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3.ロブロイを貴方に※【全1話】

1話※

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 僕にはセックスをするだけの友人がいる。所謂セックスフレンド――通称セフレという奴だ。

 昔は親友という関係だった筈なのにいつの間にかその関係性は変わっていき、遂にはセフレになってしまった。僕も彼――三春みはるも男同士だからどんなに中に出したとしても妊娠することはない。けれど身体を繋げるだけの日々は僕に虚しさを感じさせた。



 僕は、三春に恋をしていた。
 親友だった頃から好きで、初めてセックスをした時はそれはもう両手を上げて喜んだ。けれど三春は僕の事なんてこれっぽっちも気になんてしていなかったことを、初めて身体を繋げた次の日に知った。絶望したよね、本当。

 本当はセフレじゃなくて親友に戻れたらって思ってる。親友に戻って、あの頃みたいに馬鹿みたいにはしゃいで沢山遊べたらどんなに幸せだろうって思うんだ。

 そう思っているのに、今日も僕は三春とホテルにいる。

「ん……あっ」

 自分の声じゃないみたいな甘く高い声。鼻に掛かった様なそんな甘い声に僕はいつも耳を塞ぎたくなる。

 僕の薄っぺらい胸に舌を這わせた三春は、僕の胸の突起を強く吸った。同時に反対の突起を指で摘んでくにくにとこねる様に触られ、甘い痺れが走る。
 身体はピクピクと小さく震えるが、きっと三春は気にもしていないと思う。寧ろ僕の事なんてただの都合の良い性欲処理としか思っていないだろう。

「んっ……んんっ」

 今日だって一時間前に急にここに呼び出されたんだが、ホテルに入ってすぐにこの状態だ。部屋に入ってすぐに腕を引っ張られてベッドに押し倒され、服を着たままこうして行為に持ち込まれた。
 まあ僕も僕でそうなるってわかっていたから、連絡が来てすぐに後ろを綺麗にして解し、軽くシャワーを浴びてからここに来ている。慣れとは怖いものだ。

 スラックスを抜き取られ、下着を片足だけ抜かれた状態で、膝頭を持たれて足を左右に割り開かれる。大事な部分が全て丸見えのこの状態は何度ヤっても慣れない。恥ずかしさに身体が熱を持つ。

 つぷりと後孔に指が一本侵入するが、それはすぐに出ていった。二本、三本と増えていくが、僕の後孔が既にある程度解れていることがわかるとすぐに三春の陰茎が後孔に当てられる。今日はいつもよりも愛撫が短く、挿入が早い。何かあったのだろうかと考える間もなく一気に奥へと穿たれ、身体が弓形に跳ねた。

「――ッ!」
「っ……挿れただけでイったな」

 びくびくと痙攣しながら、既に勃起していた僕の陰茎からは精が放たれた。三春は僕の膝裏を持って足を押し開きながら、腹の内側を抉る様に陰茎を抽挿していく。イったばかりでもお構いなしに動かされ、僕の身体はずっとビクビクと小刻みに震えていた。

「んう……っ、ん……ふっ」

 絶えず上がる嬌声を何とか抑えようと、口元に手の甲を押し当てるが、どうしても潜もった声が漏れてしまう。この声に慣れる日が来るとは思えないほど、自分のこの甘い声が大嫌いだ。だからいつも僕は必死で声を押し殺している。
 三春もそれに気付いているだろうに何も言わない。もしかしたら本当に性欲さえ処理できたらあとは何でも良いのかもしれない。
 僕は今日も一種の虚しさを胸に抱きながら、与えられる快感に体を震わすことしかできないでいた。

 亀頭が後孔の縁に引っ掛かるくらいまで引き抜かれ、ズチュンッと前立腺を抉りながら奥を突かれる。口に手を当てるだけじゃ声を抑えられそうになくて、俺は無意識に手の甲を噛んでいた。快感の方が強いのか、痛みは感じない。いや寧ろ、その痛み自体がより強い快感になっていたのかもしれない。
 
「んぐ、っ……んんッ」
「っ、は……出すぞ……っ」
「んぅ、ん……――ッ!」

 胎内に熱い精が注ぎ込まれる。勢いよく放たれた精液は奥に当たり、その刺激によって俺は呆気なく果てた。目の前がちかちかと瞬き、頭はぼんやりとしている。体全体で呼吸をしていると、ちゅぽんと音を立てて僕の中から三春が出ていった。

 ぽっかりと開いたお尻の穴からぽとりと三春の精液が溢れる。僕が女の子だったら三春の子を授かることが出来たのにと思うと、鼻の奥がツンとした。でももし本当に女の子だったらセフレにすらもなれていなかった可能性もあるので、もしかすると初めから不毛な恋だったのかもしれない。
 どう足掻いても恋人になることがない世界線、それがここだったのかもしれないな。

