未来も過去も

もこ

文字の大きさ
上 下
19 / 110
19年前

6

しおりを挟む
「お兄ちゃん。お兄ちゃん!起きて!」 

いきなり目が覚めた。目の前に泥だらけのこう君の顔があった。
「おわっ。ご、ごめん。寝てた?俺?っつうか今何時?」

慌てて起き上がると掛けてあった毛布が落ちた。巌城さんが掛けてくれたのだろうか?めちゃくちゃ恥ずかしい。たしか、本を読んでいたはず。魔法学校が舞台の有名な児童書。小さい頃に3巻までは読んだ本。たしか映画にもなってた。懐かしくなって、手に取ったのに。

本は枕元にきちんと置いてあった。気を取り直してこう君を見ると、酷い汚れようだ。雨が降ってきたらしい。窓の外を見ると薄暗く、雨が音を立てて降っているのが見えた。

「お兄ちゃん、なかなか起きないんだもん。」
隣で泥だらけのこう君が、ぷくっと頬を膨らます。
「ごめんな。」
頭に手を乗せて謝ると、結構濡れている。よく見ると、畳のあちこちにも濡れた跡があった。

「ほら、洸、風呂に入ってきなさい。洗ってきたから。」
雑巾を片手に巌城さんが入ってきた。
「ね、お兄ちゃん、一緒に入ろうよ。」

…?なに?

「一緒に?それは…」
他人の家でぐっすり寝てしまったことでいたたまれない気持ちなのに、その上に風呂?
「いいね。今日は泊まっていってください。あちらはもう少しかかりそうですし…」
「いや、時間は問題ありませんが、これ以上ご迷惑をかけるわけには…。どこか近くにホテルを探して、明日出直します。」
巌城さんの好意を全力で退けようと声に力を込めた。

「いや、リスクを考えるとあまり出歩かない方が良いのでは?」
正論に言葉が詰まる。この時代の人たちと関わり合わないのが1番いいのだ。けれども…。巌城さんの家とこれ以上濃厚に関わるのが良いことか判断できなかった。

「はあ…。」
何とも間抜けな返答に巌城さんが笑顔で言った。
「ぜひ泊まってください。洸も喜びますし、私も大歓迎ですよ。」

結局、巌城さんの好意を断りきれなかった俺は、こう君と一緒にお風呂に入り、夕飯を食べてお泊まりする事になった。寝巻き用のスエットは全て巌城さんのものを借り、新しい下着までもらってしまった。青と白、そして黒の縞模様のトランクス!

懐かしい。親父がこんなの穿いてたっけ。巌城さんとはさほど身長は変わらないつもりだったが、全ての服が若干大きくて少しへこんだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

必然ラヴァーズ

須藤慎弥
BL
ダンスアイドルグループ「CROWN」のリーダー・セナから熱烈求愛され、付き合う事になった卑屈ネガティブ男子高校生・葉璃(ハル)。 トップアイドルと新人アイドルの恋は前途多難…!? ※♡=葉璃目線 ❥=聖南目線 ★=恭也目線 ※いやんなシーンにはタイトルに「※」 ※表紙について。前半は町田様より頂きましたファンアート、後半より眠様(@nemu_chan1110)作のものに変更予定です♡ありがとうございます!

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

運命の番が解体業者のおっさんだった僕の話

いんげん
BL
僕の運命の番は一見もっさりしたガテンのおっさんだった。嘘でしょ!?……でも好きになっちゃったから仕方ない。僕がおっさんを幸せにする! 実はスパダリだったけど…。 おっさんα✕お馬鹿主人公Ω おふざけラブコメBL小説です。 話が進むほどふざけてます。 ゆりりこ様の番外編漫画が公開されていますので、ぜひご覧ください♡ ムーンライトノベルさんでも公開してます。

処理中です...