3 / 28
第3話 小説大賞? 出版化?
しおりを挟む
その声で、金縛りがとけた。
みんないっせいに動きだす。まるでなにごともなかったかのように、立ちあがったり、おしゃべりしたり、いつもの教室にもどる。
僕はしかばね先生の言葉に打ちのめされてるよ。
「小説もコミュニケーション」
でもまだ、その言葉の意味を理解できていないんだ。
星良が黒板まで走っていく。小動物のようなすばやい動きで、なにをするのかと思ったら、黒板の文章の下に「by 新井葉翔」と付け加える。
あわてて新井葉も走っていく。スクールカースト上位組がはやしたてると、新井葉は「うるせー」と笑いながら黒板を消す。
楽しそうだ。あんな一件があったのに、新井葉たちは、はやくもそれを愉快なできごとに変えてしまってる。
黒板を消し終わった新井葉が、教壇の横でしゃがみこんだのが見えた。ふたたび立ちあがると、紙を持っている。あれ、なんだろう?
新井葉は、笑いながら紙を星良に見せる。星良は無関心に廊下へ歩いてく。新井葉はあとを追いながら、紙をゴミ箱に捨てた。
わかった。あれはしかばね先生のだ。教室を出るときにスルリと落ちたの、見たよね?
新井葉がいなくなって、僕はドア横に行く。ゴミ箱から取り出してみると、どうやらこれ、なにかのチラシみたいだよ。
平静を装って自分の席にもどるけど、心臓はドキドキしてる。くしゃくしゃのチラシをゆっくり開く。いきなりドンと、大きな文字が飛びこんでくる。
「出版社 小説大賞!」
赤い文字が、血のように鮮烈だ。その下に、「大賞受賞作は出版化! あらたなる才能求む!」の文字。
ガツンと殴られたみたいに、目の前が真っ白になる。それからだんだん、景色がもどってくる。いつもの教室、クラスのざわめき。
頭をふって、クラつく意識を引きもどす。もう一度チラシを見る。
白いチラシに赤や黒の文字がおどってる。「小説大賞」ってことはコンテストだよね。大賞になった小説は本になるらしいよ。
締切は、「6月13日(金)」と書いてある。えーと、今日は1日だから、あと12日だ。小説を書いたことのない僕には、12日が長いのか短いのかわからないけど。
チラシを読むと、募集してる枚数は「不問」。内容やジャンルも「不問」。あらゆることが「不問」だらけ。ってことは、なにか書いて13日まで間に合えば、僕も応募していいってこと?
応募資格の欄を見る。ほかは「不問」なのに、ここだけ規定があった。
「応募資格:生きていれば大丈夫」
どういうこと? 「生きていれば」って。でも、とにかく僕は生きてる。それは間違いない。
急にまわりが明るくなったような気がする。きっと、雲に隠れていた太陽が顔を出しただけなんだろう。だけど……。
気持ちがどんどん晴れやかになっていく。気分が高揚する。なんだろうこの気持ち。
突然むしょうに小説が書きたくなった。体のなかからムクムクと、抑えきれない衝動がわきあがる。
もしかして、これが世に言う「創作意欲」ってやつ? 僕のなかに灯った、永遠の炎。
小説を書こう。うん、小説だ。
人生が少し、動きだしたような気がした。
みんないっせいに動きだす。まるでなにごともなかったかのように、立ちあがったり、おしゃべりしたり、いつもの教室にもどる。
僕はしかばね先生の言葉に打ちのめされてるよ。
「小説もコミュニケーション」
でもまだ、その言葉の意味を理解できていないんだ。
星良が黒板まで走っていく。小動物のようなすばやい動きで、なにをするのかと思ったら、黒板の文章の下に「by 新井葉翔」と付け加える。
あわてて新井葉も走っていく。スクールカースト上位組がはやしたてると、新井葉は「うるせー」と笑いながら黒板を消す。
楽しそうだ。あんな一件があったのに、新井葉たちは、はやくもそれを愉快なできごとに変えてしまってる。
黒板を消し終わった新井葉が、教壇の横でしゃがみこんだのが見えた。ふたたび立ちあがると、紙を持っている。あれ、なんだろう?
新井葉は、笑いながら紙を星良に見せる。星良は無関心に廊下へ歩いてく。新井葉はあとを追いながら、紙をゴミ箱に捨てた。
わかった。あれはしかばね先生のだ。教室を出るときにスルリと落ちたの、見たよね?
新井葉がいなくなって、僕はドア横に行く。ゴミ箱から取り出してみると、どうやらこれ、なにかのチラシみたいだよ。
平静を装って自分の席にもどるけど、心臓はドキドキしてる。くしゃくしゃのチラシをゆっくり開く。いきなりドンと、大きな文字が飛びこんでくる。
「出版社 小説大賞!」
赤い文字が、血のように鮮烈だ。その下に、「大賞受賞作は出版化! あらたなる才能求む!」の文字。
ガツンと殴られたみたいに、目の前が真っ白になる。それからだんだん、景色がもどってくる。いつもの教室、クラスのざわめき。
頭をふって、クラつく意識を引きもどす。もう一度チラシを見る。
白いチラシに赤や黒の文字がおどってる。「小説大賞」ってことはコンテストだよね。大賞になった小説は本になるらしいよ。
締切は、「6月13日(金)」と書いてある。えーと、今日は1日だから、あと12日だ。小説を書いたことのない僕には、12日が長いのか短いのかわからないけど。
チラシを読むと、募集してる枚数は「不問」。内容やジャンルも「不問」。あらゆることが「不問」だらけ。ってことは、なにか書いて13日まで間に合えば、僕も応募していいってこと?
応募資格の欄を見る。ほかは「不問」なのに、ここだけ規定があった。
「応募資格:生きていれば大丈夫」
どういうこと? 「生きていれば」って。でも、とにかく僕は生きてる。それは間違いない。
急にまわりが明るくなったような気がする。きっと、雲に隠れていた太陽が顔を出しただけなんだろう。だけど……。
気持ちがどんどん晴れやかになっていく。気分が高揚する。なんだろうこの気持ち。
突然むしょうに小説が書きたくなった。体のなかからムクムクと、抑えきれない衝動がわきあがる。
もしかして、これが世に言う「創作意欲」ってやつ? 僕のなかに灯った、永遠の炎。
小説を書こう。うん、小説だ。
人生が少し、動きだしたような気がした。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クアドロフォニアは突然に
七星満実
ミステリー
過疎化の進む山奥の小さな集落、忍足(おしたり)村。
廃校寸前の地元中学校に通う有沢祐樹は、卒業を間近に控え、県を出るか、県に留まるか、同級生たちと同じく進路に迷っていた。
そんな時、東京から忍足中学へ転入生がやってくる。
どうしてこの時期に?そんな疑問をよそにやってきた彼は、祐樹達が想像していた東京人とは似ても似つかない、不気味な風貌の少年だった。
時を同じくして、耳を疑うニュースが忍足村に飛び込んでくる。そしてこの事をきっかけにして、かつてない凄惨な事件が次々と巻き起こり、忍足の村民達を恐怖と絶望に陥れるのであった。
自分たちの生まれ育った村で起こる数々の恐ろしく残忍な事件に対し、祐樹達は知恵を絞って懸命に立ち向かおうとするが、禁忌とされていた忍足村の過去を偶然知ってしまったことで、事件は思いもよらぬ展開を見せ始める……。
青春と戦慄が交錯する、プライマリーユースサスペンス。
どうぞ、ご期待ください。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる