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第三章 美少女学園一年目 芽吹き根付く乙女心
【第127話】慶太とケンジ
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「ねぇ、あおい。こっちに来て」
「ちょ、ちょっと」
あおいは細い腕を引っ張られて、ビキニ姿のままヤシの木の陰へと連れていかれる。
急に引かれてバランスを崩したのか、あおいは内また気味のなよなよした走り方になってしまう。
両手が左右に広がった、女の子走りになってしまう。
ピンクのビーチサンダルがさらさらの砂に沈むたびに、三角の布に包まれたあおいの乳房が上下に弾む。
健康そうに膨らんだ丸いお尻が左右に振れる。
「だって、日に当たる前に紫外線対策したいじゃない」
優花の手にはSPF50+ PA++++と書かれたチューブが握られていた。
「しっかり塗らないと、ビキニの日焼けあとが残っちゃうわ。特にあおいは色白なんだから目立つわよ」
言われてみると確かにそれは恥ずかしい……。
あおいは、自分の胸と股間だけ真っ白く焼け残った自分の姿を想像して身震いする。
(日に焼けちゃったら、今度は地肌に白いビキニを着ているように見えちゃう)
しかたなく木陰に隠れながら、言われるがままに日焼け止めを塗っていく。
焼けたくない。その思いだけでビキニの中まで、たっぷりと塗りこんでいく。
白い日焼け止めが、すべすべの肌を包むように伸びていく。
「そうそう。この日焼け止め、学校の保健の先生がくれたのよ。肌に優しいのに、紫外線はきっちりとブロックしてくれるらしいの。市販されていない開発品って言ってたかしら」
保健の先生と聞いて、あおいは思わずむせ返る。
「ごほ、ごほ。そ、その先生って、もしかして早紀先生?」
「あっ、たしかそんな名前だった気がする。よく覚えているわね。早紀先生って、雰囲気はベテランって感じなのに、すごく若々しくてミステリアスよね。おいくつなのかしら」
やはり関係者の手が回っていたのか。
あおいには、日焼け止めの成分が気になって話が頭に入ってこない。
油断して沢山塗ってしまった。
優花も自分に塗っていたから、ただの日焼け止めかもしれないが。
優花は再びあおいの手を引いて茂みに誘い込むと、しゃがんで身を隠した。
「どうしたの、今度は」
「ほら、向こうを見て。来たわよ、男子たちが。ここからこっそりとボーイズハンティングでもしましょうよ」
「ボーイズハンティングって、別にあたしは男の子になんて興味は……」
優花の指さす先には、男子生徒たちがビーチボールを片手に歩いていた。
みんな水着を着て、上裸で砂浜を和気あいあいとしながら談笑している。
(みんなスタイルいいな。痩せて見える男子もこう見ると結構筋肉あるんだ。ちょっとドキドキしちゃう)
「って違う!」
あおいの急な独り言を、優花はくすりと笑う。
「ふふっ。あおい、もしかして男子の体に見とれちゃった? あの集団、かっこいいよね。あおいは欠席が多いから知らないかもしれないけど、クラスのビッグスリーって言われているのよ。物腰の柔らかい竜馬君。話し方がふわふわしてて、ちょっと天然っぽいけど、あのあどけない笑顔を見るとあたし、キュンキュンしちゃうわ。それから、スポーツ万能の正平君。バスケもテニスもなんだってできるのよ。ほらっ、あの日焼けした太い二の腕見て。筋肉の筋が浮かび上がってるし、すごく男らしいでしょ。見惚れちゃうわ」
「そ、そう?」
「あらっ。タイプじゃないのかしら。やっぱりあおいはモテモテだから彼氏の基準も厳しくなるのかな」
「そんなんじゃなくて……」
「あっ、でも三人目の慶太君は知っているでしょ。隣の席だし、昨日もあおいに話しかけてたし」
「あっ、うん……」
あおいはコクリと頷いた。
クラスメイトの慶太のことは覚えている。
恋愛感情からではない。
つばさから警告を受けたばかりだったからだ。
『慶太君は危険な男よ』
つばさの言葉があおいの中で蘇る。
果たして本当にそうだろうか。
つばさは嘘つきだ。
クリスティーナと自分のことを学園に売った彼女の言葉を、真に受けていいのだろうか。
自然とあおいの視線は慶太に釘付けになる。
実際に慶太を観察している限り、そんなに危険な感じはしない。
女の子への話し方から、女慣れしている気はするが、いやらしさはない。
さりげなく距離を詰めてきて、親近感を引き出すテクニックは天性のものだろうが、悪意はなさそうだ。
茶色く染めた髪も、ジャ〇ーズっぽくて似合っている。
悪人の要素は見当たらない。
「あれ? やっぱりあおいも慶太君がタイプなの? ショック。あたし彼のこと狙っているのに。ライバルは少ない方がいいのに」
優花はオープンに意中の相手をあおいに告白する。
「そ、そんなんじゃなくて。優花は知らないの? 彼の噂とか……女の子に無理矢理したとか」
「確かに慶太君の変なデマを流している娘たちはいるわね。でも、あの可愛らしい笑顔を見てよ。どう見ても白馬の王子様でしょ。絶対に悪いことなんかしない顔だわ。あっ、彼、こっちを向いたわ。やっぱりカッコいいわ」
そんな二人の方を見て、慶太は手を大きく振った。
目線はあおいを真っ直ぐに捉えている。
「あれ? あおいちゃんと優……花ちゃん? そんなところでどうしたの? 狭いところに隠れてないで、こっちに来なよ。みんなもう集まってきているよ」
「あちゃー。これは出ていくしかないね。でも嬉しいな。慶太君、優花って下の名前で呼んでくれたわ。あたしの名前ちゃんと覚えててくれたんだ」
優花は隠れていたことがバレた気まずさよりも、意中の男子に名前を呼ばれたこと嬉しさが勝っているようだ。
優花に優しく手を引かれて、真っ白な砂が広がるビーチに出る。
あおいの真っ赤なビキニは真夏の日差しを吸い込んで、若々しい女体をまぶしく輝かせている。
まわりの男たちの目線は、茂みから現れた美少女に集中する。
あおいの体と男の視線を隔てるのは、赤い水着の生地のみだ。
大きな乳房、丸くぷるんとしたヒップ、そして膨らみのない股間が視姦されていく。
(や、やっぱりはずかしいよぉ……)
あおいはさりげなく優花の後ろに隠れた。
ーーー
あおいたちの様子を、遠くから射抜くような視線で見つめる、目つきの悪い少年がいた。
クラスの一匹狼で、中学生のようなオレ様気質が抜けていない柳楽ケンジだ。
凛々しい眉毛と瞳が近く、常に睨んでいるように見える。
刈り上げた短髪に、がっしりした胸板からワイルドな雰囲気が漂ってくる。
「ったく、頼まれたから出てやったのに、なんで自分はいねーんだよ」
ケンジは悪人面を更にしかめた。
自由を重んじるBS学園において、水泳の授業は強制ではない。
日々の出席すら生徒の自由にゆだねられている。
ケンジからの強い視線に気が付いたのか、優花はあおいに震え声で話しかけた。
「向こうから柳楽君が睨んでるわ。ちょっとあおいお願い。背中を貸してあたしを隠して。彼のこと苦手なの。何考えているか分からないし、何より目つきが怖いでしょ?」
「ケンジはやばい奴」という噂は、あおいの耳にも届いている。
優花はさらに続ける。
「あの目は人殺しの目よ。十人とはいかなくても、一人、二人は殺してそうな目よ」
ーーーー
キャラクターはほぼ出揃いました。
ストーリーはシンプルなので、名前は憶えていなくても大丈夫です。
「ちょ、ちょっと」
あおいは細い腕を引っ張られて、ビキニ姿のままヤシの木の陰へと連れていかれる。
急に引かれてバランスを崩したのか、あおいは内また気味のなよなよした走り方になってしまう。
両手が左右に広がった、女の子走りになってしまう。
ピンクのビーチサンダルがさらさらの砂に沈むたびに、三角の布に包まれたあおいの乳房が上下に弾む。
健康そうに膨らんだ丸いお尻が左右に振れる。
「だって、日に当たる前に紫外線対策したいじゃない」
優花の手にはSPF50+ PA++++と書かれたチューブが握られていた。
「しっかり塗らないと、ビキニの日焼けあとが残っちゃうわ。特にあおいは色白なんだから目立つわよ」
言われてみると確かにそれは恥ずかしい……。
あおいは、自分の胸と股間だけ真っ白く焼け残った自分の姿を想像して身震いする。
(日に焼けちゃったら、今度は地肌に白いビキニを着ているように見えちゃう)
しかたなく木陰に隠れながら、言われるがままに日焼け止めを塗っていく。
焼けたくない。その思いだけでビキニの中まで、たっぷりと塗りこんでいく。
白い日焼け止めが、すべすべの肌を包むように伸びていく。
「そうそう。この日焼け止め、学校の保健の先生がくれたのよ。肌に優しいのに、紫外線はきっちりとブロックしてくれるらしいの。市販されていない開発品って言ってたかしら」
保健の先生と聞いて、あおいは思わずむせ返る。
「ごほ、ごほ。そ、その先生って、もしかして早紀先生?」
「あっ、たしかそんな名前だった気がする。よく覚えているわね。早紀先生って、雰囲気はベテランって感じなのに、すごく若々しくてミステリアスよね。おいくつなのかしら」
やはり関係者の手が回っていたのか。
あおいには、日焼け止めの成分が気になって話が頭に入ってこない。
油断して沢山塗ってしまった。
優花も自分に塗っていたから、ただの日焼け止めかもしれないが。
優花は再びあおいの手を引いて茂みに誘い込むと、しゃがんで身を隠した。
「どうしたの、今度は」
「ほら、向こうを見て。来たわよ、男子たちが。ここからこっそりとボーイズハンティングでもしましょうよ」
「ボーイズハンティングって、別にあたしは男の子になんて興味は……」
優花の指さす先には、男子生徒たちがビーチボールを片手に歩いていた。
みんな水着を着て、上裸で砂浜を和気あいあいとしながら談笑している。
(みんなスタイルいいな。痩せて見える男子もこう見ると結構筋肉あるんだ。ちょっとドキドキしちゃう)
「って違う!」
あおいの急な独り言を、優花はくすりと笑う。
「ふふっ。あおい、もしかして男子の体に見とれちゃった? あの集団、かっこいいよね。あおいは欠席が多いから知らないかもしれないけど、クラスのビッグスリーって言われているのよ。物腰の柔らかい竜馬君。話し方がふわふわしてて、ちょっと天然っぽいけど、あのあどけない笑顔を見るとあたし、キュンキュンしちゃうわ。それから、スポーツ万能の正平君。バスケもテニスもなんだってできるのよ。ほらっ、あの日焼けした太い二の腕見て。筋肉の筋が浮かび上がってるし、すごく男らしいでしょ。見惚れちゃうわ」
「そ、そう?」
「あらっ。タイプじゃないのかしら。やっぱりあおいはモテモテだから彼氏の基準も厳しくなるのかな」
「そんなんじゃなくて……」
「あっ、でも三人目の慶太君は知っているでしょ。隣の席だし、昨日もあおいに話しかけてたし」
「あっ、うん……」
あおいはコクリと頷いた。
クラスメイトの慶太のことは覚えている。
恋愛感情からではない。
つばさから警告を受けたばかりだったからだ。
『慶太君は危険な男よ』
つばさの言葉があおいの中で蘇る。
果たして本当にそうだろうか。
つばさは嘘つきだ。
クリスティーナと自分のことを学園に売った彼女の言葉を、真に受けていいのだろうか。
自然とあおいの視線は慶太に釘付けになる。
実際に慶太を観察している限り、そんなに危険な感じはしない。
女の子への話し方から、女慣れしている気はするが、いやらしさはない。
さりげなく距離を詰めてきて、親近感を引き出すテクニックは天性のものだろうが、悪意はなさそうだ。
茶色く染めた髪も、ジャ〇ーズっぽくて似合っている。
悪人の要素は見当たらない。
「あれ? やっぱりあおいも慶太君がタイプなの? ショック。あたし彼のこと狙っているのに。ライバルは少ない方がいいのに」
優花はオープンに意中の相手をあおいに告白する。
「そ、そんなんじゃなくて。優花は知らないの? 彼の噂とか……女の子に無理矢理したとか」
「確かに慶太君の変なデマを流している娘たちはいるわね。でも、あの可愛らしい笑顔を見てよ。どう見ても白馬の王子様でしょ。絶対に悪いことなんかしない顔だわ。あっ、彼、こっちを向いたわ。やっぱりカッコいいわ」
そんな二人の方を見て、慶太は手を大きく振った。
目線はあおいを真っ直ぐに捉えている。
「あれ? あおいちゃんと優……花ちゃん? そんなところでどうしたの? 狭いところに隠れてないで、こっちに来なよ。みんなもう集まってきているよ」
「あちゃー。これは出ていくしかないね。でも嬉しいな。慶太君、優花って下の名前で呼んでくれたわ。あたしの名前ちゃんと覚えててくれたんだ」
優花は隠れていたことがバレた気まずさよりも、意中の男子に名前を呼ばれたこと嬉しさが勝っているようだ。
優花に優しく手を引かれて、真っ白な砂が広がるビーチに出る。
あおいの真っ赤なビキニは真夏の日差しを吸い込んで、若々しい女体をまぶしく輝かせている。
まわりの男たちの目線は、茂みから現れた美少女に集中する。
あおいの体と男の視線を隔てるのは、赤い水着の生地のみだ。
大きな乳房、丸くぷるんとしたヒップ、そして膨らみのない股間が視姦されていく。
(や、やっぱりはずかしいよぉ……)
あおいはさりげなく優花の後ろに隠れた。
ーーー
あおいたちの様子を、遠くから射抜くような視線で見つめる、目つきの悪い少年がいた。
クラスの一匹狼で、中学生のようなオレ様気質が抜けていない柳楽ケンジだ。
凛々しい眉毛と瞳が近く、常に睨んでいるように見える。
刈り上げた短髪に、がっしりした胸板からワイルドな雰囲気が漂ってくる。
「ったく、頼まれたから出てやったのに、なんで自分はいねーんだよ」
ケンジは悪人面を更にしかめた。
自由を重んじるBS学園において、水泳の授業は強制ではない。
日々の出席すら生徒の自由にゆだねられている。
ケンジからの強い視線に気が付いたのか、優花はあおいに震え声で話しかけた。
「向こうから柳楽君が睨んでるわ。ちょっとあおいお願い。背中を貸してあたしを隠して。彼のこと苦手なの。何考えているか分からないし、何より目つきが怖いでしょ?」
「ケンジはやばい奴」という噂は、あおいの耳にも届いている。
優花はさらに続ける。
「あの目は人殺しの目よ。十人とはいかなくても、一人、二人は殺してそうな目よ」
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