【R18】注文の多い料理店【TS】ー完結ー

ジオラマ

文字の大きさ
上 下
18 / 54
第一章 メス堕ち前夜

第十八話 洗脳(2)

しおりを挟む
 バラの香りのする女の子の部屋で、ぼくは一人座り込んでいる。
 何度見ても変わらない。
 ドアに備え付けられた鏡に、ピンクの下着を着た可愛らしい女の子が映っている。
 この儚げな少女が自分の姿なんて、どうしても信じられない。
 けれども、頭を覆うサラサラの髪、ブラに包まれる左右の乳房の重さ、サラサラのショーツの感覚が、目の前の少女がまぎれもなく自分であると告げている。
 
 鏡の中の少女と、目と目が合う。
 つぶらな瞳の奥から、戸惑いと恐れが伝わってくる。

(やばい……)

 ゴクリと唾を飲みこむ。
 口がカラカラに乾いていく。

「このままだと、本当に。変えられちゃう。なっちゃう……女に」

 鼓動が速くなり、脈に合わせて体が微かに揺れる。
 早くここを出ないと、大変なことになる。
 ぼくの本能が、命の大きな危険を訴える。
 何とかして出ないと。
 出られるんだったら、もう何がどうなっても構うものか。

「逃げないと。どうにかして、ここを抜け出さないと」

 鏡の中の少女は、焦った顔で落ち着きなく左右をキョロキョロと見回している。
 ドア以外に逃げ口がない。
 やはり正面突破しかないのだろう。

 しかし、ドアに近づけば近づくほど、不思議なバラの香りが、更に強さを増していく。
 どういうわけか、嗅いでいるうちに頭がくらくらしてくる。
 視界がぼやけてくる。

 逃げないと、早く逃げないと。
 だけど、体の自由が利かない。

「だ、だめ……ぼく」

 目がぐるぐると回り、ピンクの部屋全体が渦を巻いていく。
 例の声が脳内で鳴り響く。
 ぼくは、ただただ、聞いていることしかできない。

 もうこれまで……なの?

(ママの香水、すごい。あの人間の目を見てよ。あっという間にトロンととろけちゃったよ。涎まで垂らしてる。面白ーい)

(ふふっ。すごいでしょ。ママの作った香水は。一家直伝の「ヒトコロリ」よ。そのうちニャン太にも教えてあげるわね。この香りは人間のメスによく効くの。この娘の脳はだいぶメスになってきているから、よく効くはずよ)

(すごーい。さすがママだね)

(ふふっ。ちょうどいい感じで、頭がとろけてきたわ。これなら始められるわね)

(ねっ。始められるね)

 目の前に、五円玉のようなものが浮かんでいる。
 糸につるされて、ゆらゆらと左右に揺れている。

 僕の目は、ぼんやりとその動きを追いかける。
 ただただ、追いかけずにはいられない。
 言われたわけでもないのに、なぜかそうしてしまう。

(そう。よく見なさい。ゆーらゆら。揺れているわね)

「……う、うん。ゆれて……る」

(ゆーらゆら。五円玉だけを見るの。ゆーらゆら)

「ゆーらゆら、ゆーらゆら」

(そう。いい娘ね。見ているだけで、あなたはだんだん心地よくなるの。ほら、ゆーらゆら)

「……ゅーら、ゅら……」

(そうよ。その調子。もっと眠くなるの。ゆーらゆら。頭が白く。ゆーらゆら。声に合わせて、ゆーらゆら。霞んでくるの。ゆーらゆら)

「……ゅーら……ゅら……」
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

パンツを拾わされた男の子の災難?

ミクリ21
恋愛
パンツを拾わされた男の子の話。

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...