未来も過去も

もこ

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14年前

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巌城さんはまだポテトをたくさん残していたが、俺たちは切り上げることにした。巌城さんは店員から貰ってきた紙袋にポテトを大事そうにしまった。
「へへ。年甲斐もなく好きでして。」
紙袋を抱えた巌城さんは幸せそうだ。

空いた飲み物のコップの氷を片付けていると、こう君が脇から手を出した。
「ね、ストローちょうだい。」
ストロー?
「ストロー?何するの?」

「んー、工作に使いたい。この茶色のストローは貴重なんだ。」
俺と自分のストローを紙ナプキンに手早く包んでスポーツバッグにしまいながらこう君が言った。
「ほら、父さんのもやるよ。」
後からきた巌城さんが、ポテトの入った袋を落とさないようにバランスをとりながら、ストローを引き抜いて差し出した。

「お父さんのはいいや。2本で充分。とりあえず。」

その後、ドライブしたいというこう君の希望で、車で2時間ほどの海へ出かけた。
「ああ、泳ぎたいなあ。」
打ち寄せる波を見ながら、こう君が呟いた。12月の風は刺すように冷たかったが、太陽の光が俺たちを包み、寒さを和らげていた。

「こう君泳げるの?」
俺はダメだ。スイミングスクールに通った事もないし、小学校で25メートルようやく泳げるようになった程度。高校では泳いでるのか溺れてるのかわからないって言われたっけ。波が打ち寄せる海でなんか泳げる気がしない。
「もちろん!」
こう君は自信満々に言ってきた。
「小学生の時に夏休み短期集中コースで4年間習ったし、クロールや平泳ぎは得意だよ。」

「へぇ、頑張るね。柔道もやってたし。」
こう君はいわゆるスポーツ万能というやつだ。それにこの爽やかさなら、モテるのも納得。
「柔道は中学に入ってから辞めたんだ。部活で忙しいし。」
ちょっと声に翳りが出たのが気になった。
「そっか。やりたかった?」

「うん。もっともっと強くなりたかった。」
ちょっと視線を下げながら呟くこう君の姿が気になった。小学2年生の時に女の子を守ってあげたかったのと同じように、誰か守りたい子でもいるのだろうか?
「そう。」

『いるわけないし!もう、止めてよ。つまんないよ、その話題。』

さっきの店での会話を思い出し、それ以上は言うのをやめようと思った。
砂浜に腰掛け、黙って打ち寄せる波を見つめる。まだ3時にもなっていなかったが、冬の空はだんだんと白くなり、太陽が雲に隠れて行った。

「おーい、もうそろそろ帰るぞー!」
車で書類を確認すると言って降りなかった巌城さんが、いつのまにか防波堤に立ち、大声で俺たちを呼んだ。
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