6 / 28
あいつ
しおりを挟む
あいつと関わるようになったのは、中学校に入ってしばらくたった後のこと。
中学ニ年のクラス替え。
チカと同じクラスになれず、離れ離れになって落ち込んでいた時期だ。
自分から話しかけに行くような性格じゃなかった俺は、グループに入れず一人で本を読んでいた。
たまに近くの生徒が、何読んでるの~と聞いてきたりするぐらいで、特別変わったことはなかった。
何ヶ月か経って、席替えのくじ引きが行われ、隣の席があいつだった。
その日の帰り道、あいつを見つけて、
何となく話しかけた。
まぁ、あいつも一人だったし、仲間意識的なものがあったのかもしれない。
その頃の俺はチカしか友達がいなかったから、他の人との接し方が良くわからなかった。
あいつは口数が少なくて、俺のボケを無視することもあったけど、一緒にいて楽しかった。
なにより、自然な自分で居ることができた。
テニス部だったチカは、月曜日の朝に朝練があって、俺は月曜日だけはいつも一人だった。
チカは友達が多くて、帰り道は団子みたいになって帰る。
中学一年のときは、部活が終わったと同時にダッシュでチカの所へ向かっていたから、部活の帰りも一緒に帰っていた。
それをしなくなったのはチカと同じテニス部の天野が俺を睨むようになってからだ。
気が付かなければよかったんだけど。その視線は痛いほど俺に突き刺さっていた。
最初は普通だったのに、何が天野を怒らせたのか、俺には分からなかった。
それを堺に、他の生徒がいるときはチカに近づかないようになって、少し距離を置くようになった。
そして、あいつといる時間が増えた。
休みの日は、俺から誘わないと遊ぶことはなかったけど、誘ったら絶対一緒にいてくれた。
俺はその日嫌なことがあって、落ち込んでいた。
だからカラオケで歌って憂さ晴らししようとあいつを誘ったんだ。
カラオケで歌ってスッキリして、さぁ帰ろうと歩きはじめた。
無言で歩くことは別に苦じゃないが、このときは駄目だった。
静かになって、嫌なことを思い出した俺の気持ちはどんどん暗くなった。
そんなこと知らないあいつは一言呟いた。
『お前人形みたいだな。』
何を思ってそう言ったのかは分からなかったけど、その言葉で親から言われ続けてきたことがフラッシュバックした。
『お前は感情がないから、まともに考えることも、謝ることもできないんだ。』
『心がない人形だ。』
あぁ、こいつも俺のことを人形だって言うのか。
俺に心がないって、そう思うのか。
一気に心臓が締め付けられた。
目に涙がこみ上げてきて泣くもんかと、歯を食いしばった。
平常心を保とうと、瞼をゆっくり閉じて深呼吸をする。
しかし、段々と呼吸は荒くなっていった。
「おい、どうした。」
中学ニ年のクラス替え。
チカと同じクラスになれず、離れ離れになって落ち込んでいた時期だ。
自分から話しかけに行くような性格じゃなかった俺は、グループに入れず一人で本を読んでいた。
たまに近くの生徒が、何読んでるの~と聞いてきたりするぐらいで、特別変わったことはなかった。
何ヶ月か経って、席替えのくじ引きが行われ、隣の席があいつだった。
その日の帰り道、あいつを見つけて、
何となく話しかけた。
まぁ、あいつも一人だったし、仲間意識的なものがあったのかもしれない。
その頃の俺はチカしか友達がいなかったから、他の人との接し方が良くわからなかった。
あいつは口数が少なくて、俺のボケを無視することもあったけど、一緒にいて楽しかった。
なにより、自然な自分で居ることができた。
テニス部だったチカは、月曜日の朝に朝練があって、俺は月曜日だけはいつも一人だった。
チカは友達が多くて、帰り道は団子みたいになって帰る。
中学一年のときは、部活が終わったと同時にダッシュでチカの所へ向かっていたから、部活の帰りも一緒に帰っていた。
それをしなくなったのはチカと同じテニス部の天野が俺を睨むようになってからだ。
気が付かなければよかったんだけど。その視線は痛いほど俺に突き刺さっていた。
最初は普通だったのに、何が天野を怒らせたのか、俺には分からなかった。
それを堺に、他の生徒がいるときはチカに近づかないようになって、少し距離を置くようになった。
そして、あいつといる時間が増えた。
休みの日は、俺から誘わないと遊ぶことはなかったけど、誘ったら絶対一緒にいてくれた。
俺はその日嫌なことがあって、落ち込んでいた。
だからカラオケで歌って憂さ晴らししようとあいつを誘ったんだ。
カラオケで歌ってスッキリして、さぁ帰ろうと歩きはじめた。
無言で歩くことは別に苦じゃないが、このときは駄目だった。
静かになって、嫌なことを思い出した俺の気持ちはどんどん暗くなった。
そんなこと知らないあいつは一言呟いた。
『お前人形みたいだな。』
何を思ってそう言ったのかは分からなかったけど、その言葉で親から言われ続けてきたことがフラッシュバックした。
『お前は感情がないから、まともに考えることも、謝ることもできないんだ。』
『心がない人形だ。』
あぁ、こいつも俺のことを人形だって言うのか。
俺に心がないって、そう思うのか。
一気に心臓が締め付けられた。
目に涙がこみ上げてきて泣くもんかと、歯を食いしばった。
平常心を保とうと、瞼をゆっくり閉じて深呼吸をする。
しかし、段々と呼吸は荒くなっていった。
「おい、どうした。」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
昭和から平成の性的イジメ
ポコたん
BL
バブル期に出てきたチーマーを舞台にしたイジメをテーマにした創作小説です。
内容は実際にあったとされる内容を小説にする為に色付けしています。私自身がチーマーだったり被害者だったわけではないので目撃者などに聞いた事を取り上げています。
実際に被害に遭われた方や目撃者の方がいましたら感想をお願いします。
全2話
チーマーとは
茶髪にしたりピアスをしたりしてゲームセンターやコンビニにグループ(チーム)でたむろしている不良少年。 [補説] 昭和末期から平成初期にかけて目立ち、通行人に因縁をつけて金銭を脅し取ることなどもあった。 東京渋谷センター街が発祥の地という。
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる