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巌城という男

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ぐっすりと眠れた。…夢も見なかった…。

ベッドわきの窓を覆うクリーム色のブラインドが明るく輝き、朝がきたことを告げていた。ふと気がつくと俺はコウイチに腕枕され、ついでにガッチリ抱え込まれていた。左半分がコウイチで覆われている…。

『そりゃ一緒に寝ようと言ったのは俺だけど…。』
あの後、OSを飲み干した俺を見て安心したコウイチが、「過去の部屋」のソファで寝ると言い出した。

「こ、こっ、ここで一緒に寝よ?ほら、このベッド広いし…。俺ばっかり申し訳ないし…。」
本音をいうと、近くにコウイチがいると安心するからだった。まだまだ体の調子が戻ってなかった俺は、初めての部屋で1人になることが心細かった。

「じゃあ、俺が窓際で。」
コウイチは了承し、俺を跨いで壁側の広いスペースに横たわった。
その後は「お休み。」と挨拶しただけ。何も喋らず眠ったのだが…。

『どうして腕枕?』
ちょっとだけ解いてみようと身動きするが、コウイチの腕はびくともしなかった。何だかドキドキしてきた。これって…まるで…。
「!」
その時、太腿の所に硬いモノが当たっている事に気づいた。

『ヤバイ、ヤバイぞ…。』
そりゃ、俺だって男だから朝ダチぐらいする。多分今もしている(ハズ)。確かめようがないが…。でもこの感触…デカ過ぎないか?
何だか変な気分だ。身体中の血液がどんどん一か所に集まってくる。

『あれ?立ってなかった?…俺、今コウイチに反応してるっ!?』
その時、耳元で「ううっ…」っと低音ボイスが響いたかと思うと、コウイチが目を開けた。
「おはよう。」
一瞬にっこり笑ったが、ハッとした表情になると身体の縛を解いた。

「ご、ごめん。」
「い、いや…。大丈夫…。」
布団の中で手を移動させ、そっと確認する。…反応してた。なんてこった…。俺はじわじわと顔が赤くなるのを止められなかった。

「顔が赤いな。まだ熱があるか?」
コウイチが顔を覗き込み、額に手を当ててきた。
「だっ、だ、大丈夫!」
それよりも腕枕解いてほしいんですけどっ!…心の声は届くはずもなく、額と首筋に手を当てて体温を確認したコウイチが、そっと呟いた。

「良かった。夕べはどうしようかと思った…。」
「…ありがとう。」
誰が見ても献身的に看病してくれたと思う。俺は感謝の気持ちしかなかった。
「喉は渇いてないか?」
コウイチが俺の顔を覗き込む。その切れ長の目を見ながら、
「OS、ま…」
まだある?と聞こうとした俺の言葉は…突如降ってきた声に遮られた。

「おはよう。熱はどうだ?………失礼!」
巌城さんが現れて、一瞬で消えていった壁を見つめ、顔がまた赤くなっていくのを感じていた。







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