笑顔を貼りつけてごまかした。
「いえ…特には…。何かありましたか?」
「いや、メガネと今回はスマートフォンを分解するので。…いつもと違うな…と。」
俺は、蕎麦打ちを始めてすぐに台所にやってきた巌城さんに、メガネとスマホを差し出していた。
「えっ!?いつも分解していたんですか?」
「あ、言っちゃ不味かったかなー。」
巌城さんはしまったという顔をして頭をポリポリ掻きながらも付け加えて言った。
「毎回。それが何の役に立つのか分からないんですが、分解して気がついた事をレポートに書いて提出してたんです。」
巌城さんがお茶を飲み干して続けた。
「今回はレポートは無しで構わないと…他にも何台か昔の型の携帯が入ってました。」
「はあ、そうですか。何でしょう?俺は配達員なので…」
最後の言葉は尻すぼみに小さくなっていた。全く。俺は嘘が下手だ。巌城さんがメガネを分解することで、未来で技術が少しだけ進歩する。けどそれを言う必要はない。
「ねぇ、小野寺さん今日も泊まって行くよね!?」
隣からこう君が口を挟んできた。
「ああ、泊まってもらうよ。今日もかなり時間がかかる。」
「やったっ!小野寺さん、初詣に行こうよ。」
隣で心配そうな顔で会話を聞いていたこう君が、笑顔になった。
「俺、中1から手伝ってるからね。」
こう君は得意そうだった。
お昼は打ちたてのお蕎麦をご馳走になった。舞茸や野菜の天ぷらまでついて、とても豪勢だ。
「美味しいっ!こんなに美味しいと思ったの初めて!」
しまった…。思わず仕事で来ていることを忘れて素を晒してしまった。みんな、声を上げて笑ってる。
「よかったわ。喜んでもらえて。」
おばあさんが笑顔でいった。恥ずかしい…。そんな俺をこう君がカメラに収めていた。蕎麦湯を加えてつけ汁まで飲み干し、大満足で昼食を終えた。
「小野寺さん、前回の後で何かありましたか?」
お昼の後におばあさんが入れてくれたお茶を飲みながら、巌城さんが聞いてきた。俺はどきっとしたが、笑顔を貼りつけてごまかした。
「いえ…特には…。何かありましたか?」
「いや、メガネと今回はスマートフォンを分解するので。…いつもと違うな…と。」
俺は、蕎麦打ちを始めてすぐに台所にやってきた巌城さんに、メガネとスマホを差し出していた。
「えっ!?いつも分解していたんですか?」
「あ、言っちゃ不味かったかなー。」
巌城さんはしまったという顔をして頭をポリポリ掻きながらも付け加えて言った。
「毎回。それが何の役に立つのか分からないんですが、分解して気がついた事をレポートに書いて提出してたんです。」
巌城さんがお茶を飲み干して続けた。
「今回はレポートは無しで構わないと…他にも何台か昔の型の携帯が入ってました。」
「はあ、そうですか。何でしょう?俺は配達員なので…」
最後の言葉は尻すぼみに小さくなっていた。全く。俺は嘘が下手だ。巌城さんがメガネを分解することで、未来で技術が少しだけ進歩する。けどそれを言う必要はない。
「ねぇ、小野寺さん今日も泊まって行くよね!?」
隣からこう君が口を挟んできた。
「ああ、泊まってもらうよ。今日もかなり時間がかかる。」
「やったっ!小野寺さん、初詣に行こうよ。」
隣で心配そうな顔で会話を聞いていたこう君が、笑顔になった。
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