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☆プロロゴス☆『さそり座の奇襲』

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本書は皆様の応援のおかげでAmazon Kindleにて2021年4月2日に全文改稿の上、電子書籍化致しました!
本文は非公開となりますが、以下Kindle試し読みページを掲載させて頂きます。



――――――



(な、な、なんで、コイツがココに……!?)
 混乱しつつ思わず後ずさりするなり、オレは壁を背負ってしまいすぐに逃げ場をなくした。
「あ……ッ」
 慌てるオレの顔の横にドン!! と手をつかれて目を見開く。
(な、な、なに……?)
 恐る恐るその長い腕を視線で辿るとアンタレスの鮮やかな美貌が目に飛び込んできた。
「よくもまあ、毎度毎度逃げまくってくれたもんだよなァ」
 ぐっと顎を掴まれて、オレは慄きながら長身のアンタレスを見上げた。
 アンタレスは苛立ちを含んだ好戦的な表情でオレを見下ろしている。
(な、なに。なんで怒って……?)
「さ、さそり座がなんの用だっ!」
 オレは生来の負けん気の強さを発揮させ、思いっきりアンタレスを睨みつけてそう言った。
 自分の心臓の音がドッドッと耳鳴りのようにうるさい。
「…………、ようやく口聞いたと思ったら」
 アンタレスは座った目でオレ見て低くそう言うなり、オレの手首をガシッと強く掴んだ。
「痛っ、おい、何すんだよ……ッ、どこに」
 オレの苦情を全く意に介さずアンタレスはオレの手をグイグイと引いていき、近くの扉をドカッと乱暴に蹴破るなりオレをまるで荷物のように放り込んだ。
 ドターン! と転がったオレは床に背をしたたかに打ちつけてうなる。
「いってえっ! 何すんだよッ」
 オレは怒りのあまり身を起こし、食ってかかろうとするなりぎょっとする。
 ふいに影が落ちてきて、オレの身体はオレがスッポリと隠れるほどの大きなシルエットと重なった。
 オレの振り上げた手首を難なく捕らえたアンタレスの大きな手に力がこもり、ぐっと床に押しつけられる。
 再び床に背をつけたオレは、アンタレスの大きな身体にのしかかられていた。
 艶やかな黒髪がオレの頬を撫でる。
(ナニコレ。どういう状況!?)
 オレは状況が理解できずにただ呆然としてしまう。
「こうでもしねぇとお前、また百年捕まんねぇだろ」
 じっと見つめてくる燃えるような灼紅しゃっこうの眼と低く落ちた声の真剣さに、オレの心臓はドキンと大きく跳ねた。
「やァ~っと捕まえた」
 アンタレスがその端正な顔を近づけて、悪役のように弧を描いた口元でそう囁いた。
「な、に……」
 唐突にべろりと何かがオレの頬を這った。
 ヌルリとした感触に目を見開いて固まる。
「いいから」
 何がいいのか。
 全然よくない。
 アンタレスはその低くてクラリとするいい声でオレの名を呼んだ。
「じっとしてろ。リゲル」
「……やっ」
 オレが思わず身を竦めるのと、アンタレスがオレの耳介をむのが同時だった。
「う……ぁッ」
 れろれろと耳の中に舌が入り込み、そのまま首筋へと舐めつくように下りていく。
「んん……ッ」
 アンタレスの大きくて骨張った手がオレの藍色キュアノスのヒマティオンを引き剥がし、キトンをはだけさせたのでオレはぎょっとする。
「やめ……ッ」
 ちゅうッと首筋に強く吸いつかれて、目を見開くなり胸の色づいた突起を指で摘まれた。
「ひゃ……ッ、あ、んんんっ」
 クリクリと先端を指で捏ねられると、身体にビリィッと甘い痺れが走り変な声が出た。
「やめ、……やだ、なに……ッ」
 必死でジタバタと抵抗してみたつもりだが、実際は甘く痺れた手足にはろくに力が入らない。
(ナニコレ、なんで、こんな……!)
「大人しくしてろ」
 れろっと舌が這わされて胸の芯を舐められた。
(…………うそ)
 あの、アンタレスが、オレの乳首を舐めている。
 オレは事態が飲み込めず、ただうろたえる。
「な……ッ。やめ」
 アンタレスは、オレの胸を舌で舐めたり吸ったりしながら、動揺するオレと視線を合わせてくる。
 目を合わせながら、オレのツンと芯を持って尖ったピンクをれろれろと舐める。
 そのとんでもなくエロい光景にオレの下半身に血液が集中していく。
「や、ぁあ……ンン、ふぁッ」
(ナニコレ! ナニコレェ!) 
 身体が熱い。腰が……熱い。
 ナニカがきゅうっと下腹部に集まっていく初めての感覚にオレは身を竦める。
 張り詰めたようにオレの自身が痛い。
「ふ……アッ……!」
 ふいに、たまりかねたようにビクビクッと身体が跳ねた。
 頭の芯がじんじんする。
(力が、入らない……)
 ぐったりと脱力したオレを見下ろしたアンタレスは満足げにふっと笑った。
「まさか胸だけでイッたのか」
(行ったって、どこに……?)
「リゲル、こっち見ろ」
 そう言われてオレは、猛烈に込み上げてきた羞恥心に任せて思いっきりプイッと顔を背けた。
 アンタレスはどうもそれが気に入らなかったらしく、オレの下半身にまだ絡みついていたキトンを力任せに引きちぎった。
 ビリィッ! という絹を裂くような音が響いて仰天する。
「チョ!? 何すんだよッ!」
 目を剥いて抗議の声をあげると信じられない返事が戻ってきた。
「うるせえな、どうせ脱ぐんだ。一緒だろ」
(ハアァ~~!?)

「アッ、やめ……ッ! ぅあぁ……!」
(うそ、うそ、ナニ、なんでこんなことに……!?)
 仰向け全裸なオレの膝を曲げて開いた脚の間にアンタレスの身体があり、あろうことかぐぷぐぷと二本の指がオレのお尻の穴を拡げている。
 アンタレスのもう片方の手はオレの内腿をガシッと掴んでいるあり得ないこの状況。
「あっ、……やだぁ!」
 視界が涙で揺らぐ。
 オレは情けない顔で必死でアンタレスの腕を掴んだけれどもビクともしない。
 何度も出しれするアンタレスの二本の長い指先がぐちゅぐちゅと淫猥な音色を奏でる。
 床に転がる蓋のあいた小瓶からは香油が少し零れて床を濡らしているのが見えた。
 その全てが絵空事のようにオレの目に映る。
「今日こそは捕まえるって決めてた」
 アンタレスが口角を上げてそう言った。

 サミットが終わったら、いつものように猛ダッシュでオリオン座の基地ヴァシに帰って、心配して待ってくれてる兄さんたちに出迎えてもらって。
 いっぱいハグして褒めてもらって。今頃サイフ兄さんの手作りナッツパイバクラヴァを食べているはずだった。
 それなのに。
 それなのに。
(なんで、こんなことに――――!?)
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