 涙が出そうになるのを隠すために僕は俯いた。お互いイったばかりとはいえ、僕の胎内から出て行った三春の陰茎はまだ質量を保っていたからもう一回戦あるのだろうと思いながら四つん這いになる。案の定僕が臀部を向けるとすぐに後孔に陰茎の先端が宛てがわれた。

「ん……んう、っ」

 僕の柔らかな後孔は三春の陰茎をいとも容易く飲み込んでいく。亀頭部分を飲み込むと、三春はそこで動きを止めた。いつもなら一気に穿たれる筈のそれは、穴の縁にカリを引っ掛けたままで停止している。

 想像していた衝撃とは違ったからか、下半身がずくんと疼いた。早く奥まで突いてとでもいうように無意識に腰が動く。しかし三春はゆるゆるとカリの部分を僅かに抽挿するだけでほとんど動いてくれない。

「み、三春……その、どうかした?」

 四つん這いのまま後ろを振り向いて恐る恐る尋ねてみるが、彼はこてんと首を傾げるだけで何も答えない。もう数え切れないほど抱かれているが、僕から何かを懇願することは一度もなかった。まあ今みたいな事が起こった事がなかったというのもあるし、いつもであれば三春が満足するまで何度もイカされるので最後には気を失っているというのもある。

 僕の後孔に亀頭だけを挿れたまま軽くピストンをする。むずむずとした感覚が下半身をさらに疼かせ、イったばかりで萎えていた僕の陰茎が頭をもたげ始めた。

「ここ、元気になってきたな」
「ひぅ、っ」

 ここ、と触られたのは僕の陰茎だった。
 三春の大きな手が僕の陰茎を包み込み、悲鳴のような引き攣った声が出る。咄嗟に口を塞ごうとするが四つん這いの体勢のためできず、僕は唇を噛んで耐えるしかない。そんな状態で鈴口に親指を当てられながら上下に扱かれ、思わず嬌声がこぼれ落ちた。

「あっ……や、あぁッ」

 一定の速さで手を動かされる度にぴくんっと身体が小さく跳ね、感じる程にきゅうきゅうと胎内に挿入っている三春を締め付けてしまう。腕がぷるぷると震え、ついに上半身がベッドにピッタリとくっついてしまった。ぎゅっとシーツを掴んで与えられる快感に必死に耐えるが、口からは嬌声が上がる。

「や、あんっ……く、ああぁッ」
「……ん、っ……挿れるぞ、っ!」
「ひゃっ……うぐ、んああッ!」

 陰茎を刺激されて絶頂を迎えたと同時に、一気に結腸を超えて最奥を穿たれ、脳天を突き抜けるほどの快感にビクビクンと大きく痙攣する。陰茎の根本を掴まれたまま果てたからか射精はされず、胎内で熱が燻っているような感覚が新たな快感を生み出していた。

「は……っ、……ッ!」

 目の前で星が瞬いている。あれだけ必死だった筈なのに、声を抑えることすらも忘れてしまう程の衝撃だった。

 くぽ、と結腸の辺りで音が鳴る。それ以上は無理だと警鐘が鳴り響いているのに、三春はもっと奥へと進みたいと言わんばかりに突き進んできた。

「んぐっ……ぐ、あッ」

 あまりに強すぎる刺激に意識が飛びそうだ。このまま気を失ってしまいたいとそう思った時だった。
 カタンと近くで音が鳴ったかと思えば、右腕を後ろへと引っ張られて力の入らない身体を無理矢理起こされる。僕の体を支えるように三春の逞しい腕が体の前に回り、もう片方の手で頬を掴まれた。

「……あ、ッ!」

 身体が起き上がったことによって結合部がより深くなり、僕の身体はぶるりと震えた。これ以上奥には行けないと言いたいのに、薄く開いたままの唇は涎をこぼすだけで言葉を発する事が出来ない。それどころか酸素が足りずにはふはふと僅かに開閉するだけだ。

 三春は頬を挟んだ手を自分の方に引き、僕の顔が三春の方を向いたと同時に唇を塞がれた。開いた隙間から少量ずつ流し込まれる生温く、ウイスキーのような香りの苦い液体を喉を動かしてこくんと飲み込むと途端に流れた部分が熱を持った。

「ふあ……んっ、んむ……!」

 ぼんやりとした頭の隅で、三春とキスをしたのは初めてだななんて考えていた。今までセックスは沢山してきたがキスをした事は一度もない。さらに言えばセフレになってからは僕の名前を呼ぶことすらもなくなった。

 それが今、一体どういう風の吹き回しなのか、三春にキスをされている。何か液体を飲み込まされたが、それでもキスをされたという衝撃に比べればちっぽけなものだった。

「ふ、はあっ……は、んっ」
「っ、真冬まふゆ……!」

 本当に今日は一体どうしてしまったのか。三春が久し振りに僕の名前を呼んだため、驚きで後孔に挿入っている三春を締め付けてしまう。
 
 ゆるゆると腰を動かされ、ぐちゅ、という卑猥な水音が結合部から聞こえてきた。最奥を優しく突かれる度に引き攣った嬌声が上がり、身体は痙攣を繰り返している。過ぎた快感に目尻には生理的な涙が浮かぶが、全て三春の唇が吸い取っていった。

