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19年前
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「お父さん!今行く!」
こう君が駆け出し、俺も後を追った。携帯で時間を確認すると12時30分。あっという間にお昼だ。一緒にお昼をご馳走になる訳にはいかない。
「あ、それじゃ、どこかで昼食をとってきます。」
俺が言った言葉に親子揃ってポカンと口が開いた。同じ顔で固まってる。
「いやいやいや、小野寺さんも一緒にどうぞ!」
「お兄ちゃんも一緒だよ!ねえ、お父さんそうでしょ?」
ふたりいっぺんに口を開き、何を言ってるのか聞き取れなかった。
「小野寺さんの分も準備したので一緒にどうぞ。」
再び口を開いた巌城さんの言葉に、否とは言えなかった。
3人で家に向かいながら、こう君はサッカーで遊んだことを報告していた。それを聞いている巌城さんも嬉しそうだった。
巌城さんの家へ戻ると、リビングに出前でとったと思われるカツ丼が3つと、自家製だと思われる漬物の皿が並んでいた。巌城さんが作ったというあさりの味噌汁をよそって食べ始めた。始めに漬物を味わう。きゅうりとキャベツの浅漬け。優しい味がした。
「美味しいですね!漬物は巌城さんが?」
「いやいや、母です。昨日から父と一緒に、県外に住む姉のところへ泊まりに行ってるんですが、作っていったんです。」
「おばあちゃんの漬物好き!」
「うん、美味しいね。」
こう君がパリパリ漬物を食べているのを見ると、より一層美味しく感じられた。
巌城さんの話では、こう君の祖父母と4人で暮らしているらしい。おじいさんは、会社を定年退職してしばらく経ち、今は家庭農園にいそしんでいるのだとか。おばあさんはもともと専業主婦らしい。今はおじいさんの畑の手伝いを仲良くやっているらしい。
『良かったなあ。』
3年前とは違って、こう君の周りが賑やかになって良かった。心からそう思った。
昼食を終えて、スポ少へ行く準備を始めたこう君を見ながら、巌城さんが入れてくれたコーヒーを飲んだ。
「お兄ちゃん、僕が帰ってくるまでいるよね?」
「もちろん。お父さんの仕事が終わるまでは帰らないことになっているから。まだまだ終わりそうにない。」
元気に、行ってきますとあいさつしたこう君を2人で見送った。
「あいつ、本当に嬉しそうだ。すみません、相手していただいて。うるさかったでしょう?」
「いいえ。楽しかったです。本当に。」
年の離れた弟がいれば、あんな感じだろう。妹しかいない俺は懐かれていることが本当に嬉しかった。
巌城さんが仕事場へ籠る前にリビングにある本棚を漁っても良いと許可を貰った。本棚を見ると、ほとんどがこう君の本で埋め尽くされている。おじいさんやおばあさんのものだろうか。家庭菜園百科やきゅうりやナスの育て方なんてものもある。
俺はその中でも幅をきかせている懐かしい物語の本を手に取って読み始めた。
こう君が駆け出し、俺も後を追った。携帯で時間を確認すると12時30分。あっという間にお昼だ。一緒にお昼をご馳走になる訳にはいかない。
「あ、それじゃ、どこかで昼食をとってきます。」
俺が言った言葉に親子揃ってポカンと口が開いた。同じ顔で固まってる。
「いやいやいや、小野寺さんも一緒にどうぞ!」
「お兄ちゃんも一緒だよ!ねえ、お父さんそうでしょ?」
ふたりいっぺんに口を開き、何を言ってるのか聞き取れなかった。
「小野寺さんの分も準備したので一緒にどうぞ。」
再び口を開いた巌城さんの言葉に、否とは言えなかった。
3人で家に向かいながら、こう君はサッカーで遊んだことを報告していた。それを聞いている巌城さんも嬉しそうだった。
巌城さんの家へ戻ると、リビングに出前でとったと思われるカツ丼が3つと、自家製だと思われる漬物の皿が並んでいた。巌城さんが作ったというあさりの味噌汁をよそって食べ始めた。始めに漬物を味わう。きゅうりとキャベツの浅漬け。優しい味がした。
「美味しいですね!漬物は巌城さんが?」
「いやいや、母です。昨日から父と一緒に、県外に住む姉のところへ泊まりに行ってるんですが、作っていったんです。」
「おばあちゃんの漬物好き!」
「うん、美味しいね。」
こう君がパリパリ漬物を食べているのを見ると、より一層美味しく感じられた。
巌城さんの話では、こう君の祖父母と4人で暮らしているらしい。おじいさんは、会社を定年退職してしばらく経ち、今は家庭農園にいそしんでいるのだとか。おばあさんはもともと専業主婦らしい。今はおじいさんの畑の手伝いを仲良くやっているらしい。
『良かったなあ。』
3年前とは違って、こう君の周りが賑やかになって良かった。心からそう思った。
昼食を終えて、スポ少へ行く準備を始めたこう君を見ながら、巌城さんが入れてくれたコーヒーを飲んだ。
「お兄ちゃん、僕が帰ってくるまでいるよね?」
「もちろん。お父さんの仕事が終わるまでは帰らないことになっているから。まだまだ終わりそうにない。」
元気に、行ってきますとあいさつしたこう君を2人で見送った。
「あいつ、本当に嬉しそうだ。すみません、相手していただいて。うるさかったでしょう?」
「いいえ。楽しかったです。本当に。」
年の離れた弟がいれば、あんな感じだろう。妹しかいない俺は懐かれていることが本当に嬉しかった。
巌城さんが仕事場へ籠る前にリビングにある本棚を漁っても良いと許可を貰った。本棚を見ると、ほとんどがこう君の本で埋め尽くされている。おじいさんやおばあさんのものだろうか。家庭菜園百科やきゅうりやナスの育て方なんてものもある。
俺はその中でも幅をきかせている懐かしい物語の本を手に取って読み始めた。
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