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本編
24話*
しおりを挟む俺は今、リアムと向き合いながら立っている。
今から俺の首についている金属の輪っかを外す実験を行うのだが、首輪の解除が出来るかどうかは全てリアムの腕に掛かっていると言っても過言ではない。故に彼の表情は真剣そのものだ。
俺の首にそっと触れるリアムの指先は酷く冷たく、そして震えていた。大丈夫だよ、信じているからと伝えるように表情を緩めると、リアムは僅かにこくりと頷いて目を閉じた。
首元から淡い光が湧き上がり、温かな魔力に包まれていく。温かくて優しくて、包み込むような魔力の波に俺はそっと目を閉じた。
名前を呼ばれ、次に目を開けた時には何故かリアムの腕の中だった。どうやら俺は倒れてしまったようで、心配そうなリアムの顔が視界いっぱいに広がっていて思わず笑ってしまう。彼は目を覚ましたことにほっとしたのか、俺をぎゅっと抱きしめたり
「……首輪は?」
「ああ、取れたよ。……よかった、突然倒れるから本当に驚いた……」
正直倒れた感覚も何もなかったので、俺はその言葉に曖昧に笑うしかない。しかし何はともあれ外せたのなら良かった。想像していたような痛みも苦しみもなかったので、俺は静かに安堵の吐息を漏らす。
俺の様子を間近で見ていたアルマン殿下は心配になったのか、不安そうな表情でカミーユさんの方をちらちらと見ている。対してカミーユさんはそんなアルマン殿下を見ながら困ったように笑っていた。
リアムはソフィア皇女殿下から手渡された魔力回復用のポーションを喉を鳴らしながら飲んでいく。たった一回でも相当量の魔力を消費したようで、少しだけリアムの顔色が悪い。
「リアム、大丈夫?」
「ん?……ああ、俺の魔力のほとんどを注ぎ込まないといけなくてな……少し疲れただけだ」
魔力回復用ポーションを飲んだからと言ってすぐに魔力が回復するわけではない。今飲んだ上級ポーションは市井で売られているポーションよりも回復量も多く、回復する速度も速いが、それでもリアムのようにかなり多い魔力を全て回復しようとすると二時間は掛かる。
ソフィア皇女殿下が心配そうにリアムを見つめた後、アルマン殿下とカミーユさんに向かって「次の解除は二時間後に」と言っているのが聞こえた。
二時間後までは自由にしてもいいとのことだったので、既に解除済みの俺は一度部屋に戻ることにした。カミーユさん達はどうするのだろうかと思いながら聞いてみると、どうやらカミーユさん達はこの部屋で現在の大聖堂内の様子や捕縛状況等の話をするようだ。まあこの部屋は礼拝室に近いとは言え、騎士団の方達も出入りが出来るので好都合なのかもしれない。
リアムはどうするのだろうと思い振り返ろうとすると、不意に背後から腕が伸びてきてぎゅっと抱きしめられる。まさかこうして抱きしめられると思っていなかったので少し驚いたが、肩口に顔を埋めたまま何も発さず、ぴくりとも動かないリアムが少し心配になり、名前を呼んだ。
「……リアム?」
「……俺も、ラウルと一緒にいたい」
肩口に顔を埋めながら頭をぐりぐりと動かしたリアムは、そうぽつりと溢した。柔らかな髪の毛が顔や首筋に当たって少し擽ったい。思わずリアムの腕の中で身を捩ると、俺を抱く彼の腕に力が籠った。
「……やっと一緒にいられるようになったのだから、離れたくない」
離したくない、と言われて思わず笑みが溢れた。
俺だってやっと制限なく会えるようになったのだから一緒にいたいと思うし、離れたくないとも思っている。俺の一方的な気持ちではなくてリアムも同じだったのだと知れたことが嬉しかった。
「……うん。俺も、一緒にいたい」
俺がそう言うと、リアムは俺から離れてカミーユさん達に俺と一緒にいることを早速伝えに行った。何やらソフィア皇女殿下とリアムが仲が良さそうにやりとりしていて、少しだけ胸がもやっとする。
……ん?もや?