「あッ……も、むりぃ、っ」
「大丈夫、真冬可愛いよ」
「やあ、っ……おかしく、なっちゃ……!」
「おかしくなって、真冬」

 頭の中はふわふわとして、ちかちかとしている。それに身体が物凄く熱い。呂律も回らず、自分が何を言っているのかも三春が何を言っているのかもわからないのに、気持ちがいいことだけはわかった。

 頭の芯まで溶けていくような感覚に恐怖を覚えながらも、身体はもっともっとと快感を求めて腰を揺らしている。

「気持ちいい?」
「んあぁっ……きもちい、きもちいいから……っ」
「……気持ちいいから?」
「もっと、っ……もっとちょうだ、っ」

 さっきまで意識が飛びかけていたのに、今は強すぎる快感にも意識が飛びそうにない。その代わりぐわんぐわんと脳が揺れるような感覚がする。

 唇が塞がれる度に三春が好き、大好きだという気持ちが溢れ出してくるようだった。自分では何を口走っているのかわからないが、余計な事を言っていなければいいと思う。もし余計なことを口走ったらきっとこの関係も終わってしまうだろう。そうすれば三春は僕以外の誰かを抱くかもしれない、それだけはどうしても嫌だった。

 ぐぷ、ぐぷと音を立てながらゆっくりと最奥が突かれる。多分挿れてはいけないところまで挿入っている気がした。

「みはる、あっ……や」

 どんな形でも良い、どんなふうに思われていても良いから、ずっと三春と一緒にいたい。心が無理ならせめて身体だけは繋がっていたいんだ。

「う、……くっ」
「うあ……っ!や……あっ、あ、んッ」

 腕が離され、僕の身体はベッドに沈む。その上に覆い被さるように三春がくっつき、彼は激しく腰を打ちつけ始めた。背中に感じていた温もりは離れ、その代わり腰をがっしりと掴まれる。

 ぱちゅんっ、ぱちゅんっと強く最奥を貫かれ、僕の口からは嬌声が上がる。まだイっていない筈なのに、ぷるんぷるんと動きに合わせて震える僕の陰茎からは透明な液体が少量ずつ飛び散っていた。
 肌と肌が勢いよくぶつかり、弾けたような音が鳴る。三春の亀頭が僕の前立腺を何度も擦り、僕は後孔を締め付けながら絶頂を迎えた。しかし三春は止まらず、僕が果てても変わらずに激しく腰を打ちつけてくる。僕は悲鳴のような嬌声を上げながらただただ襲いくる強い快感に飲み込まれそうになりながら、必死でベッドを掴んでいた。

「あんっ!ひ、あ……あぁっ!」
「はっ……くっ」
「や、またイク……っ、イっちゃ、ああッ」
「きつ……っ」

 イってもイっても止まらない激しいピストンに頭がおかしくなりそうだ。いつもなら気を失っている筈なのに、今日はずっと意識を保っている。脳が快感に溶けてしまいそうな程、絶え間なく与えられる快楽に全身がずっと震えていた。

 あまりに強すぎる快感に無意識に腰を引こうとするが、がっちりと腰を持たれている状態ではそれも叶わない。与え続けられる過ぎた快感に、開いた口からは涎が溢れ続ける。

「ひあぁっ、も、ゆるしてぇ……っ、ああんっ!」
「く、うっ……っ!」
「んっ……あぁっ、――ッ!」

 ビクビクッと背筋が弓形に反れ、大きく痙攣する。強く後孔を締め付けたと同時に胎内に広がる熱、それをより奥に押し込めるようにぐっ、ぐっと何度も奥に突かれた。

 じゅぽんっと音を立てて僕の中から三春が出ていき、僕の開き切ったお尻の穴からは、ドロリと三春の精液と僕の腸液が混ざり合った白濁の液体が溢れ出てくる。それはヒクヒクと物欲しそうに開閉される動きに合わせて次々と溢れ、布団を汚していった。

 はあはあとお互い全身を使いながら呼吸をしている。未だ僕の身体はぴくん、ぴくんと小刻みに震え、その刺激に口から喘ぎが溢れていく。

「真冬」
「……ふ、ぅっ……んむ、ん……っ」

 唇が重なり、舌が口内を侵していく。貪るような口付けに、また僕の下半身が熱を帯びていった。

 瞼が重い、頭がふわふわとする。
 三春は僕から唇を離すと、ふわりと髪をすくように頭を撫でてくれた。汗ばんだ額にくっついた前髪を丁寧に剥がし、三春は僕の額、そして瞼にキスをした。

 ――全部、俺のものになればいいのに。

 三春の声が聞こえた気がしたが、もう限界だ。
 喉元に口付けを落とされた感覚を最後に、僕は瞼を閉じた。





※ロブロイ:カクテルの名前。意味は「貴方の心を奪いたい」

 
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