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カニ
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広い浜辺を漂う波の近くをチョコチョコと歩くのが僕の日課だ。
綺麗な青い光に包まれた水面を見つめながら歩くと心が落ち着く。
夜はもっと静かで波の音が心地よく、人も少ないので、王城から抜け出しては遊びに来ている。
側近のアルビスには怒られてしまうけれど、それもまた楽しかったりするのだ。
そんな僕の日課に加わったのが、人間の観察だ。
何故か体の形が変化し、気だ付いたら浜辺で倒れていた。
うーん、不思議だ。
しかし、案ずることなかれ。
僕はカニの王子なので、これぐらい平気なのである……が、如何せん。
人間の体の動かし方がよく分からない。
以前はカニの姿しかとれなかったので、人間の構造については無知である。
これはいけないと、人間を観察することにしたのだ。
初めて人間の姿になった時は驚いたものの、以前よりも遠くへ行けることに気づき、今では行けるところまで歩くのが好きだ。
今日もまた、一歩一歩砂浜を踏み締めて歩く。
段々と朝日が登り、薄らとオレンジ色の光が当たりを照らし始める。
この時間帯はまるで日が沈む夜にも似ていて、たまに時間を忘れてしまう。
「王子!!どこですかー!!王子~!」
あ、アルビスだ!
「おーい!ここだよー!」
焦った顔をしながらキョロキョロと僕を探していたアルビスに、大きく手を振り答える。
「?!王子!この時間帯はお控え下さいと申しておりますのにっ!!どうして出歩いておられるのですか!!」
「あっ、いや、その……ごめんなさい」
「無事で何よりです。が、次はありませんよ?」
「はいぃ」
何度目かのお叱りを受け、逃がさないとばかりに手首を捕まれながら、しぶしぶと海の城へ連れ戻される。
だって歩くの楽しいんだもん。仕方ないでしょ?と心の中で呟きながら、アルビスの背中を見つめる。
すっかりと日が登りきり、淡い色が辺りに拡がり、朝の静けさが増す。
澄んだ空気が充満しているようで、なんだか心地よい。
綺麗な青い光に包まれた水面を見つめながら歩くと心が落ち着く。
夜はもっと静かで波の音が心地よく、人も少ないので、王城から抜け出しては遊びに来ている。
側近のアルビスには怒られてしまうけれど、それもまた楽しかったりするのだ。
そんな僕の日課に加わったのが、人間の観察だ。
何故か体の形が変化し、気だ付いたら浜辺で倒れていた。
うーん、不思議だ。
しかし、案ずることなかれ。
僕はカニの王子なので、これぐらい平気なのである……が、如何せん。
人間の体の動かし方がよく分からない。
以前はカニの姿しかとれなかったので、人間の構造については無知である。
これはいけないと、人間を観察することにしたのだ。
初めて人間の姿になった時は驚いたものの、以前よりも遠くへ行けることに気づき、今では行けるところまで歩くのが好きだ。
今日もまた、一歩一歩砂浜を踏み締めて歩く。
段々と朝日が登り、薄らとオレンジ色の光が当たりを照らし始める。
この時間帯はまるで日が沈む夜にも似ていて、たまに時間を忘れてしまう。
「王子!!どこですかー!!王子~!」
あ、アルビスだ!
「おーい!ここだよー!」
焦った顔をしながらキョロキョロと僕を探していたアルビスに、大きく手を振り答える。
「?!王子!この時間帯はお控え下さいと申しておりますのにっ!!どうして出歩いておられるのですか!!」
「あっ、いや、その……ごめんなさい」
「無事で何よりです。が、次はありませんよ?」
「はいぃ」
何度目かのお叱りを受け、逃がさないとばかりに手首を捕まれながら、しぶしぶと海の城へ連れ戻される。
だって歩くの楽しいんだもん。仕方ないでしょ?と心の中で呟きながら、アルビスの背中を見つめる。
すっかりと日が登りきり、淡い色が辺りに拡がり、朝の静けさが増す。
澄んだ空気が充満しているようで、なんだか心地よい。
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