僅かに違和感を感じた胸に手を当てるが、いつも通り鼓動を刻むだけで何もおかしなところはなさそうだ。今のはなんだったのだろうと首を傾げていると、少し拗ねた様子のリアムが戻ってきた。
「ラウル、行こうか」
「あ、うん」
何かあったのかと聞きたかったが、俺が口を開く前にリアムの手が俺の腕を掴んで、その場から逃げるように俺を引っ張って早足に部屋を出ていく。俺はと言えば引っ張られているせいで足が縺れそうになるのを必死に耐えながら、後ろを振り向いてぺこっと軽く頭を下げるしか出来なかった。
何度もちょっと待ってと言ったのだがリアムの耳にはまるで入らなかったようで、俺の部屋まで一切足が止まることはなかった。
俺の部屋の前に着くと、リアムはガチャガチャと音を立てながら鍵を開けて扉を開き、俺の腕を掴んだまま中に入っていく。そしてリアムが後ろ手に内鍵を掛けたようでカチャンと音が鳴った。
ずんずんとベッドの横まで歩いていくと、ここに来るまで何も発しなかったリアムが不意に俺の方を向き、真正面から掻き抱くように腕の中に閉じ込めらる。何かを耐えるようにぎゅうっと力が込められ、その強さに思わず顔が歪んだ。
「ちょ、リアム……痛い」
「……ラウル」
「……っ」
耳のすぐ側から聞こえたリアムの低い声。首にあった金属の輪っかがなくなったことを確認しているのか、首筋に顔を近づけるリアム。鼻や唇、そして吐息が当たって擽ったい。
「ラウル……ラウル、好きだ」
甘えるようにぎゅうぎゅうと抱きつき、リアムは俺をベッドに押し倒した。俺もだと返すように首筋を確かめているリアムの頭を優しく撫でると、首筋にちくりとした痛みが走った。
「……ん、っ」
「ねえラウル、してもいい?」
「んっ……」
首筋から離れた唇が、耳元に触れる。吐息が耳に掛かり、俺の口からは上擦った声が漏れた。
してもいいかというのは、恐らくそういうことだろう。リアムは俺が嫌なことはしたくないから、と毎回聞いてくれるのだが、俺だってリアムとこうして触れ合いたいと思っているのだから聞かなくてもいいのにと思ってしまう。
無理矢理知らない人達に身体を弄られるのは恐怖や嫌悪以外の何物でもなかったが、大好きなリアムとする行為はとても幸せなことだ。
それに今のリアムには魔力が多く必要なのだから俺に出来ることがあれば協力したいというもの。
俺がそう心の中で思いながらこくりと小さく頷くと、リアムは耳元で「ありがとう」と言った。
「や、んん……っ」
「ラウルは耳が弱いね」
ぴちゃぴちゃと耳に響く水音。ねっとりとした熱い舌にべろりと耳全体を舐められながら、たまに耳朶や耳殻を甘噛みされる。熱い吐息が耳の中を擽り、耐えるように目をギュッと閉じると瞼にキスをされた。
「ふふっ……物欲しそうな顔してる」
「や……」
「嫌?」
「……いやじゃ、ない」
顔が熱い。ふるふると頭を振ると、俺を見下ろすリアムの目がすっと細められた。
顔が近付いてくるのがわかり、俺は瞼を下ろした。そうして唇に当たる柔らかな感触。唇をぺろりと舐めた後、深く唇が重なった。薄く開いた隙間から口内に侵入したリアムの熱い舌が、口の中を満遍なく蹂躙していく。
上顎や頬の裏、そして歯列を優しく撫でていくざらりとした舌。口端からは溢れ出した唾液が溢れ、顎を伝って服を濡らしていく。
「んむ……ふ、ぁ……」
角度を変えながら、深く口付けをする。うまく呼吸が出来なくて酸欠になりそうになった時、漸く唇が糸を引きながら離れていった。
はあはあ、と荒い呼吸を繰り返す俺の頬をするりと撫で、再び唇が重なる。今度は唇を啄むような軽いものだ。何度も何度も、角度や深さを変えながら合わさっていく。再び口内に入ってきた舌は、今度は俺の舌を絡めとるとじゅるじゅると音を立てながら吸い上げた。舌の根本から先端にかけて甘く痺れるような快感に、全身がふるりと震える。
「蕩けた顔もかわいいよ。……ほら、ここもこんなに勃ってる」
「ひんっ……!」
「後でまた着ないといけないから、服を全部脱いでしまおうか。どうする?自分で脱ぐかい?それとも俺が脱がそうか?」
「じ、自分で脱ぐから!」
服越しに勃っていた胸の頂を指で弾かれ、腰が跳ねる。リアムはにこにことしながら俺の上衣を胸まで捲り上げながら、そう聞いてきた。俺は慌てて上半身を起き上がらせて服を全部脱ぐと、リアムが耳元に顔を寄せて「残念」とくすくす笑う。
リアムはベッドから降りて全ての服を脱ぎ、床に脱ぎ捨てた俺の服と共にベッド脇の椅子の上に無造作に置いた。次に着るときに皺になっていなかったら良いなと思いながら、俺の上に跨ったリアムの腕に優しく閉じ込められる。
素肌同士が触れ合う感触は、とても気持ちが良い。頬を両手で挟まれ、唇が重なる。深く深く、お互いを貪るような口付け。薄く目を開くと、視界いっぱいに広がるリアムの端正な顔立ちに胸が高鳴った。
名残惜しそうな糸を残して唇は離れ、俺とリアムは手を重ねた。指と指を絡めるように繋ぎ、そして再び重ねるだけの口付けをしながらゆっくりと俺の身体はベッドへと押し倒された。
「ラウルのここは綺麗なピンク色だな。ぴんと勃って……そんなにキスが気持ちよかったかい?」
「んっ……ひゃ、あんっ」
ざらりとした感触が胸を這う。乳輪を舌先でなぞり、そしてピンと立っている先端を甘噛みされた。突然の強い刺激に腰がびくんと跳ねる。快感が全て下半身に移動していくような感覚に、無意識に腰が揺れた。
「ふふ、もしかしてもう我慢できない?」
「ち、ちが……んあぁっ」
「ここもすっかり元気だね」
揺れる腰をするりと撫でられ、声が上擦る。ここ、と言われて熱が集まっている陰茎を膝で軽く押されて声が出た。
リアムは嬉しそうに微笑みながら、俺をうつ伏せに転がしてお腹に腕を回した。腕に力が入れられ、ぐいっとお腹を持ち上げられる。臀部や陰茎など、恥ずかしい部分がリアムの眼前に曝け出されて、羞恥心で顔が熱くなった。
臀部にリアムの手が置かれ、左右に割り開かれる。後孔が丸出しとなり、恥ずかしくなった俺は手で後孔を隠そうと舌がそれよりも早く熱くざらりとしたものが穴に触れた。
「ひぁんっ……!や、え、なに……んんっ!」
収縮している穴の周りを解すように丁寧にそれは這っていく。穴を掠める度にぴくぴくと身体が小さく震え、高く上擦った声が喉から出る。
ねっとりとしたそれは穴を押し広げるようにして入っていく。それがリアムの舌だと気が付いたのは、リアムが笑う度に吐息が後孔に掛かったからだった。
リアムは一度俺の臀部から顔を離して、近くにあった細い瓶を手に持ち、中の液体を少量口に含んだ。そして再び尻たぶを手で割り開き、顕になった後孔に唇を寄せて舌を捻じ込み、口の中の液体を少しずつ流し込んでいく。リアムの口の中にあったからか、それは温かくてとろりとしていた。
「ふ、う……んっ、ん……」
舌が、奥へ奥へと入っていく。そんな汚いところを舐めないで欲しいと言いたいのに、口から漏れるのは喘ぎだけ。それを知ってか知らずか、リアムの舌は俺の中を弄るように抽挿を始めた。
ざらりとした感触が胎内を擦る感覚が気持ちいい。羞恥心と快感で目尻には涙が浮かぶ。陰茎は腹部に張り付くくらいに反り勃ち、先端からは透明な液体が垂れていた。
「ラウルは本当に可愛いよ。……でもその表情を俺以外の誰かが見たのは気に入らないな」
「ふぁ……?リアム、どうし……んあ……っ!」
ぼそぼそとリアムが何かを言ったような気がしたのだが、それを問おうとしたところ、後孔につぷりと差し込まれた指に言葉は嬌声に飲み込まれた。
つぷつぷとリアムの細くて長い骨張った指が奥へと突き進んでいく。くるくると円を描くように縁を押し広げながら動く指。俺の後孔からは腸液と先ほどの液体、そしてリアムの唾液がぬちょぬちょと音を立てながら混ざり合っていく。
一本の指が引き抜かれ、次は二本、三本と増えていく。三本の指が胎内でばらばらに動き、そのうちの一本が前立腺を掠ったようで全身が雷にでも打たれ方のようにビクビクビクッと痙攣した。達しはしなかったが、先端からは絶えず透明な先走りが溢れ、ベッドを汚していく。
「や、あぁっ……そこばっか、あ、んんっ!」
「でもここが気持ちがいいんだもんね?」
「はっ、ん……きもちい……んやっ……あ、だめ、イっちゃ……あぁんっ!」
ぱたぱたと俺の先端からは少量の白濁液がベッドへと放たれ、俺は荒い息を繰り返す。後孔からはリアムの指が引き抜かれ、代わりにリアムの陰茎が押し付けられた。穴は早くリアムが欲しいとでも言うようにリアムの先端に吸い付き、中へと誘うようにパクパクと開閉している。
ぐっ、と軽く押し込まれ、息が詰まる。指なんか比べ物にならないくらいに大きくて硬くそして熱を持った塊が、俺の中を突き進むようにして押し込まれていく。亀頭が全て入ったところで突然動きを止めたリアム。どうかしたのかと背後のリアムを見ようとした時、ズンッと一気に奥に押し込まれて声にならない悲鳴が口から漏れた。
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