8 / 110
生田という男
2
しおりを挟む
「で、どうだった?」
ショッピングモールの1階にあるレストラン街の一角、ラーメン屋で待ち合わせた俺たちは、味噌ラーメンを頼むと、出された水に口をつけながら話し始めた。生田は仕事中の昼休憩。スーツを着込んだ姿がジーンズにパーカーのオレと対照的だ。
「前回と同じ。ただ、除染はされなかった。」
買い物客の昼飯より若干早いせいか店の中はさほど混んでない。しかし、そこは慎重に周りを見渡しながら、聞かれてないことを確認して小声で話す。
生田は俺と同い年。俺と同じようにここでスカウトされた。同じ研修を受けて、同じ配達業務。仲良くならない方がおかしい。生田は2週間前に2回目の配達を終えていた。
「俺もセーフだったなあ。つか、除染って大変なんだろ?」
「いや、ただ寝てるだけ。後は勝手にやってくれる。」
ちょうど届いたラーメンを受け取りながら答えた。生田も同じように受け取りながら愚痴った。
「あと約1年はここでの生活かぁ。分かっているけど辛いな。」
「何?別に快適じゃん。何でも揃ってるし、美容室も目医者もあるんだぜ?」
箸を手渡しながら聞きいてみた。正直言って、分からん。電話もできるし、店の中の誰とでも仲良くなってオーケー。ただ、仕事のことを話すのに制限があるだけ。あ、あとこのモールの中から出れないだけ。
「エッチできないじゃん。」
「はああ?」
思わず大きな声が出た。自分の声に驚き、恥ずかしくなる。分かってる。俺、顔真っ赤。
「お前、ウブだなぁ。童貞?」
ラーメンを啜りながら呟いた生田の頭におしぼりを投げつけた。顔だとラーメンに落ちるからな。優しいな、俺。
「な訳ないだろ。いろいろと経験済みだ。」
童貞ではない。けどちょっぴり話を盛った。そんなにいろいろ経験あるわけではない。大学時代に2回ほど付き合った事があるだけ。どちらとも長く続かなかったけど。最近の彼女とは、この仕事を受けて一年間拘束されることを告げた途端に、振られた。アイツから告白されて付き合い始めて3か月だった。待っててって言いたかったのに。残念。…美咲、元気にしてるかな。
「今フリー?それとも彼女、小野寺のこと待ってんの?あれ?店では会えるけど、部屋までは連れてけないよね?どうやってエッチしてるの?」
危うく吸った麺を吐き出しそうになった。
「お、お、おまえ…!デリカシー!」
ゴホゴホと咳き込む俺に、生田がお手拭きを投げてよこした。
「そこまで恥ずかしがる?男どうしじゃん。」
「お前はどうしてんだよ。」
息を整えながら、逆に聞いてみた。
「俺?まぁ、いろいろと。でも出会いがなぁ。やっぱり拘束されるのはキツいわ。噂になるの怖くて中々手が出せない。守備範囲2倍でチャンスも2倍のはずなのに。」
「2倍?」
分からない言葉に首を傾げると、生田はニンマリ笑って俺を見た。
「そ。俺男も女も守備範囲。だから2倍。」
ショッピングモールの1階にあるレストラン街の一角、ラーメン屋で待ち合わせた俺たちは、味噌ラーメンを頼むと、出された水に口をつけながら話し始めた。生田は仕事中の昼休憩。スーツを着込んだ姿がジーンズにパーカーのオレと対照的だ。
「前回と同じ。ただ、除染はされなかった。」
買い物客の昼飯より若干早いせいか店の中はさほど混んでない。しかし、そこは慎重に周りを見渡しながら、聞かれてないことを確認して小声で話す。
生田は俺と同い年。俺と同じようにここでスカウトされた。同じ研修を受けて、同じ配達業務。仲良くならない方がおかしい。生田は2週間前に2回目の配達を終えていた。
「俺もセーフだったなあ。つか、除染って大変なんだろ?」
「いや、ただ寝てるだけ。後は勝手にやってくれる。」
ちょうど届いたラーメンを受け取りながら答えた。生田も同じように受け取りながら愚痴った。
「あと約1年はここでの生活かぁ。分かっているけど辛いな。」
「何?別に快適じゃん。何でも揃ってるし、美容室も目医者もあるんだぜ?」
箸を手渡しながら聞きいてみた。正直言って、分からん。電話もできるし、店の中の誰とでも仲良くなってオーケー。ただ、仕事のことを話すのに制限があるだけ。あ、あとこのモールの中から出れないだけ。
「エッチできないじゃん。」
「はああ?」
思わず大きな声が出た。自分の声に驚き、恥ずかしくなる。分かってる。俺、顔真っ赤。
「お前、ウブだなぁ。童貞?」
ラーメンを啜りながら呟いた生田の頭におしぼりを投げつけた。顔だとラーメンに落ちるからな。優しいな、俺。
「な訳ないだろ。いろいろと経験済みだ。」
童貞ではない。けどちょっぴり話を盛った。そんなにいろいろ経験あるわけではない。大学時代に2回ほど付き合った事があるだけ。どちらとも長く続かなかったけど。最近の彼女とは、この仕事を受けて一年間拘束されることを告げた途端に、振られた。アイツから告白されて付き合い始めて3か月だった。待っててって言いたかったのに。残念。…美咲、元気にしてるかな。
「今フリー?それとも彼女、小野寺のこと待ってんの?あれ?店では会えるけど、部屋までは連れてけないよね?どうやってエッチしてるの?」
危うく吸った麺を吐き出しそうになった。
「お、お、おまえ…!デリカシー!」
ゴホゴホと咳き込む俺に、生田がお手拭きを投げてよこした。
「そこまで恥ずかしがる?男どうしじゃん。」
「お前はどうしてんだよ。」
息を整えながら、逆に聞いてみた。
「俺?まぁ、いろいろと。でも出会いがなぁ。やっぱり拘束されるのはキツいわ。噂になるの怖くて中々手が出せない。守備範囲2倍でチャンスも2倍のはずなのに。」
「2倍?」
分からない言葉に首を傾げると、生田はニンマリ笑って俺を見た。
「そ。俺男も女も守備範囲。だから2倍。」
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
淫愛家族
箕田 悠
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
からっぽを満たせ
ゆきうさぎ
BL
両親を失ってから、叔父に引き取られていた柳要は、邪魔者として虐げられていた。
そんな要は大学に入るタイミングを機に叔父の家から出て一人暮らしを始めることで虐げられる日々から逃れることに成功する。
しかし、長く叔父一族から非人間的扱いを受けていたことで感情や感覚が鈍り、ただただ、生きるだけの日々を送る要……。
そんな時、バイト先のオーナーの友人、風間幸久に出会いーー
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる